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CKハチソン 港湾運営事業の大半を売却 MSCとブラックロックに

Daily Cargo  2025年3月6日掲載


香港の複合企業大手CKハチソン・ホールディングスは4日、傘下の港湾事業会社ハチソン・ポーツ・ホールディングス(HPH)が持つパナマ港湾会社(PPC)の支配権90%と、CKハチソングループが運営する世界各国のターミナルの株式80%を、資産運用世界最大手の米ブラックロックやコンテナ船最大手となるMSCグループのターミナル事業会社TiLで構成されるコンソーシアムに売却する方針を明らかにした。売却企業の価値総額は約228億ドルを見込む。MSCグループにとっては港湾ターミナル事業の大幅な強化につながる。

今回の売却対象は、CKハチソングループが所有・運営・開発する23カ国43港、計199バースのターミナルとなり、HPHのシステムなどの資産も対象に含まれる。具体的には、英国のフェリクストウ港や、オランダのロッテルダム港、メキシコのマンザニーヨ港、タイのレムチャバン港といった各地域の主要ターミナルが挙げられる。PPCはパナマの太平洋側のバルボア港と大西洋側のクリストバル港の2港のターミナルを運営しており、両港においてもTiLとブラックロックのコンソーシアムが買収する。他方で、CKハチソンが本拠を置く香港の港湾や、深?などの中国港湾のターミナルを運営するハチソン・ポート・ホールディングス・トラスト(HPHT)の事業は売却対象に含まれない。

PPCに関する売却手続きは、パナマ政府が条件を確認した後に進められる。今年4月2日までに最終文書に署名する方針だ。CKハチソングループのターミナル売却については、ブラックロック・TiLコンソーシアムのデューデリジェンスや規制当局の承認などを経て、迅速に行われる見通しだ。

MSCグループのディエゴ・アポンテ社長(TiL会長)は、「HPHとMSCの関係は長い歴史があり、相互に尊敬し合い、友情を持った関係だ。また、長年にわたり素晴らしい関係を築いてきたブラックロックやグローバル・インフラストラクチャー・パートナーズ(GIP)と提携できることを大変嬉しく思う。MSCはHPHの経営陣を非常に高く評価しており、この取引が成立すれば、彼らを当社の大きなファミリーに迎え入れることができると楽しみにしている。HPHへの投資が商業的に非常に有望な投資になることは間違いない」とコメントした。

CKハチソンの陸法蘭(Frank John SIXT)共同マネージングダイレクターは、「この取引は、多数の入札や関心表明を踏まえた競争プロセスの結果だ。この取引は、CKハチソングループに190億ドル以上の現金収入をもたらすと予想され、当社の株主にとって最善となる」とコメント。また、米国のトランプ大統領がパナマ運河やパナマ港湾の管轄権について奪還していきたい意向を示していたが、「この取引は純粋に商業的な性質のものであり、パナマ港に関する最近の政治ニュース報道とは全く関係がないことを強調したい」と説明した。

MSCは、主力のコンテナ船事業で規模拡大を進めるのと並行して、近年はターミナルの取得・開発も進めている。22年にはボロレ・アフリカ・ロジスティクスを買収し、現在はアフリカ・グローバル・ロジスティクス(AGL)として事業運営を行っている。物流事業のみならず、アフリカを中心に17のコンテナターミナルの運営なども展開している。昨年にはハンブルク港のターミナルオペレーターHHLAの株式を取得したほか、ブラジルの港湾海運会社ウィルソン・サンズへの出資も発表した。今年に入ってからも、TiLがモロッコの新CTとなるナドール・ウエストメッド・コンテナターミナルの運営会社に出資する方針を明らかにしている。海事調査会社ドゥルーリーによると、23年のグローバルターミナルオペレーター(GTO)ランキングでMSCグループは世界7位に位置していたが、買収完了後はさらに上位に浮上すると見られる。

MSCは今年、マースクとの2Mを解消し、単独運航体制に移行した。圧倒的なコンテナ船腹量と迅速な意思決定を背景に、直航かつ柔軟な配船を武器として、利便性の高いサービスを提供している。他方で、近年は世界全体で主要港湾の混雑が深刻化している。ハブ港に自社ターミナルを保有することで、荷役時間の最小化や遅延の回避、スケジュールの安定化を図り、コンテナ船サービスの品質向上につなげ、差別化を目指していく。


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