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CMA-CGMグループ 4年間で米国に200億ドル投資 米国籍船拡大や港湾強化へ

Daily Cargo  2025年3月10日掲載


CMA-CGMグループは6日、今後4年間で米国の海上輸送と物流、サプライチェーンの強化に約200億ドルの投資を行う方針を明らかにした。グループの米国船社APLにおける米国籍船の大幅な拡大や、東岸・西岸におけるコンテナ港湾の機能強化、最先端倉庫や自動車物流プラットフォームの整備、シカゴにおける航空貨物ハブの開設、物流分野の研究開発とイノベーションの加速などが含まれる。米国のトランプ大統領が明らかにしている米国造船・米国商船隊の拡大方針や、米国第一主義の政策に呼応したものと見られる。

CMA-CGMグループのルドルフ・サーデ会長兼CEOは、トランプ大統領と会談し、約200億ドルの投資を約束した。サーデ会長兼CEOは、「米国の海事産業の未来とロジスティクスの能力強化に向けた200億ドルの投資というコミットメントを通じて、米国との長年にわたる関係をさらに強化できることを誇りに思う。今後4年間で米国籍船を大幅に増やすとともに、東岸・西岸の両方での主要コンテナ港湾での処理能力の拡大や、シカゴで航空貨物ハブの設立を行う。これにより、1万人の新しい米国人の雇用が創出され、米国の顧客や政府機関とのパートナーシップがさらに強化される」とコメントした。

米国ではトランプ大統領の就任以降、米国第一主義の政策が進められている。海運・造船分野においても、米国造船業や米国商船隊を再構築する動きが出ている。米国通商代表部(USTR)は2月下旬、中国運航船社や中国建造船に対する米国港湾入港時における莫大な入港料の課徴や、米国籍船に対する入港優遇策、米国の製品輸送に対する米国籍船の利用義務付けなどを行う提案を実施。3月下旬まで意見募集を行っている。同提案がこのまま導入されるかどうかは不透明だが、米国発着のコンテナ航路において米国籍船の重要性が高まる可能性が出ている。

CMA-CGMグループは米国のフラッグキャリアであるAPLを抱えており、米国籍船を30隻に増やしていく方針だ。米国政府が明らかにしている米国の造船能力強化の動きを海運会社として支援し、雇用の創出や技術の進化を後押しするほか、APLとして米国の貨物輸送における地位向上につなげていく狙いがある。

港湾への投資では、ニューヨーク港やロサンゼルス港、ダッチハーバー港、ヒューストン港、マイアミ港などの主要拠点で港湾インフラの開発を行う。オペレーションとサプライチェーンの効率化や、デジタル化の加速、港湾労働者と貨物の安全性向上につなげていく考えだ。CMA-CGMは2023年に、グローバル・コンテナ・ターミナルズ(GCT)が保有していたニューヨーク・ニュージャージー港におけるコンテナターミナル「GCTベイヨン」と「GCTニューヨーク」を買収。「ポート・リバティ・ニューヨーク」と「ポート・リバティ・ベイヨン」と改称し、機能強化を進めていた。今回の投資を通じて、同港のみならず米国全体の港湾インフラをさらに強化し、処理能力を高めると同時に、自社のハブ拠点として活用することで円滑なコンテナ船サービスの展開につなげていく狙いもありそうだ。

物流事業では、全米で最先端の倉庫の開設や自動車物流プラットフォームの開発を進めていく。これにより、米国内のサプライチェーンのセキュリティと信頼性を確保するとともに、米国の物流業界においてリーダーシップを発揮していく。

また、ボストンに新しい物流研究開発ハブを開設する。高度なロボット工学と自動化ソリューションの研究開発に重点を置く。物流サービスの最適化を図り、米国の顧客に提供していく方針だ。

航空貨物事業では、シカゴに新たな航空貨物ハブを開設する。米国人パイロットが操縦する新しいB777F型5機を配備し、米国の貿易と接続性を強化していく。

CMA-CGMグループは現在、40の州で事業展開し、1万5000人の米国人を雇用している。米国発着では毎年500万本以上の海上コンテナを輸送している。今回の投資を通じて、陸海空で米国の物流サービスをさらに強化し、プレゼンスの向上を図っていく方針だ。


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