物流よろず相談所

物流業人材不足への対応②

2025年2月5日

『物流なんでも相談所』
岩﨑仁志

 

物流業人材不足への対応①

前号に続き物流業界の人材不足への対応を考えてみたいと思います。まずは物流業界における人材不足、特に大型トラックドライバー不足による輸送力減少への対応として有効な手段の一つとしてモーダルシフトがあげられます。モーダルシフトとは、輸送の一部区間を鉄道や船舶に置き換えることです。配送ルートの一部区間をトラックではなく鉄道や船舶にすることで、ドライバー不足の解消やドライバーの長距離配送の抑止につながることが期待できます。さらに、鉄道や船舶を使った輸送は、トラックを使った輸送に比べて環境負荷が小さいことから、環境負荷の低減も期待できます。一方で、ルート変更といった小回りがきかないことから、悪天候などの際に配送が滞ることがリスクです。またJR貨物の輸送能力やフェリーなど内航船での輸送力も能力も限界に達していると考えられるので、工夫も必要です。

次に考えるべきは共同配送を取り入れることです。共同配送とは、複数の荷主企業が共同で配送を行う仕組みです。例えば、「同じショッピングモールに納品する複数メーカーの商品を同一のトラックで運ぶ」といったケースが考えられます。効率の良いルートを構築できれば、トラックの積載率を上げ、少ないトラックで効率良く荷物を運ぶことが可能です。ドライバー不足の解消やコスト削減につながるでしょう。一方で、共同配送には企業間の協力やシステム共有が不可欠です。信頼できるパートナー企業を見つけなければ、共同配送は実現できません。これから共同配送を成功さえるにはメーカー主体ではなく実物流業者ネットワークなどによって共同配送が構築されなければ効率化はできないと考えられています。

庫内や荷役作業での自動倉庫やロボットの活用も有効な対策です。従来、人の手で対応していたピッキングや倉庫内の荷物の運搬などを自動化することで、倉庫内スタッフの人手不足を解消できます。一から自動倉庫を構築するには費用と労力がかかりますが、従来の倉庫をそのまま自動化することも可能です。これまでのDPS(デジタルピッキングシステム)に加えて仕分けを効率化できるDAS(デジタルアソートシステム)が効果的に活用できるのではと考えます。

物流のDX化が叫ばれる中で、まだ活用が十分でないとされるのが物流システム。物流システムの導入は、業務の効率化や標準化につながります。物流システムとは、材料や製品の輸送、保管、梱包、流通加工といった物流業務を管理するためのシステムのこと。具体的には、倉庫内物流の管理を行う「倉庫管理システム(WMS)」や「在庫管理システム」「配送管理システム」などが挙げられます。こうしたシステムを活用し、情報共有がスムーズにできるようになれば、複数の物流工程を一元管理することが可能です。管理の手間を減らし、正確性を向上させることで、物流サービスの品質向上や人的コスト削減につながることが期待できます。加えて人材を呼び戻すための労働環境の整備も必要でしょう。物流業界が人手不足に陥りやすい原因のひとつに、労働環境が挙げられます。長時間労働や負荷の高い労働は、従業員の疲弊を招き、生産性の低下や早期離職につながりかねません。働き方改革を行い、こうした問題を積極的に改善していくことが必要です。例えば、物流DXによって業務を効率化すれば、従業員一人ひとりの負担を軽減できます。従業員が抱える課題を踏まえてシステム化を進め、労働環境の改善を図ってください。また労働者不足には時間で派遣可能なサービスを展開する企業も出ています。採用対象を拡大すれば、それだけ人材を確保しやすくなります。例えば、「体力が必要だから、力のありそうな人を採用したい」と最初から決め付けてしまうと、採用対象が狭くなり、人材不足なのに採用が進まないといったことになりかねません。システム化によって、力がなくても働くことができる環境を整えたり、分業化を進めて適材適所でさまざまな人が活躍できる仕事を作ったりするなど、企業努力が求められます。人材派遣や人材紹介サービスなどを利用して、効率良く採用活動を進めるのも効果的です。

3PLなどアウトソーシング企業の活用も一つの手段ではないかと考えます。物流企業だから3PL業者には頼めないとする会社が多いようですが、コラボワークを含めて検討すべきと思います。物流専門企業に物流工程をアウトソーシングすることで、物流の効率化が可能です。物流専門企業は、物流についてのさまざまなノウハウを持っているため、人材不足の解消だけでなく物流品質の向上も見込めるでしょう。物流全般を一括でアウトソーシングしたり、希望する一部の業務のみを委託したりすることも可能です。

最後になりますが、荷主・着荷主はもちろん、消費者の理解度を高めて費用の適正化が欠かせません。物流の人手不足やそれに起因して起こる各種の問題は、人々の生活や荷主企業のビジネスに直結するものです。荷主企業や消費者に対しても理解を促し、効率化につながる施策をとれるよう交渉することが大切です。

例えば、リードタイムの適正化や料金の改定には、荷主や消費者の理解が欠かせません。また、荷主企業に対して、荷待ち時間削減のための情報共有や輸送パレットの導入、入荷を効率化するためのシステム導入といった協力を促すことで、物流の効率化とそれによる人手不足を解消することが可能です。国土交通省、経済産業省、農林水産省が共に取り組んでいる「ホワイト物流」推進運動でも、荷主企業の協力を呼び掛けています。これからも粘り強く交渉を重ねて理解を求めるとともに、効率的な物流構築を進めていきたいものですね。

著者プロフィール

岩﨑 仁志

代表主席研究員

職歴
 外資系マーケティング企画・コンサルティングセールス


物流・運輸業界に留まらず、製造業や流通業物流部門などを対象にコンサルティングを行ってきました。国内外の物流改善や次世代経営者を育成する一方で、現場教育にも力を発揮し、マーケティング、3PL分野での教育では第一人者とのお声をいただいています。ドライバー教育、幹部育成の他、物流企業経営強化支援として、人事・労務制度改定に携わった経験から、物流経営全般についてのご相談が可能です。

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