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ICT活用、冷凍・冷蔵倉庫開発に意欲 三井不動産

Daily Cargo  2021年3月10日掲載

 

三井不動産はICT(情報通信技術)を活用した倉庫の機械化、冷凍・冷蔵倉庫の開発などに注力し、ロジスティクス事業を強化する。4日、都内でロジスティクス事業に関する記者説明会をオンライン併用で開催し、三木孝行常務執行役員ロジスティクス本部長が今後の事業展開などを説明した。三木常務は「賃貸需要の拡大、多様化するテナントニーズ、用地取得の競争激化に対して物流ソリューションの強化に取り組み、従来以上の事業規模、領域拡大を目指す」とした。

同社のロジスティクス事業を取り巻く環境は、新型コロナウイルス感染拡大の影響でeコマース(EC)市場が拡大し、新たな物流施設の賃貸ニーズが発生した。ラストワンマイル配送も増加している。また、非接触化が求められていることもあり、ICT活用に興味を持つ物流会社、荷主が増えているという。一方、「脅威は用地取得の競争激化だ。ホテルや商業施設に比べて生活インフラは収益が安定しているといった認識が強まっており、事業者の参入が増えている。結果として用地取得が激化している」(三木常務)とした。

こうした環境変化に対応し、事業規模・領域拡大を実現するための計画を紹介した。まず、倉庫の機械化に取り組む。入庫から保管、出庫までの全工程を機械化する「フルオートメーション物流モデル」を紹介するショールーム「MFLP ICT LABO 2.0」(千葉県船橋市)で活用している技術も利用し、実用化を目指す。具体的には、同社の投資により、6月に竣工予定の「MFLP船橋3」(千葉県船橋市)内の一部で機械により作業を行う倉庫を設置する。三木常務は「物量に応じた料金設定を考えている」と語った。

倉庫のデジタル化の実現にも取り組む。ICT活用で庫内作業の効率化と従業員の満足度向上につなげる。庫内に広角レンズカメラを設置し、荷物の設置場所などを可視化する。ビーコン活用によるヒトや機器の動態管理を行う。施設内のトイレやカフェテリアの混雑状況をスマートフォンから確認できるシステムの提供などを行う。

コロナ禍の需要に対応し、冷凍・冷蔵倉庫の開発にも力を入れる。同社はこれまでに、スーパーやコンビニ向けの商品を取り扱う冷蔵倉庫を2棟開発した。食品ECの需要も増えているため、さらに積極的に事業を展開していく。現在、プロジェクトチームを立ち上げて取り組んでいる。三木常務は「世の中にある冷凍・冷蔵倉庫は古くなっている施設も多いと思う。新しい技術を取り入れていけないか探している。建設場所や時期は未定だ」と説明した。

そのほか、ラストワンマイル配送に対応する都心近郊の配送拠点「アーバン型MFLP」の展開、「MFIP羽田」(東京都大田区)に導入した非接触型エレベーターをはじめ、非接触エントランスの設置などによる感染症対策の強化などを進める。事業領域拡大のため、データセンターの開発などにも力を入れる。

■7月、船橋で街づくりプロジェクト完成

同社が竣工した物流施設は、先月末時点で31物件。約100社のテナントが入居し、満床で稼働しているという。さらに来年度中には「MFLP鳥栖」(佐賀県鳥栖市)、「MFLP所沢」(埼玉県入間郡)、「MFLP船橋3」、「MFLP大阪交野」(大阪府交野市、同府枚方市)、「MFLP市川塩浜2」(千葉県市川市)の5物件を竣工する予定だ。

特にMFLP船橋3は、同社が注力してきた街づくり型プロジェクト「三井不動産ロジスティクスパーク船橋」の3期物件だ。同プロジェクトは、「MFLP1」「MFLP2」「MFLP船橋・&GATE」「MFLP船橋3」といった物流施設と、地域の人にも開放する「緑地空間」で構成する。緑地空間の一部には、昨年12月にスケートリンク「三井不動産アイスパーク船橋」も開設した。同プロジェクトは総延べ床面積約70万平方メートル。7月に「街びらき」する予定だ。

国内で新たに7物件を開発する計画も発表した。新規開発物件は、「MFLP東名綾瀬」(神奈川県綾瀬市)、粕屋町物流施設計画(仮称)」(福岡県粕屋郡)、「MFLP弥富木曾岬」(三重県桑名郡)、「MFLP新木場1」(東京都江東区)、「MFLP新木場2」(同)、「MFLP平塚3」(神奈川県平塚市)、「MFLP海老名南」(同県海老名市)だ。三木常務は「当社は年間平均約5物件のペースで新規開発を行ってきたが、来年度以降はさらに開発を加速させる」と意欲を示した。


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