年の瀬にあたり
2024年12月25日
『物流なんでも相談所』
岩﨑仁志
人口減少に伴うリアル店舗の減少や高齢者増加などの環境変化に伴い、ネットスーパー等も含めた宅配事業の必要性はさらに高まってきます。特にスマ-トフォンの普及でネット通販は再び拡大してきており、こうした社会インフラのニーズに応えるためにも、最終配達サービスとしてのラストワンマイルが重要性を帯びてきています。目まぐるしい環境変化の中で企業はいかにして勝ち続けていくか、物流企業としての経営戦略を、物流品質を見直す、という観点から考えてみたいと思います。
経営環境が混乱し、方針を定めづらい時にも、やはり物流業の重要性を原点に帰って見つめ直すことが大切です。物流企業としての自社を、外部の目線からもう一度分析・評価してみましょう。顧客からの信頼度や新たな提案、サービスの提供など、多方面から確かめたいものです。この様な時に使えるひとつの目安があります。まず、自社の荷主ごとの売り上げを見て、その売上が増えているかどうか。次にその荷主の物流費用の中での自社割合が25%に達しているかどうか。そして、荷主から指名されるドライバーが増えているかどうか、感謝のことばなどがあるか、などです。また物流品質を上げるには、社員の満足(ES)が十分であるかどうかも、重要なポイントです。仕事に対するモチベーションが高い社員が多いところは、サービスレベルが高く、顧客の定着率も高いという事実があります。社員の満足なくして、顧客の満足はあり得ません。社員が前向きになると、現場での改善が進みます。改善を行う中で、コミュニケーションも活発化してきます。この様な企業は、企業風土自体が明るく、現場からトップまでの意思疎通もスムーズです。現場での問題が、レベルごとに精査され、そして引き揚げられていきます。経営者にまで達した意見具申は、経営に役立つものとなり、現場での改善によって積み上げられたノウハウは他社との差別化を可能にします。物流企業において、サービス品質を向上させるには、何よりもその原点となる人材のレベルを引き上げることが重要です。その中には、今すぐにでも始められる簡単なことがいくつもあります。あいさつをきちんとすることで、明るい職場作りができるはずです。
人手不足が恒常化する中、大手物流企業を中心に現場業務の自動化に向けた大規模な投資が加速しています。働き方改革やホワイト物流の実践にとって、作業のデジタル化が非常に有効な手段であることは、誰もが納得するところではありますが、作業効率を上げるためには必ずロボットを使わなければいけない、というのはもちろん間違いです。物流現場において最も大切なことは、そこに働く人々のやる気をどんどん引き出し、その結果を評価しながら、改善を進めていくことです。同じ職場に集まった人達同志が、楽しく、時には良い意味でのライバル心を持ちながら、成長していけるよう、働く環境を整えて行く事も幹部の皆様の重要な役目です。ある医療機器メーカのセンター長は、各スタッフの人事生産性や誤出荷率などを表した棒グラフを、実名なしで休憩室の壁に展示し続けているとか(A.B.C.…のスペルで表し各自のみに伝える)。何も言わず同じように現場で起こった全ての事を、その経過から結果までひたすら全パートタイマーにまで開示し、情報の“見せる化”を徹底していると言います。ただそれだけのことで、スタッフ達の間に“私達の職場”という意識が確実に生まれ、少しでも生産性を上げようと自発的な改善活動が進んでいる、とも。ここでひとつ大切なのは、各自の努力を必ず評価し、それを承認してあげる、ということです。これらの取組みはロボットにはもちろん必要のないことです。しかし、高額な資金を投入しなくても、今からでもすぐ始められる人事教育であり、人手不足対策でもあります。
2025年のスタートまで、もうすでに秒読み段階に入りました。皆様がまず舵を切られるのは“人”か“デジタル”か…、各企業の状況に応じ、ご判断は分かれていくことと存じます。いずれにせよ今願うのは、安全で事故なき1年の締めくくり。どうか皆様くれぐれも御自愛の上、輝かしい新年をお迎えになりますよう。こころからお祈り申し上げます。最後になりましたが、本年も何かとお世話になり誠にありがとうございました。新しい年もまた何卒ご指導の程、よろしくお願い申し上げます。