農水産物輸出で地方ルート確立を 国交省/農水省、効率的物流目指す
Daily Cargo 2021年5月7日掲載
国土交通省と農林水産省はこのほど、「効率的な輸出物流の構築に関する意見交換会」の検討結果をまとめ、公表した。国が昨年12月に策定した、農林水産物・食品の輸出拡大実行戦略を進めるうえで、物流面で実効性のある方策を検討。地方の港湾・空港を活用した最適な輸送ルートの確立やコールドチェーン対応の物流拠点の整備など7つの方策に取り組むとした。
同会には日本通運、郵船ロジスティクス、NAX JAPAN、ヤマトホールディングスが参加。今年3月から先月27日まで合計5回、開催された。地方港湾・空港活用をテーマとした第4回意見交換会では、鹿児島県、静岡県、苫小牧港湾管理組合、オーシャン・ネットワーク・エクスプレス・ジャパン、OOCL、上組、北海道エアポート、ANA Cargo、日本航空、日本貨物航空が参加した。
7つの取り組む施策は、(1)最適な輸送ルートの確立(2)大ロット化・混載の促進のための拠点確立(3)輸出産地、物流事業者、行政などが参加するネットワークの構築(4)物流拠点の整備(5)鮮度保持・品質管理や物流効率化のための規格化、標準化(6)検疫などの行政手続き上の環境整備(7)包装資材・保持技術の開発・実装――とした。
(1)では、地方の港湾・空港を積極的に活用する。輸出産地からの直航便や主要港への経由便などを活用し、国内輸送費用を削減する。現在、輸出産地が集中する北海道、九州などからは京浜・阪神の港湾・空港に横持ちする必要があり、費用は20万円以上という。近隣港への輸送費用と比べ3~4倍であり、リードタイムも長い。2024年にはドライバーの時間外労働時間の上限規制が適用され、さらなる時間と費用増も見込まれるため、輸出産地に近い地方の港湾・空港活用の重要性が高まる。同会ではまた、京浜・阪神への輸送時について、ストックポイントで大容量コンテナに積み替えることや、東京23区や大阪市内など、市街地の混雑を避ける工夫などでの費用削減が必要と指摘した。
(2)では、重点品目の輸出産地状況を踏まえ、拠点となる地方の港湾・空港に同一品目を集約。大ロット化や温度などについて同じ取り扱いができるモノの混載を実施するとした。現在は小ロット・多品目での輸出のため、海上の40フィートコンテナを満載できる品目が少ない。貨物量が少なく、季節変動もあり、直行便の運航自体が難しい点の解決につなげる。
(3)では、地方の港湾・空港への集約のため、地域または物流拠点単位でのネットワークを形成し、陸上輸送の時間短縮、大ロット化などによるコスト低減などの方向性を決定していく。(4)では、拠点となる地方港湾・空港周辺にコールドチェーン対応の施設・機器を整備して品質管理の向上や大ロット化などに貢献する。(5)では、品目輸出団体が中心となって統一規格・標準を策定し、活用する仕組みを必要とする。(6)では、行政手続きのデジタルトランスフォーメーション(DX)化や各種手続きのワンストップ化を進めるなど港湾・空港やその周辺の物流拠点に必要な手続きを簡便に行える環境整備を進める。(7)では、包装資材・保管技術の開発を進め、輸送時の鮮度・品質を安価に維持する。現在、海運では輸送時間が長いため、鮮度維持の観点から利用できない輸出品目もある。また、CAコンテナなどの鮮度維持対応の設備が偏在しており、円滑な利用が難しいケースもある。
国は農林水産物・食品輸出額の目標として25年に2兆円、30年に5兆円を掲げる。20年は前年比1.1%増の9223億円。
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