物流業NOW!

小口配送と幹線つなげ自社ネット化を / コスト競争力つけ事業多角化めざす

物流業Now!(7)
ILRS&NEWS (Vol.523)
 

株式会社丸総 橋口社長

 新型コロナウイルスの発生で御社が取り扱う貨物量に変化はあったのか。

(橋口社長)運送に大きな影響が出ている。今年度に入ってからの幹線便の売上を前年同月比でみると、4月が10%減、5月が36%減、6月が33%減となり、7月も大きな落ち込みが続いた。このうち定期便が3割、フリーが7割で、品目でみると、飲料はそこそこ出ているが、日用品と原料関係(紙、アルミ、食料)が動いていない。一方、配送センターの売上は4月が31%減、5月が36%減と大きく落ち込んだが、6月は13%減、7月は横ばいまで戻ってきた。顧客でみると、自販機がまったく動かず、コンビニ関係もよくないが、スーパーマーケットやドラッグアストアが6月から上がり始め、取り扱いは少ないが通販関係が3~4倍に上がった。

 新型コロナ発生後、御社として対処したことは。

(橋口社長)感染予防策としてコロナプロジェクトを立ち上げ、全員・全所にマスクと消毒液を支給。不要不急の外出・飲食、県をまたいでの移動など人と会うのを私的面、営業面とも最小限にとどめた。事務所は受付にパネルを立てて消毒液を置き予防意識を高めたほか、事務室はフィルム囲いし、通勤はなるべく電車を避けて車にするなどの措置を取った。倉庫内では状況にもよるがなるべくロット単位で社員を動かすようにし、空調による除菌対策として除菌空気清浄機10台を購入、人のいる所では24時間稼働させている。

会議はなるべくWebミーティングとし、テレワークも事務に限らず配車、営業まで試験的に9月まで実施することにした。テレワークに関しては、これを機に紙に手書きする事務をデータ処理化することを進めていて、顧客と共同配送する7社が連係し電子伝票への切り替えを当社の神奈川物流センター(川崎)からスタートした。具体的には(株)TUNAGUTEの協力を得て、RPA(ロボテック・プロセス・オートメーション)システムを導入し、パソコンを稼働させて伝票類をデータ化する。このため事務員のリモートワークが可能で、業務軽減に加え、非接触でコロナ対策にもつながる。さらにピッキング、棚卸しなど物流上10項目のRPA化を推進中だ。こうした業務の見える化による簡素化、効率化を社員表彰のポイント対象にしていく。

― 昨年まで人手不足が続いていたが、新型コロナ発生後は人手事情に変化を感じるか。

橋口社長派遣も含め求職が増えている。庫内作業は、新型コロナ以前はまったく応募がなかったが、今は反応がある。ドライバーも未経験者が多いが、面談の申し出が入ってくるようになった。社員の紹介制度があり、紹介者の多い地元の静岡は多いが、関東は入社してもやめる人が多い。いまは協力会社が仕事を求める需要が強く、新規の仕事でも対応してくれるので、手当てはできている。

― 新型コロナ下で働き方改革や社員教育など進めるのに影響はあるのか。

橋口社長働き方改革では新型コロナ発生以前に、時間外を少なくするよう原資を上げて時間制限する給与改定を乗務員の理解を得て実施した。具体的には一定距離を走れば1日2.5時間分の時間外手当てを原資に上積みし、時間外は13時間までとすることにした。ただ、残業を多くして収入増を第一にする人はこの時点でやめた。給与改定後は20~30歳代の若手が入ってくる効果が出た。新型コロナ発生後は実車距離が少なくなったので割合分が減り、この段階でさらに数人がやめた。社員には有休で対応してもらったが、その時点では売上減が助成金対象にならなかったものの、5~6月は13台車両が止まり、助成金の対象となった。

社員教育については、上半期から全社員が交流する勉強会をリモートで行っている。ウィズコロナ時代はコスト競争が再来するとみており、経費効率化、業務簡素化が避けられないので、社員一人一人が高い意識を持つことが重要だ。コスト競争力を本当に高めるには現場拠点にいる人たちが自分たちで収支管理し把握することが必要で、勉強会では5つの事業部の社員を年齢や勤続にとらわれずみな平等に受け、各部署に持ち帰って慣習化してもらう。さらに下半期は幹部の教育研修を同時並行して行う計画だ。この7年間で急成長したため、新時代に向けたマネジメント力を強化するのが急務だ。社是の「革新と挑戦」から革新未来塾と称して課長以上の幹部を対象に、現世代の課長以上と次世代の幹部候補を分けて競い合い、よいところを伸ばしていきたい。

― ウィズコロナ時代に入ったと言ってよいと思うが、これからの事業展開の方針をお聞きしたい。

橋口社長ウィズコロナ時代は長引くとみており、長引けば長引くほど高いものは売れなくなる。多品種少量化はもっと進み、さらに少ない数量しか動かなくなる可能性がある。そうした時代に対応できるよう、社内的には前述のとおりコスト競争力の強化と品質向上に向けた取り組みを始めている。事業的には当社のできるエリア、具体的には近畿から北関東の間で、静岡のほか、南関東、中京で1~2パレットでも最終納品先まで届けられる小口配送の体制を作っていきたい。静岡、南関東は1~2年、中京は3年くらいで完成する計画。これらエリアと幹線輸送をジョイントさせた自社一貫体制を商品化していくのを第2次中期経営計画に掲げている。収益を上げるには稼働率を上げる必要があり、混載化、定期化、リレー化して、顧客・会社・乗務員の三方よしのトリプルウィンルート作りを進めている。

まずこの自社ネットワーク作りに注力していくが、これと並行して事業の多角化を進めていきたい。この間の新型コロナ不況に耐えられたのは物流センターが収益を支えたからで、これからは顧客も業種も広げて多角化し、さらに専門性を強化し相乗効果を出していきたい。新規で医薬品、医療機器関係に取り組んでおり、規模を拡大して自社ネットワークに乗せていく。GDP(適正流通)対応医薬品輸送に向けて温度管理など品質向上に取り組んでいこうと思っている。危険物分野も法律の厳格化がさらに進むと思われ、自社ネットワーク化を売り込んでいく。

(聞き手:葉山明彦)


株式会社丸総
静岡県榛原郡吉田町神戸3075番地の1

代表取締役社長 橋口 智規
ホームーページ https://www.marusoh-el.co.jp/page1

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