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国内航空貨物 マイナス幅縮小も一進一退 旅客需要回復の遅れ背景に

Daily Cargo  2020年8月14日掲載

 

新型コロナウイルス感染拡大で、国内旅客需要の回復が足踏みしている。これに伴って供給スペースの減少が、国内航空貨物取扱量にも影響を及ぼしている。5月以降、国内航空貨物量自体は月を追うごとにマイナス幅が縮小しているものの、国内旅客便運航および供給スペースは不安定な状況にある。旅客便動向の影響を受ける国内航空貨物事業は、しばらく一進一退の状況が続きそうだ。九州を中心に甚大な被害を招いた7月の豪雨が、農産物の生育・出荷にどのような影響を与えるか、という点も課題となる。

本紙集計によると、2020年上半期(1~6月)の国内航空貨物量は前年同期比26.6%減の25万5654トンだった。昨年末までマイナス基調だったが、今年に入ってプラスに転換。荷動きの盛り上がりに期待が寄せられたが、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けた。移動自粛、旅客需要の低迷に伴って、3月以降に旅客便の運休・減便、機材小型化が相次いで発生。スペース減少を余儀なくされたことを受けて、国内航空貨物量はマイナスに転じた。

旅客便の運休・減便、機材小型化が最も顕著だった5月に、国内航空貨物量は5割を超えるマイナス幅を記録。過去に例のない落ち込みを見せたが、6月以降は旅客便の運航再開の動きも出始めて、国内航空貨物量のマイナス幅は縮小した。7月は3割程度の減少が想定されており、国内航空貨物量の停滞は、5月が「底」と言えそうだ。

当初、想定していたほどに国内旅客需要が回復していないことが、足元の懸念材料となっている。航空会社は順次、国内旅客便を再開してきたが、ここに来て改めて減便を計画する動きが聞かれるようになってきた。政府による需要喚起策もあったが、感染者数に歯止めがかからない状況にあって、国内移動需要の回復のスピードは想定より鈍い。

幹線を中心とした“旅客機貨物便”を運航することで、貨物搭載スペースの不足を補う状況がしばらく続くことも想定される。「巣ごもり需要」に伴って宅配貨物全体の取り扱い個数が増加傾向にあり、こうした需要を継続して航空輸送に取り込むことも重要な施策となる。7月は九州を中心に豪雨に見舞われた。全国的に梅雨明けのタイミングも遅かったため、豪雨や長雨、日照不足が農産物の出荷にどのような影響を及ぼすのか、という点も課題となりそうだ。

なお、今年上半期の国内航空貨物取扱量の月ごとの実績は▽1月=5万4172トン(前年同月比0.4%増)▽2月=5万4643トン(0.7%増)▽3月=5万5935トン(12.9%減)▽4月=3万1452トン(48.6%減)▽5月=2万6537トン(53.3%減)▽6月=3万2915トン(43.1%減)。


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