KPI導入促進
2024年6月5日
物流よろず相談所
2024年問題は深刻化し続け、これまで物流会社に対して運賃削減を要求し、コスト削減を図ってきた物流コストはドライバー不足の顕著化で、輸送能力が低下し、安い運賃だと運ぶトラック業者が見つからない状況に陥っています。メーカ各社はこれまでとは違い、物流の効率化を図る必然性に迫られていると言える。その動きにどう対応するかで、トラック事業者の勝ち残りも決まると言えるのではないだでしょうか。
そのための手段として必要なのがKPIの導入、時間管理の徹底と言えるでしょう。人材不足等による経費高騰は慢性化―、コストがかさむことで収益確保が困難に…、現代物流企業の姿として当たり前となってきたこの状況に、今年こそメスを入れたいというのが多くの経営者の本音だと思います。限られた収益を最大限に有効化していくために取るべき初めの手段はやはり各分野の効率化であるはずです。まず頭に浮かぶのはKPIの活用(見直し)です。そもそもKPI(重要業績評価指標)は企業目標等の実現を目的とし、業務プロセス等のモニタリングに用いる指標です。「コスト」「生産性」や「品質」といった、業務を進める上で用いる様々な定量的データ(指標や指標を用いる管理手法)を指します。例えば、トラック会社では「実車率」「積載率」といった指標を定期的にチェックしている場合もありますが、これは運行効率の管理にKPIを活用した例であると言えます。
物流事業者にとって身近な例を挙げると、KPIはクルマのメーター類のようなもの。企業経営者や管理者は、会社という乗り物を運転する「ドライバー」に例えることができます。ドライバーは、スピードやエンジンの状態等をメーターで確認しながら運転しますが、経営者・管理者にとってのメーターが「KPI」という訳です。スピードメーターを見ずに運転することが危険であるように、会社の状態を随時確認することなく経営の意思決定を行うことは、望ましいことではありません。KPIを用いるメリットは、①問題を可視化できる、②コミュニケーションが促進される、③合理的で公平な評価につながるなどが考えられます。問題の可視化については、各物流現場やその中の業務プロセスがスムーズに流れているかどうかを判断することは、やはり基準がなければ容易ではない。実際に働いている当事者はともかく、管理者がすべての現場を常にチェックすることは現実的ではなく、さらに拠点の数が増え、業務プロセスが複雑化していけば、より実態の把握も困難になってきます。そこでKPIにより主要な業務プロセスを定量的に測定する必要が生じてくるのです。KPIを活用することで業務プロセスの良い点・悪い点を可視化することが可能となります。一般に目に見える問題点に対しては「改善が必要?」という考えが自然と働くるので、課題の可視化は、改善を進めるための重要なポイントでもあると言えそうです。
次にコミュニケーションの促進。製造等と異なり、物流はモノの移動を伴う面的な広がりを有した業務です。単純に見える業務であっても、複数の拠点や、社員・パート等立場の異なる担当者が関与することが少なくはありません。また、委託元・発荷主、着荷主、委託先の倉庫会社・運送会社・作業会社等他社とのやりとりも多く発生します。業務改善を進めるには、このような多様な関係者と現状認識を共有する必要がありますが、その際にKPIは威力を発揮します。「客観的なデータ」を超えるコミュニケーションツールはないので、KPIを関係者で共有することができれば、合理的・効率的に改善を進めることが可能となります。また“合理的で公平な評価につながること”の重要なポイントは、「努力した人(組織)が評価される仕組みを作ること」もできます。実際にKPIのために改善を進めることは各現場の担当者や作業者ですから、改善に汗をかいた担当者・作業者がきちんと評価され・報いられなければ、メンタル面での成功には不十分であるかも知れません。経営者あるいは評価を行う管理者が、すべての現場に目を配ることは不可能です。客観的なKPIがないと、主観的な評価に頼るのみの危険なアナログ作業となってしまうかも知れません。
荷主から物流事業者に対する評価でも同様の意見が聞かれています。例えば、コストだけ・運賃だけで荷主が物流事業者を評価し、選定してしまうと、物流事業者の持つ信頼性、業務プロセスの改善能力や安全・品質といった質的側面を無視してしまうことになる、という問題点がこのところ浮きぼりになってきています。これでは事故やトラブルの増加といった直接的な損害を発生させることに加え、物流改善の停滞を招く等、荷主の長期的利益損失につながる恐れも出てくるからです。“物流全般”にたずさわる物流企業であるからこそ合理的・公平な評価を生む定量的KPIの活用が必要であり、これを用いた適切な評価システム構築は改善推進の大きなインセンティブとなるとも言えるでしょう。