労働災害防止対策~テールゲートリフター教育を踏まえて
2024年4月3日
物流よろず相談所
陸上災害防止協会(陸災防)はこの度、2023年度の労災発生状況を発表しました。物流業は労働災害が製造業、建設業に続いて多く、死亡災害では全体の14.6%と高い割合を占めています。具体的な数値と内容を見てみてみると、2023年、陸上貨物運送事業における災害事故による死亡者は104名(前年比25.3%増)と大幅に増加しましたが、死傷者は15,747人(同1.5%減)と減少。かつて200名を超える死亡災害を起こした陸上貨物運送事業ですが、近年は減少傾向でした。しかしながら労災における高い割合をしめていることから災害防止対策の重要性が叫ばれています。依然として交通労働災害による死亡者数が約6割から7割を占める状況にあること等から、今後の死亡者数の減少傾向をより確実なものとしていく取組が必要である、としています。
2024年2月からテールゲートリフター教育を始めとする義務化が始まりました。安全配慮できる中堅企業以上では教育が実施されていますが、まだ特別教育が完全実施はされていないようです。テールゲートリフターを利用するメリットは、主に4つが挙げられています。①荷役作業時間の削減:テールゲートリフターは、使用方法をしっかりと守れば、人間の力では持ち辛い重い荷物も荷台に簡単かつ確実に昇降させることができ、荷物の積み卸し作業がスムーズに進み、業務の効率化や生産性の向上につながります。②荷役作業における身体への負担の軽減;テールゲートリフターを利用することで、荷物を取り扱う際の人力作業が大幅に削減され、従来の手動の荷物積み卸し作業に比べ、身体への負担が大きく軽減されます。近年多くの労働者が悩まされている腰痛の防止対策にもつながるほか、荷役に伴う作業員の安全を確保することも可能です。重い荷物を人力で運ぶことは、けがのリスクを高めますが、テールゲートリフターを使用することで、作業者は負担の大きな作業から解放され、より安全な作業環境が提供されることになります。③作業品質の維持と荷物の保護;荷物を適切に固定し、テールゲートリフターによって荷役作業を行うことで、荷物の落下などによる損傷を防ぐことも可能。荷役作業の品質が維持されます。④生産性の向上;初期投資は必要ですが、テールゲートリフターの導入は中長期的には多方面におけるコスト削減につながります。作業の効率化と労働者の身体的負担の軽減により、荷役作業に関わる全体のコストは確実に減少し、生産性の向上が見込める、など。しかしながらこの便利なテールゲートリフターによる事故が多発していることから防止対策が義務化されることになりました。
トラックに荷物を積んだり降ろしたりする荷役作業では、作業員が地上と荷台の上を上下するので、その度に位置エネルギーが発生しますが、誤って墜落、転落した時にはとても大きな危険エネルギーに変換され、大怪我もしくは死亡する可能性もあります。陸上貨物運送事業における労働災害は増加傾向にあり、最も多いのが荷役作業時の墜落、転落事故です。大怪我をした人、亡くなられた方の半分以上がヘルメット未着用であったという事実からもヘルメットの着用は必須です。死亡災害は、ヘルメット未着用の事故では最大積載量5トン以上のトラックで約5割、最大積載量2トン以上5トン未満のトラックでは約4割発生しており、ヘルメットを適切に着用していれば死亡に至らなかったケースも多いのです。墜落、転落事故が多いのは、平ボディやウイング車など側面が開放できる構造のものや、荷役作業時に使用するテールゲートリフターに関連するもので、テールゲートリフターの労働災害の半数以上は、その不適切な取り扱いによるものとなっています。テールゲートリフターに荷物と作業員が一緒に乗って走行していて、荷物が移動した時や転倒した時に発生することが多いようです。KYT訓練を強化して、事故防止に努めたいものですね。