物流よろず相談所

新年を迎えて

2025年1月8日

『物流なんでも相談所』
岩﨑仁志


2025年新年明けましておめでとうございます。人材不足に加えて多くの課題を抱える物流業において、今年も大きな変化が必要となってきます。2025年春からの改正物流法によって物流事業者を取り巻く環境にも変化が訪れそうです。

物流は国民生活・経済を支える重要な社会インフラであるにも関わらず、業界を支える人材は年々減少し続けてきました。一方で時代の流れと共に物流業務も進化を繰り返し、AIを上手く活用できれば少ない人手を補えるところまでレベルも上がってきています。また物流産業を魅力あるものにして若い人を呼び込むため働き方改革関連法も本年4月から施行されました。トラックドライバーにも年間残業時間規制が適用されるなど現場の混乱も予想されましたが、実際には幹線輸送において大型車両が不足するなど、これまでのところ問題は限定的に留まっているようです。ただ年明けから年度末にかけ、様々な年間の集計が出るあたりで、新たな問題に直面する恐れもあり、引き続き見守りが必要です。また2015年以降急増してきた軽貨物輸送事業者も2024年問題のあおりを受け、さらに増加傾向にありますが、同時に軽トラック運送業における死亡・重傷事故件数が最近6年で倍増しており、安全対策の強化も求められるところです。こうした中、流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律及び貨物自動車運送事業法の一部を改正する法律(令和6年法律第23号)が第213回通常国会で成立、令和6年5月15日に公布され、2025年から施行されます。政府は次の2法改正による対策を政府は講じることにより、物流の持続的成長を図っていこうとしています。

まず流通業務総合効率化法(法律の名称が「流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律」から「物資の流通の効率化に関する法律」に変更)によって荷主・物流事業者への規制が行われます。①荷主・物流事業者に対し、物流効率化のために取り組むべき措置について努力義務を課し、当該措置について国が判断基準を策定。②上記取組状況について、国が判断基準に基づき指導・助言、調査・公表を実施。③上記事業者のうち、一定規模以上のものを特定事業者として指定し、中長期計画の作成や定期報告等を義務付け、中長期計画に基づく取組の実施状況が不十分の場合、勧告・命令を実施。さらに、特定事業者のうち荷主には物流統括管理者の選任を義務付けることになっています。

次に貨物自動車運送事業法の改正によって、トラック事業者の取引に関して新たな規制が始まります。まず元請事業者に対し、実運送事業者の名称等を記載した実運送体制管理簿の作成が義務付けられました。荷主・トラック事業者・利用運送事業者に対し、運送契約の締結等に際して、提供する役務の内容やその対価(附帯業務料、燃料サーチャージ等を含む)等について記載した書面による交付等も義務付けられます。またトラック事業者・利用運送事業者に対し、他の事業者の運送の利用(=下請けに出す行為)の適正化について努力義務を課すとともに、一定規模以上の事業者に対し、当該適正化に関する管理規程の作成、責任者の選任が義務付けられます。同法の改正によって軽トラック事業者に関する規制も始まります。軽トラック事業者に対し、①必要な法令等の知識を担保するための管理者選任と講習受講と②国土交通大臣への事故報告が義務付けられました。加えて国交省による公表対象に、軽トラック事業者に係る事故報告・安全確保命令に関する情報等が追加されました。

国交省では改正物流法は、トラックドライバーの賃上げ原資の確保や物流の生産性向上を強く推し後押しするめるためのものとしており、荷待ち・荷役時間の削減や多重下請構造の是正等を進めるためにも、荷主・物流事業者に対する規制的措置を導入する、としています。このうち、改正物流効率化法の施行に向けては、今後政省令等に定める基本方針や判断基準、特定事業者の指定基準等の具体的な内容などを検討するため、国土交通省・経済産業省・農林水産省の三省の審議会の合同会議を立ち上げ、令和6年秋に取りまとめたものを、来春施行するとしています。

流通業務総合効率化法にもとづく荷主・物流事業者に対する規制的措置は、荷主・物流事業者間の商慣⾏を⾒直し、荷待ち・荷役時間の削減や積載率の向上を図ることを目指しています。具体的には、2028年度までに、以下の目標の達成を目指します。①現行より5割の運行で、1運行あたりの荷待ち・荷役等時間を計2時間以内に削減(1人あたり年間125時間の短縮)する、②5割の車両で、積載効率50%を実現(全体の車両で積載効率44%に増加)する、を目標としています。

国民の3人に1人が65歳以上、5人に1人が75歳以上になるとされる2025年。業界の人手不足にもさらに拍車がかかると見込まれています。物流業務のDX化を少しずつでも推進していくことが2024年、2025年問題の解決につながっていくことは確かでしょう。時代の背景に合わせ物流が変化していくことは当然の現象。自社の未来にとってより良い“変化の選択肢”はどれなのか、2025年を目前に控えた今、じっくりと向き合い考えておきたいものです。

著者プロフィール

岩﨑 仁志

代表主席研究員

職歴
 外資系マーケティング企画・コンサルティングセールス


物流・運輸業界に留まらず、製造業や流通業物流部門などを対象にコンサルティングを行ってきました。国内外の物流改善や次世代経営者を育成する一方で、現場教育にも力を発揮し、マーケティング、3PL分野での教育では第一人者とのお声をいただいています。ドライバー教育、幹部育成の他、物流企業経営強化支援として、人事・労務制度改定に携わった経験から、物流経営全般についてのご相談が可能です。

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