航空貨物、GW控え情報共有へ 前後の搬出入集中と滞貨に警戒
Daily Cargo 2019年4月12日掲載
今月末からのゴールデンウイーク(GW)を控え、航空貨物業界でも事前対応の動きが本格化している。今年のGWは新天皇の即位に伴って異例の10連休となることから、例年よりもGW前後の搬出入の集中や滞貨が激化し、貨物地区が混乱することも懸念される。成田など主要空港の貨物上屋の多くは通常通りの営業体制で、貨物量に応じた人手をそろえて休暇中の貨物の出入りに備える構えだ。ただ、上屋会社やフォワーダーも荷量の見通しが固まっておらず、GW中の人員配置などが決められない会社もある。航空会社や上屋はフォワーダーに、さらにフォワーダーは荷主に対して、早期の出荷情報の共有を呼びかけている。
成田や羽田、関空などの主要空港では、多くの航空会社上屋や共同上屋が10連休中も通常通り営業する予定。GWに入れば、多くの製造業が休業して輸出貨物は搭載需要の減少が見込まれる。全日本空輸は沖縄貨物ハブを含めて貨物便の一部運休を検討中で、運航計画が固まり次第、ホームページなどで案内する。ほかにも貨物便は既に一部運休を決めたり、検討したりする航空会社がある。上屋各社は航空各社の運航状況やフォワーダーからの出荷情報、過去の大型連休の取り扱い実績から貨物量の見通しを出し、これに応じて人員配置を調整して営業する予定だ。
航空、上屋各社とも需要の見通しは固まっていないが、現時点では楽観的に見る会社と、かなり厳しいシナリオを想定して動く会社とで温度差がある。GWに向けては、まず休暇直前の24~26日に輸出貨物の集中搬入が見込まれる。さらに、期間中も他国は連休でないために輸入で一定量が見込まれるが、休暇で引き取り手が無い貨物が空港内外の上屋や倉庫で滞留することも懸念される。GW終盤には連休明けを目掛けて輸入量の増加も予想され、7日以降の搬出作業では引き取りのトラックが長い列をなしそうだ。成田の上屋関係者は「連休が長いので休み明けからすぐに生産に取り掛かりたいという荷主も多そうだ。終盤の3日以降から搬出指示や引き取りが増える可能性もある」と話す。
成田では通常、空港の運用時間となる午前6時~午後11時前後を基本的な営業時間とし、依頼があれば緊急通関など深夜・早朝も特別対応する上屋が多い。GW中も同様の対応を予定する上屋が多く、施設や日によって営業時間の短縮を検討する会社もある。輸入の滞貨対策としては、連休前までに既存の輸入貨物の早期引き取りを呼び掛けたり、輸出貨物の早過ぎる搬入を控えるよう要請したりする動きがある。上屋内のスペースを効率的に利用する工夫を施して対応する会社も多い。物量の見通しによって整備地区の空き上屋の手配を視野に入れる上屋もある。
成田では昨秋、関空が台風で機能停滞した際に輸出入貨物が一気に流れ込み、滞貨が深刻化して一時は受託制限を余儀なくされた苦い記憶がまだ鮮明に残る。航空会社や上屋会社は、搬出入の集中と滞貨を緩和するため、フォワーダーなど顧客に対して出荷・搭載計画を早期に提出するよう求めている。日本航空は貨物のホームページで、12日までに貨物スペースの利用予定を連絡するよう呼び掛ける文書をアップ。これをもとに、連休前の人員や施設の調整を図るとしている。その他の航空・上屋会社もフォワーダーなどへのヒアリングを通じて、やはり15日には物量予測を固めたい考え。早期の情報収集でGW中の人員配置を決める。
関空や羽田、中部でも主要上屋がGW中を通じて24時間対応の通常営業を予定。東京国際エアカーゴターミナル(TIACT)では輸入貨物の滞貨が懸念されるため、保管ラックやスキッドなど数百台をレンタルしたほか、上屋内のレイアウト変更などを実施して蔵置能力を高める。関空でハンドリングのシェアが高い日航関西エアカーゴ・システムは、物量に応じて輸出・輸入上屋を柔軟に使い分けるなどの対応を予定する。
◆FWD「まだシフトを組めない」
航空フォワーダーも対応に追われている。成田空港外のフォワーダー施設は連休中、出勤する作業人員を縮小しての営業を予定するところが多い。ただ、実際にどれくらいの人手が必要なのか、現時点では不透明とするところが多く「まだシフトを組めない」との声が聞かれる。輸出についてはメーカー工場も止まるところが多く、案件はそれほど多くないようだが、輸入の人員は一定数必要。一般消費財など流通系、eコマース(EC)の輸入で見通しが難しく、フォワーダーのオペレーション現場は、営業部門と連携しながら、荷主に早めの情報提出を呼び掛けている。
成田のフォワーダー上屋では、連休中に全面休業とするところは少なく、案件ベースで規模やサービスを縮小して営業するところがほとんど。各社は連休中の出荷・入荷情報について、荷主への情報収集を進めているものの、海外の発地案件も多い輸入はなかなか情報収集が進んでいないようだ。
各フォワーダーの現場担当者は頭を悩ませている。「輸出についての不安はないが、輸入はどれくらいの量になるのか分からない。働き方改革の流れもあり、なるべく早めに休みを確定したいが、需要が読み切れないのが現状」(大手フォワーダー)という。
配送車両、実作業を担う請負企業のスタッフ確保などの課題もあり、まだ対策が充分ではないようだ。「情報提出を呼び掛けても荷主にどの程度、危機感があるかは不明だ」(大手フォワーダー)という声もある。現場の労働力、ドライバーの確保に加えて、荷主がGW中に荷受するかも焦点だ。「(スペース不足が予想され)急に追加の倉庫スペースは用意できないため、上屋側とも相談しているが、上屋側からは荷主がどう考えているか情報がほしいと言われる」。
また、連休明けの7日は輸入貨物の混雑も想定される。連休明け早々に生産・販売開始する需要が見込まれ「7日午前着の配送手配は厳しくなりそう」(中堅フォワーダー)。
輸出に関しては「自動車関連で一部稼働するメーカーもある」というところもあったが、自動車、電子電機、繊維などの主要な航空貨物の品目で「稼働すると聞いているところは少なく、数名を待機させていれば対応できるだろう」(中堅フォワーダー)といった状況。連休前の24~26日がピークとなりそうで、スペース確保も含めて荷主に早めに相談するよう呼び掛けを行っている。そのほか、連休前に輸出貨物の搬入が集中することを避けるため、連休の中日を営業日として搬入時期の分散を呼び掛ける会社もある。
一方、最大手の日本通運は、輸出CFS業務について、カレンダー通りの休日対応を決めた。4月28日から5月6日まで主要空港での業務を休業する。輸入は29日から3日まで休業とし、4日から6日は通常の休日対応とする。
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