物流よろず相談所

2025年問題を考える

2025年3月5日

『物流なんでも相談所』
岩﨑仁志


2025年、4月から新年度が始まります。2025年度は人対策を重視する年となりそうです。ここにきて2025年問題が取りざたされています。3年以上にも及ぶコロナウィルスの蔓延や不安定な政治・社会情勢は、落ち着きを見せてはいません。トラックの値段も跳ね上がり、加えて燃料費の高騰等に苦しむ物流業者にも深刻な影響を与え続けています。今後物流業者は荷主の課題にも直結、共に対応していく必要あります。新年度スタートが近づいてきた2025年問題、そして2024年問題は、社員の働き方改革抜きには解決できない重要課題です。大切な資産である社員と共に取組みたいものですね。

2025年、改正2法によってどのような変化が訪れるでしょうか? 改正物流総合効率化法と改正貨物自動車運送事業法が2025年5月15日までに施行されることになっており、閣議決定では4月施行を目指すとしています。政府は法改正により、施行後3年で(2019年度比)荷待ち・荷役時間を年間125時間/人削減させ、積載率向上による輸送能力を16%増加させることを目指すことにしています。法改正内容は、1.荷主・物流事業者に対する規制的措置(流通業務総合効率化法) 2.トラック事業者の取引に対する規制的措置 (貨物自動車運送事業法) 3.軽トラック事業者に対する規制的措置(貨物自動車運送事業法)の3つです。この結果として、2028年までに、①5割の運行で、1運行あたりの荷待ち・荷役等時間を計2時間以内に削減 ②5割の車両で、積載効率50%を実現(全体の車両で積載効率44%に増加)を目指すことも明らか志しています。荷主(発荷主・着荷主)・物流事業者(トラック、鉄道、港湾運送、航空運送、倉庫)に対し、物流効率化のために取り組むべき措置について努力義務を課し、国がその判断基準を作ります。荷主には物流の経営責任者の選任、元請け事業者には実運送管理簿の提出とこれまで多重構造となっていた運送業界のあり方にメスを入れたものと言えるでしょう。物流業界において現在ベテランとして活躍しているドライバーの間でも高齢化が進み2025年には大量の退職者が出るとの予測もあります。今後の動きが注目されるところです。

加えて物流業にとっての重要となっている2025年問題はほかにどのようなものがあるでしょうか?多くの企業が2024年問題の対応に追われる中、物流業界も少子高齢化による更なる労働力不足や企業システムの老朽化がもたらす課題に直面しています。課題は①トラックドライバーや倉庫スタッフなど物流の核となる労働力が確保できない、②長年使用してきた古い企業システムは部門や事業所などにより互換性が取れていないなど作業スピードや効率面からも今後の業務進化に対応しきれない不安も出ています(旧システムメンテナンスも多くが保証期間も過ぎており、維持コスト面でも今後の負担は大きいことも不安要因)、など。

物流企業にとって大切な資産である「人」は現在とても希少な価値を持っています。この少ない人的資産をより有効に効率的に活用していくためにもレイバーコントロールを見直し、仕事量に応じた適切な人員配置を行なっていく必要があります。物量や社会情勢などによっても業績変動が激しい物流業界においては、とりわけ倉庫やセンター内での、推測される業務量に応じたムダのない人員配置とスタッフの理解が重要で、適切な教育で売上げ目標を達成するための稼働計画に賛同・協力してもらわなければならなりません。

人手不足やDXの加速は全産業が直面している課題ですが、とりわけ物流企業においては、これらに伴い輸配送、拠点、倉庫作業の転換が2025年に本格化していくとの見方もあります。時代背景や人々の生活習慣が変わるにつれ、産業全般もサービスの形を変化させています。各企業と共にSCMを形成する物流企業もこれらの進化を素早く受けとめ、今後の経済活動促進につなげていく責務があると考えます。

著者プロフィール

岩﨑 仁志

代表主席研究員

職歴
 外資系マーケティング企画・コンサルティングセールス


物流・運輸業界に留まらず、製造業や流通業物流部門などを対象にコンサルティングを行ってきました。国内外の物流改善や次世代経営者を育成する一方で、現場教育にも力を発揮し、マーケティング、3PL分野での教育では第一人者とのお声をいただいています。ドライバー教育、幹部育成の他、物流企業経営強化支援として、人事・労務制度改定に携わった経験から、物流経営全般についてのご相談が可能です。

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