― 新型コロナ騒動が起こってから、それ以前に比べ人手事情に変化はあったか。
(山本社長)例年だと3月は人が動くタイミングで4月は採用しづらいのだが、今年は3月より4月の方が応募者が増えた。採用は意欲的に取り組んで増やしている。他業界からの転勤者で運送については未経験者が多いため、免許取得や住宅制度を拡充した。具体的には免許取得についてこれまで補助は10万円が上限だったが、25万円まで引き上げ、普免から中型を取っても足が出ないようにした。住宅補助は4年で区切っていた期間を6年に延ばし、利便性を拡大した。
― 働き方改革や社員の研修・教育の現状は。
(山本社長)働き方改革の稼働時間は生産性を上げることで考えているが、荷主の対応でより大きな影響を受ける。今後の残業60時間規制には休みの調整により稼働時間を削減し、基準値の1.5倍削減に取り組んでいる。
社員の講習や所長会議は集合による密を避けるため、役員会や幹部会合以外はすべてオンラインミーティングに変更した。ただ、まだ日が浅いので、リモートでどこまで理解しているのかつかみにくい面もある。大事な議題もすんなり通ってしまうなどの不安も少しある。
― これからはウイズコロナ時代になると想定されるが、今後に向けての方針や計画があれば。
(山本社長)当社は食品を扱っていることで売上はさほど落ちていないが、物流業界全体では減っている。そこで懸念するのは、これまで食品を扱っていなかった業者が参入してくることだ。食品はすぐにはできなくとも、やってできないことはない。昨年までは人手不足で業者に利があったが、今は仕事のない会社も出てきている。このため当社も品質を含め競争力を強化していかねばならない。国交省は運送業界の労働時間が平均より2割長く、賃金は2割安いという状況の改善を主旨に、4月に標準的な運賃を提示した。こうした中で、この先荷主から値下げ要求があっても、業界を挙げて受けないようにしてほしい。
― 最後に御社として特筆すべきことがあれば。
(山本社長)営業所長など管理者の役割を明確にすべく、3年前から成果をもって評価する制度を導入した。初めはなかなか馴染まなかったが、いまはこれが定着し会社が求めることに何をやれば給料が上がるのか理解してくれるようになった。事業推進の上で有効に機能するようになってきたので、これを現場のドライバーや庫内作業にも適用していきたい。成果に向けてやるべきことを明確にし、やりがいにつながるよう裾野を拡げていきたいと思っている。
(聞き手:葉山明彦)