港湾春闘が妥結、スト解除 産別最賃は切り離し、組合は9月に対応検討
Daily Cargo 2019年7月29日掲載
2019年港湾春闘は25日、第9回中央団体交渉を開催した。争点となっていた産別最低賃金の統一回答問題については春闘から切り離し、労働条件の改善などの要求項目について労使が合意した。2月に発生した沖縄の事前協議制度違反の問題については労使で別途、確認書に署名。日本港運協会は沖縄港運協会に対し、状況把握を求め、その報告を踏まえて中央・地区労使で引き続き協議する。また、今後も事前協議制度を厳格に運用する立場から、中央・地区労使で港湾労働者の雇用と職域の問題が生じないように対処することを確認した。春闘妥結に伴い、組合側は通告していた毎日曜のストライキ指令を25日午後4時10分をもって解除した。
2月中旬にスタートした19年春闘は、産別最低賃金の統一回答問題や事前協議違反の問題などにより、例年になく長期化した。特に産別最賃の問題は日港協が過去3年間、関係法令への抵触の恐れがあると統一回答を回避していたが、今年もその立場を崩さなかった。中央労働委員会のあっせんも不調に終わり、労使の主張が平行線をたどっていた。組合側は統一回答を求め、3月31日、4月7日、14、15日、21日の4週連続でストライキを実施した。ゴールデンウイーク(GW)中もスト実施の可能性があったが、ギリギリで回避に至った。
GW後には交渉を前進させるため、中央団交の下に実務者レベルによる小団交を設置。計5回の小団交を通じて、労働条件の改善や事前協議違反の問題については労使合意の最終段階まで調整が進んだ。一方で産別最賃の問題については前進しなかったため今回、事態の打開を図るため、同問題を春闘要求から切り離し、別途協議していくこととした。組合側は9月18、19日に予定している定期大会で、中労委への救済申し立てや民事訴訟などを含め今後の対応を議論する予定だ。
春闘で妥結した内容のうち、認可料金制度の復活については、関係行政などに要請することをはじめ、あらゆる方策を検討する。その中で必要に応じて調査なども含め、具体的に取り組むことを確認した。労働力不足を背景とした人材確保策については、日港協が社会的アピールの一環として、港運業界の重要性や認知度を高めるための広報用動画を作成し、活用する。
定年延長については、25年度の定年65歳の確実な実施に向けて、各企業労使で努力するよう周知する。港湾年金の支給要件改定に向けては、原資負担の増加が見込まれるので、労使からなるワーキンググループを立ち上げて検討する。港湾労働安定協会からデータの提供を求めつつ課題の精査を含め、65歳の誕生日までを対象とし、20年4月1日から実施することで合意した。
船社統合やアライアンス再編にかかる港運事業の業域と職域確保に対しては、事前協議制度の徹底を図る。17年3月1日付中央事前協議会議事録確認を原則に、船社からの事前協議申請については、日港協として関係元請と雇用不安の有無について十分に検証した上で、中央事前協議会や小委員会で協議・検討する。必要に応じて船社への協力も求めることとした。
関連専業の労働環境整備については、日港協整備部会と関係労働組合による専門委員会で早急に協議促進を図る。四国地区の労使協議体制は、労使懇談の場として「四国地区港湾労使協議会」を設立し、引き続き相談など対応していく。三島川之江港の指定港化については引き続き中央・地区一体となって関係先に働き掛ける。
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