(飯田社長)菓子メーカーの出荷がなくなり、外食産業やファーストフードの客は半減状態、デパートのレストランも休業している。スーパーマーケットだけは活況だが、減少の一部を補完するしかできない。ただ、原油価格が下がっているのが救いで、現状4年前の低い水準に戻った。売上減を少しでも吸収できるとよいのだが、厳しい状況は続くと気を引き締めて臨む。低金利融資など公的補助も使えるなら視野に入れていく。
― この間、人手不足や人材育成に独自の取り組みをしてきたが、この取り組みとこれまでを成果を話してほしい。
(飯田社長)人手不足は何もいま始まったことでなく、30~40年前から労働系の仕事では不足しており、変わったとすれば労働年齢の構成で若者が少なくなったことだ。業界イメージは変えられないが、当社では企業イメージは変えられると思い、若い人を呼び込める職場にしたいと数年前から対策を実施してきた。一つは「ブランディング」だ。社名、ロゴ、ユニホーム、福利厚生など見直し、新たなイメージを発信した。3年前に社名とロゴを変更し、ユニホームも一新、さらに企業アイデンティティを高めるため社歌を作った。これは日経新聞の社歌コンテストで入選し、複数のマスコミにも取り上げられている。このほかおにぎり弁当を全員に無償支給している。社内にキッチンを新設してパートを雇い毎日300食を作っている。これらの結果、20代、30代の人が応募して、採用できるようになった。
成果としては3年前に比べ、1年定着率が82%から89%に上がった。ただ、平均年齢は高齢者も多いのでなかなか下がらない。離職者の平均年齢が49歳、新規採用は37歳で10歳以上差はあるのだが、300人くらい従業員がいて全員が毎年1歳上がるので薄まってしまう。それでも20代を積極的に採用しているので、これから毎年着々と下がっていけば3年ほどで2~3歳下がるかもしれない。
もう一つは人材の育成だ。「高井戸大学」を作り、これを入口に5段階の研修システムを作った。現在6期生で卒業生を合わせると約40人となる。入社して1年間の研修が終わると、スキルアップ講座としてコミュニケーション能力向上を主に年2回、1泊研修を行う。その上の研修が主任、係長クラスの物流塾、次が訓練道場、そして一番上が経営塾となる。特徴としては通常の業務遂行での諸課題は自分で考えて対応するという方針でやっている点だ。センター長、営業所長が自ら考えて業務改善に向かい、結果が出ればさらに飛躍を考え、出なければ何をすべきかを考え、できない場合は統括者がコントロールして軌道修正をしていく。これを繰り返すことで業績が向上し、社員の収入も賞与で上がる。私は今年の基本方針と目標額を言うだけにしている。
―次は運賃問題について。運輸審議会は4月14日、国土交通省が告示した標準的運賃を承認する答申を出し、即日発効した。小型車について実勢との乖離が大きすぎるとの見方があるが、これについての感想は。
(飯田社長)新型コロナウイルスで緊急事態宣言が出ており、この時期に実施となったのはタイミング的にあまりよくないが、運賃水準の乖離の点で言えば距離制運賃は地方に多いのに対し、関東圏の大都市部は時間制(8時間)が多く、運賃の建て方が異なる。この点で大都市部から見ると小型車の告示運賃はかなり高く見える。
運賃値上げでは、当社の場合はこの間も作業を含め個別に努力を積み重ねて上げてきた。働き方改革も含め人手不足が続く中で、もはやかつてのような低運賃や悪条件が続く時代ではなくなり、これからは荷主も選別される時代になっていくのではないかと思う。当社では働き方改革にそぐわない深夜配送の仕事は前年度までにすべて辞退させてもらった。昔は若い人で深夜でも稼ぎたいという人がいたが、今は誰も深夜に働くのを嫌がり、そうした仕事を続けると収益性の問題に加え離職率も高まるので思い切った対応に踏み切った。今は新型コロナウイルスで営業的に厳しいが、落ち着いたらこうした効果がさらに出てくるとみている。
(聞き手:葉山明彦)
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(東京都トラック協会副会長)
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