インタビューリレー「物流企業はいま!」

条件そろう移転先みつからず / コスト増に対応し値上げ要請

物流企業トップに聞く ~物流企業はいま!(20)~
ILRS-NEWS Vol.432

 

株式会社アサクラ 東海林 茂 社長

― 御社にとっていま最も重要な経営課題は何か。

(東海林社長)移転問題だ。当社は昭和48年からここ(西川口)でタンクローリーを保有・運行してきたが、宅地化が進み、現在は前がマンション、近くに中学校もあり、住宅地のど真ん中となってしまった。前の道は大型車が通行禁止なので許可をとって走らせているが、道路が揺れる状態だ。このため親会社からも移転せよと言われているが、近くに適当な土地が見当たらず、移転するなら遠くの工業団地しかない。もし遠くに移転することになれば、現在25人いるドライバーの3分の2は通勤できなくなり、従業員のほとんどが通勤不可能となる。また現在荷主の貯蔵タンクもあるが、これも離れると仕事を失ってしまう可能性もある。幸いなことに今は仕事がたくさんあり、近所からの苦情も表だって出ていないが、扱う貨物が薬品なので何か事故を起こしたら一気に大騒ぎとなってしまう。ひじょうに頭の痛い問題だ。

― 昨年の運送約款の改定に対して御社はどのように対応したか。

(東海林社長)親会社品質管理部門の指導にのっとって新約款を提出した。ただ、液体貨物のため荷待ちは発生せず、積み降ろしもホースで行うので、一般貨物のようなことはない。運賃は見積もり依頼があると荷主と折衝するが、ローリーなので片道で採算がとれるような料金となり、一般貨物の倍くらいになる。

― 行政や業界への要望、あるいは物を申したいことがあれば。

(東海林社長)今日の大型ドライバー不足をみていて、行政は10年後の物流をどう考えているのか不安にある。いま50歳代以上の人たちが引退する一方、若い人は車に乗りたがらず、宅配はまだしも大型は崩壊するのが目に見えている。10年後に担ってもらえる人を確保するには何かニンジンではないが高給をぶらさげないとダメなのではないか。いまはそれを各社事業所単位で考えろということなのだろうが、運賃が上がらなければかなり厳しい。軽油もこの1年で20円上がり、当社は年間5万6000~7000㍑使うので、120~130万円のコスト増となっている。宅配は昨年13%くらい上げたが、当社も遅ればせながら8月末からそれに準ずるくらいの値上げを要請している。

採用は待っていても来ないのでいろいろな媒体を使ってやっているが、採用してもすぐやめる人が多い。当社のドライバー平均年齢は40歳代後半だが、増車計画があってもなかなか実行できない。バス会社は高卒を採用して運転免許の取れる3年後に向け青田刈りしているようだが、大型トラックもそうせざるを得ないのではないか。
(聞き手:葉山明彦)


株式会社アサクラ
埼玉県川口市西川口6丁目14番30

代表取締役社長 東海林 茂
ホームページ http://www.kanda-web.co.jp/asakura/index.html

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