外国人雇用について考える(その1)
2025年3月26日
『物流なんでも相談所』
岩﨑仁志
前号で、2025年度問題について検討させていただきました。今号では労働力不足に悩む物流企業はどのように解決していくべきか、特定外国人ドライバー雇用制度はその解決となれるか考えてみましょう。
2025年問題には①2025年、国内における75歳以上の高齢者数が、2180万人に、また国内人口の3分の1が65歳に達し、 日本は超高齢化社会に突入、このままいくと経済の縮小が加速し、社会保障の負担はさらに大きくなっていく、②2024年4月以降始まったドライバーの残業規制の影響が、2025年、年度末が近づくにつれて表面化してくる(未完了の仕事が翌日に持ち越されるなど作業の蓄積が延々と続くことも)、③物流業界においてECが急成長を始めた2000年代前半、企業のIT化はそれに合わせるように急速に進んできたー、当時導入された企業のシステムは2025年以降一斉に老朽化し、 維持管理に今後コストがかさむ懸念もある、という3つの壁が立ちはだかっている、と言われています。
物流業界における働き方改革の問題は賃金引上げや労働条件の改善などの困難な条件をひとつずつクリアしていかねば解決には至らないことは明確です。2024年4月以降、ドライバーに対する時間外労働に上限が設けられ、事業者には対応の義務が課せられるようになりました。物流業経営者は日々の業務に対応しながら、厳しい取組みは続いています。例えば、①ドライバーの残業時間減少により、人員を増やすのが理想ですが、簡単ではありません。②長距離ルートを止めて、地場シフトを少しずつ進めている企業も出ており、そのために大型トラックでの幹線輸送に支障が出始めています。③ドライバーの労働時間が超過しそうになると、社長、家族が自らハンドルを握るが、これだと何とか生き残ったとしても、決して成長できないこともわかっています。
ドライバー確保の基本は賃金水準や労働条件を引き上げることがポイントとなります。しかし彼らの給与を上げる原資は運賃しかないことを経営者はまず頭に刻み込んでおく必要あります。適正運賃の収受のため運賃交渉は必須です。もちろん値上げだけが交渉の全てではありません。軒先条件の改善も大きなカギです。荷待ちや付帯作業の削減や運行の組み替えなどに対し、協力を得られるだけでもコスト効果は絶大です。
慢性的な人材不足が深刻化する物流・運送業界の打開策として、2024年3月、特定技能に「自動車運送分野」が追加されることが決定し、外国人ドライバーの雇用が可能になりました。現在国内で就業している外国人労働者には若年層が多く今後の企業経営を進める上で重要となる若年層の雇用という点でも大きな魅力があります。
2019年より制度が開始された「特定技能」とは、人材不足とされる特定産業分野(現在16分野)で外国人が就労可能な在留資格、「特定技能外国人」とは、その在留資格を持っている外国人のことを指します。「特定技能」は、一定の専門性・技能を持った即戦力としての水準が求められています。「特定技能」1号の分野に「自動車運送業」の追加が決定し、タクシー、バス、トラックのドライバーとして外国人の雇用が可能となりました。この制度により外国人ドライバーの雇用は、物流・運送業界に新たな人材を呼び込むという期待もありますが、業界内外の特定技能制度理解の浸透や、外国人の運転免許取得、コミュニケーションなどの課題があるのは事実です。今後採用を行なう企業にとっては初めての事案が多く、慣れない手続きや支援に悩むことも多いはずです。人材紹介会社や登録支援機関などをうまく活用し、国籍を問わず優秀なドライバーを育成し、企業力の強化に努めたいものです。最初の高い壁を乗り越えられれば、徐々にコツもつかめていくはずです。「特定技能」は国際貢献や人材育成を目的とした技能実習とは異なり、一定の専門性や技能を有した即戦力確保が目的です。そのため外国人を雇用するために企業側にも要件があります。全分野共通要件と自動車貨物運送業、それぞれに企業に対して要件が課せられています。詳しい条件や手続きは次回に解説させていただきたいと思います。
また、次月の弊社主催セミナーでは「外国人ドライバー採用本格化!何がポイントで何の検討が必要か?」と題し、特定技能外国人の国内受け入れに実績のある協同組合ビジネスプラザの安藤専務理事をお招きし、受け入れの流れや注意点などを解説致します。外国人ドライバー採用にご興味のある運送事業様は是非ご参加ください。
◆セミナー詳細・お申込はこちら⇒ https://www.e-butsuryu.jp/event/5139/