― 御社が主力とする北関東で採用、配車、道路などの地域事情をお聞きしたい。
(吉川社長)採用については、徐々に厳しさを増してきている。これまでは東京、神奈川、千葉、埼玉など首都圏のような厳しさはなかったが、競合他社が人手不足に対応してメディアを活用するなど採用活動に力を入れてきた。当社としては地域ではまだ少し優位性があるものの、新卒、既卒問わず間口を広げて募集を続けている。また、新型コロナウイルスの影響で企業の新卒内定取り消しが起こる中、こうした方々を対象に再募集も行っている。
配車については、ゾーンを決めたルーティンワークなので特に変化はない。共同配送を実施しているが、首都圏にセンターを置く他社が今後働き方改革で北関東へ直送できなくなり、共配を依頼してくる可能性がある。その場合、現状のキャパに余裕はないので無制限には受け入れられない。また、需要に対応した採用も進めていく必要が出てくる。
道路事情は圏央道の開通以来、混雑もなくなりよくなった。ただ、圏央道が整備されたことで沿線に他社の倉庫参入が相次ぎ、競争が出てきたのも事実だ。
―次は車両、設備、拠点など御社の投資についてお話を伺いたい。
(吉川社長)車両は現在、4トン車を中心に170台前後持っているが、今後は5~10%増車して大型車も増やしていく。ただ、同時にドライバーも育成していかねばならないので、まずは7~8台を目安に着実に展開していく。投入先は地盤を持つ北関東が主で大手や業者数多い首都圏は競争が激しいので避けたい。大型車は通販物流の増加で拠点間輸送が増えているため、幹線参入をめざして投入していく。
設備面ではデジタルタコメーター、ドライブレコーダーをリニューアルするほか、情報システム関係でTMS(輸配送管理システム)を導入する。当社は早い段階からデジタコ、ドラレコを導入したが、機種の機能性が大幅にアップしており、管理の簡易性やデータ蓄積などもできるものに替える。システムは人事管理系も含めた全社的な総合デジタル化をめざしており、ビッグデータの活用や将来は顧客とのアクセスもしていく。
拠点としては、6月に水海道営業所を内守谷工業団地(常総市)に移転し、倍の2000坪弱の床面積で営業を開始する。顧客の工場移転に対応した。
―人材教育や育成についてお聞きしたい。
(吉川社長)国内物流がシュリンクする中で、今後生き残るには高品質の輸送を維持しながらある程度の規模拡大が必至と考えており、この鍵となるのは人材をマネジメントできる管理職の育成だ。当社の場合、採用はできても離職する人が少なくなく、定着率を高めることが急務となっている。業務ルールをしっかり覚えて長く勤めればサービス品質は向上するので、今後社員にそうしたマネジメントのできる管理職候補を人材会社の紹介なども含めて探していく。
―次に運賃問題だが、現状と取り組みについて伺いたい。
(吉川社長)一般産業に比べて運送業従業員の給与はかなり低く、諸コストアップが続くなかで待遇改善をしていくには運賃を上げなければならない。ただ黙って何もせずに運賃が上がることはないので、当社はサービスの品質向上と並行して交渉している。全社一気にお願いするのでなく、顧客にもそれぞれ個別事情があるので、それに合わせて1社1社時間をかけて取り組む。例えば物量の増減に合わせ、効率化など改善案を予算前に提示し並行して値上げを打診するなどしている。
順次、それなりに運賃アップを果たしているが、もとが低いので給与面では一般産業にまだ追いついていない。働き方改革に向けて策定した理想的なモデルは、現行隔週2休制を週休2日制に移行して年間休暇104日以上、賃金は年収400万円だが、これだと時給1200円くらいにしなければならない。
― 最後に新規事業の取り組みについて。運送関係では先ほど大型車への参入などお聞きしたが、他には。
(吉川社長)まだ新規事業として確立したとはいえないが、物流不動産ビジネスに力を入れている。イーソーコと共同出資でイ-クールという冷蔵倉庫の不動産会社があり、今年からこの会社を稼働させた。物流業者が持つ少し古くなった倉庫を活性化させて、副産物として倉庫業務や流通加工などやりたいと思っている。大手物流不動産のデベロッパーという規模ではないが、小規模なマーケットとして成り立たせたいと思っている。
このほか東日本大震災/原発事故を機に地元農家の救済になればと食品青果の航空輸出を画策したが、生鮮輸出は九州地区が先行していて、茨城の商談はまだ少なく、あまりうまくいってない。
(聞き手:葉山明彦)
茨城乳配株式会社
茨城県水戸市千波町1821番地の1
代表取締役社長 吉川 国之
ホームページ https://nyuhai.net/