年の瀬に向かう物流業
2023年12月5日
物流よろず相談所
年明けと共に近づく「時間外労働時間の上限規制」問題。しかしその前に2023年4月以降、中小企業に猶予されていた「時間外労働割増賃金率の引上げ」が物流業界にも導入さました。ご存知の通り、この変更で月間60時間を超える時間外労働の割増賃金率が、現行の25%から50%へと引上げられることになりました。原材料費や燃料費の高騰に加え、人件費のさらなる値上がりが経営の維持に与える影響はやはり大きいものと言えるでしょう。
これまで多くの国内企業は外部環境や度重なる法改正などに伴う変化に対し、知恵や工夫、努力をもってこれを乗り越えてきました。しかし、人手不足に加え、コロナ対応やウクライナ問題など日を追うごとに課題が増えていく現代においては既存の努力のみでは解決できないものも多く残りそうです。2024年、それぞれの課題をどのように解決していくか、各社すでに取組みを始めておられる事と存じますが、ポイントはやはりある程度のデジタル活用で少ないマンパワーを補っていくことにあると言えそうです。新たな投資は必要かも知れませんが、従業員の労働時間を短縮することにつながれば、結果として人件費は削減出来ますし、「社員の働き方改革」という目的のためにも最適な方法であるはずです。
ドローンや自動運転の車両が町を行き交い、ロボットが荷物をエンドユーザーまで届ける社会の実現は、残念ながらまだ少し先の話。現代を生きる物流業者として、人が働く環境を整え、その人々と共に経営を持続して行ける方法を、模索していくことに致しましょう。
今年も年末年始の繁忙期に突入した物流業界。この時期、毎日徹底しておきたいのが、事故防止の体制です。事故と言えば、交通事故だけに限らす商品事故や労災なども気になるところですが、今回は公道上における交通事故を中心に考えてみたいと思います。物流業における事故件数は10年前に比べ3分の2程までに減少していますが、依然として高い割合で死傷事故が起きています。その原因は、安全のための“絶対ルール”がいつの間にか、守られなくなっていくということに他なりません。何より法令でも定められている点呼の徹底が十分でないことにも事故の要因が潜んでいるはずです。事故を起こしやすい業者においては、この点呼を重く見ていなかったケースが非常に多いのも事実です。事故を起こした事業者に対し運輸局が罰則を施行する際には、運転者に対する指導監督違反・点呼の不徹底が必ずと言っていいほど、その要因として記載されています。まず基本として点呼の完全実施ができているか、その点呼の内容と対処がどうなっているか、見直してみましょう。
次に車両の点検です。今の車両はコンピュータ制御で確かに簡単に修理できるという白物ではありませんが、それでもタイヤの空気圧や傷、オイルの量、各ランプ、ブレーキ、ファンベルトなど運転前の車両チェックを怠ると、大きな事故につながることも考えられます。この運転前車両点検が実施されていなかったのでしょうか、運行後の不具合や故障で動けなくなっているトラックを時折見かけることがあります。こうなってからでは公道を通る車両に迷惑をかけるばかりか、輸送先が延着により被る被害も発生します。少しの油断がその何倍もの損失を生むことを全社で再確認しておきたいものです。運転前車両点検などの基本が徹底された上で、安全会議の定期的な実施やヒヤリハットマップを作成し、注意を促すことも重要です。この安全会議は何も型苦しいものではなく、ヒヤリハットマップなどを全員で作成し、事故を予防していこうという目的で行なって良いものにしていきましょう。プロのドライバーが主体となって、自分達と会社の安全を守り抜くことで、顧客や社会全体に安全と安心を提供することになる、という意識を現場全体に浸透させていきましょう。