団体交渉について
2023年9月13日
労務管理ヴィッセンシャフト vol.15
最近のニュースですが、大型デパート等でストライキが決行されたことで話題となっております。日本でストは最近話題になっておりませんので、若い方々は馴染みがないかもしれませんが、昔はよく国鉄の労働組合がストを行っておりました。
ストライキというのは、労働者が労働条件の改善、維持などの要求を貫徹するため、集団的に労務の提供を拒否することです。ストライキは労働基本法の一つである「団体交渉権」の一環として、労働者に補償された権利です。団体交渉というのは、労働組合など従業員による団体が、会社との間で、従業員の労働条件について話し合いを行うことです。昨今は労働組合の組織率も低下しており、勤めている会社に組合がないケースもありますが、業種、会社の枠にとらわれないユニオンなどに加入する人も増えております。
企業内の組合は労使協調路線の傾向が強いため、昔ほど激しい団体交渉が行われることは少なくなりましたが、ユニオンから団体交渉を申し入れられたことのある会社は多いのではないでしょうか?
当事務所でもたまにユニオン関係のご相談を頂くこともあります。団体交渉を申し込まれたのだが、どうしたらよいか?拒否することは?等、様々です。
ユニオンがらみの件で多いのは、賃金や残業代未払いなどのお話が多いです。仮にユニオンの団体交渉を受けた場合、どういうことになるのでしょうか?仮に争点が未払い残業である場合、ユニオンから未払い残業代の計算や事実関係の確認を目的として、タイムカードや就業規則等の提出を求められることとなります。この場合、会社は団体交渉を受けるためにも、労働組合の主張及び要求に対する回答を行うために、求められた資料を提示する等を行い、誠実に交渉を行う義務を負うこととなります。逆にもしこれら提出を拒否するのであれば、その合理的理由を示す必要があります。
ではもし仮にタイムカードに基づく残業代の適切な計算が行われていなかった場合、どうなるのでしょうか?残業代(労基法でいう割増賃金)が適切に支払われていないということは、労基法違反になるため、過去に遡って支払う旨労働協約が締結されることになります。労働協約というのは、労働組合を通じた交渉によって妥結された内容を書面化したものとなります。労働協約は就業規則より拘束力が強く、内容について将来について履行する義務を負うことになります。
団体交渉は拒否できる?不当労働行為について
結論から申しますと、労働組合やユニオンから団体交渉を申し込まれた場合、会社はそれを拒否することはできません。労働組合法第7条2項では、「使用者が雇用する労働者の代表社と団体交渉することを正当な理由がなく拒んではならない」とされており、これら行為は不当労働行為に該当します。
不当労働行為とは、労働者の団結権を使用者が阻害する行為を指します。簡単に申しますと、労働組合の活動を妨害することです。その他の行為として該当することは、組合に加入したことをもって不利益取り扱いを行うことや、労働組合の結成や運営への介入、経費援助、黄犬契約などが該当します。黄犬契約というのは、労働者を雇用する際に、組合に加入しないことを条件とする、又は脱退を条件とする等の行為です。「黄犬契約」って聞きなれない言葉だと思いますが、アメリカでyellow-dog=卑怯な奴、という意味があるとのことです(wikipediaより)
団体交渉に話を戻しますが、もし仮に団体交渉を拒否した場合、労働組合や労働者は、使用者による不当労働行為を受けたとして、労働委員会に対して救済申し立てをすることができます。労働委員会とは、労働者が団結することを擁護し、労働関係の校正な調整を図ることを目的として国または都道府県に設置された組織です。労働委員会は救済申し立てを受けた場合、申し立てに基づいて審査を行い、不当労働行為の事実が認められる場合には、使用者に対して、救済命令を出すことができます。救済命令というのは、不当労働行為を解消することを目的とするものです。
いずれにせよ、労働委員会の案件となりますと、密室の話し合いでは済まなくなるため、会社には適正な対応が求められることになます。