結城運輸倉庫(株) 結城賢進 社長
― 御社にとっていま最も重要な経営課題は何か。
(結城社長) 2つある。一つは人手不足への対応だ。現在の当社ドライバーの平均年齢は49.7~8歳で、20代が少なく60代がかなり多い。ドライバー190人のうち20代はわずか5人で、40代後半から50代前半に山がある。若手が少ないのは業種的に仕方ない面もあるが、それでも少なすぎる。大型、危険物、トレーラーなど需要が増えていて、これではいけない。人の確保は従来、全国に散らばる車庫を拠点に現地のハローワークのみで対応していた。しかし、これでは採用定着に限界があるので、本社総務部を人事総務部に変えて、本社が戦略的にやっていくことにした。
まず、昨年からホームページ上の採用コーナーを充実させた。ポイントは実際に働くドライバーの露出を増やし、会社の中身や業務内容を「見える化」したこと。目下、会社紹介動画を作成中である。募集はリクルート系「はたらいく」を使って随時行っている。従来は全国各拠点で採用し、本社が採用や研修を怠っていたため、各拠点=会社だったが、今は新入社員を半年に一度本社に集め、社長自ら会社の歴史や方針、これから会社をどのように運営していくのかを直接伝えるようにしている。会社のアイデンティティーを持ってもらいたいからだ。ただ、入社後にすぐやめる人もいて、教育システムをさらに充実させ、定着するような方策をとっていきたい。
賃金面では4月から待遇改善を実施した。運賃引き上げの刈り取りがまだ目標の半分しか達成できていないが、これを見越して今後3年計画で段階的に引き上げていく。今回は仕事量に応じて業績手当ての単価を上げたが、来年からは2年越しでベースアップもやっていく。
重要課題のもう一つは石油市場の規模縮小への対応だ。当社はタンクローリーなど石油関係の輸送による収入が全体売上の7割近くを占める。冬場の灯油需要が増えた今年を除くと2013年以降石油輸送量が漸減している。ハイブリット車の普及の影響が主因である。近い将来のEVシフトの流れは現実になるだろう。また特に重油は年5~10%減ってきている。いきなり急減することはないにせよ、石油輸送のプロ集団である当社として、将来に向けて真剣に考えていかねばならない問題だ。すでに液体食品のアルコール類や飲料水など周辺事業に取り組んでいるものの、需要量が異なる。当社の強みを生かして食品輸送で大型ローリーを使えるような貨物を開拓して輸送量を増やしていきたい。
― 昨年の運送約款の改定に対して御社はどのように対応したか。
(結城社長) 改定の届け出は早くから行ったが、実質的な値上げ要請の対応はその前からやっていた。人件費を上げ、ドライバーの待遇改善を図らなければ、安定輸送に事欠く状況だったので、必然的に対応が迫られていた。11月4日の合同説明会には荷主も一緒に来てもらったが、これで改定できたのはごく一部で、効果としては自ら取り組んできた値上げ要請の方が大きい。昨年は人件費の対応に絞って、まずは運賃本体部分の値上げを中心に取り組んだが、燃費やタイヤその他みんなコストアップしており、今年は全体的な運賃料金アップに取り組む。東京五輪以降は労働需要が減る可能性もあるので、この1年でメドをつけなければならない。
― 行政や業界に要望や訴えたいことがあれば。
(結城社長) 働き方改革について、当社はこの2年間で14拠点中8拠点に労働基準監督署が監査に入ったのを契機に、改善策を打ち出した。社内では超過勤務はするなと総務~営業所長を中心にドライバーに言っている。ただ、冬場の石油需要期になるとまだ月の残業時間が100時間超のドライバーも出ている。政府は5年後に超過勤務を月80時間以内、年に960時間以内にすると言っており、これを達成するために本社・営業所が連携した取り組みを行い、業務を改善していく。改善基準告示無違反制度という社内表彰制度も設けた。
現状を考えると、若い人は自分の時間も大事にするワークバランスを指向している。もはや残業時間を踏まえた給与体系ではダメで、これを真摯にうけとめ、残業を減らし、それでもしっかりと給料を払う会社にしていきたい。だから訴えたいのはむしろ荷主やその先にいる国民に、だ。物流の担い手がいなくなれば大変なことになる。コストに見合った適切な料金を払っていただくことをご理解願いしたい。行政や業界には作ったルールをしっかりと業者が順守するよう、違反者が放置されないよう十分な指導をお願いしたいと思っている。
(聞き手:葉山明彦)