物流よろず相談所

事故による物流企業強化

2023年9月6日

物流よろず相談所 

 

コロナウィルス禍がようやく落ち着きを見せ、日常が戻りつつある今日、間近に控える2024年問題、経済や社会情勢の不安定が物流に大きな影響を与え、事業拡大が難しい今日。この様な時代には“出て行くものを抑える”ことが重要となります。物流業において例をあげるなら、それは事故による様々な損失に他なりません。年末の繁忙期を迎えるこの時期、もう一度社内管理体制を見直し、事故撲滅に向けて取り組みを強化しておくべきでしょう。

厳しい競争の中、出来る限りムダを排除していかねば勝ち残れないことは、経営者なら誰もが知るところです。ただ、そのムダの最たるものが事故による損失であることに、気付いている事業者は意外と少ないもの。まずはこの現実をしっかり受け止め、事故をなくすことがもたらす利益を改めて認識しつつ、従業員共々ひとつになって安全に向けた有効な取組みにつなげていくことが必要です。意識することで誰でも事故ゼロを実現できる対策を、改めて考えてみることに致しましょう。

事故を起こした多くの企業が、事故対策費用を年間数百万単位で使っていることは、以前にもお話させていただきました。“安全で事故のない企業”、は皆様の願いであるはずですが、 残念なことに“安全は偶然の産物”ではありません。それは、会社とドライバーやスタッフの、たゆまぬ努力のたまものであることに他ならないのです。事故は未然に防ぐことが肝心なのですが、日頃から防災組織と活動がきちんとできている事に加えて、ヒヤリハットマップの作成、小集団活動、その集大成としての安全大会など地道な活動が徹底されていることが重要だと考えられます。習慣として事故防止の努力を積み重ねることで、少しずつ強い組織もできあがっていくでしょう。ヒヤリハットの徹底に加え、事故予防策としてKYT(危険予知活動)を行うなどして、予防策が習慣化されているかどうかも極めて重要です。安全が大事であることは、物流業に携わるものであれば誰もが理解はできているはずです。しかし、その安全を生み出すために何をしていけば良いのか、具体的に身についていないというところが盲点となるのです。これまで事故は起こしていないから、これからも大丈夫だろう、と多くのドライバーは高をくくってしまいがちですが、これもやはり偶然が生み出していることであり、事故を防ぐには、危険を意識して遠ざけることが大事なのです。

まず安全5原則(安全な速度、安全な車間距離を保つ、カーブで減速、一時停止・徐行の履行、交差点注視)の徹底に注目してみましょう。街を走るトラックの中には、その意識が全くないとしか思えないようなドライバーが多く存在していることも事実です。安全5原則など基本の徹底は公道を仕事場としている運送会社には、死守してもらわねばならないものです。この基礎がしっかりしていないと物流業として経営を続けていく資格はありません。安全という基盤強化からまず徹底的に取組みを始めていただきたいと願います。

不幸にも事故を起こした時、どのような対応を取るかも、重要なこと。事故が起こった時の会社側の対応は様々です。軽微な事故でも必ず報告するようドライバーに義務付けする会社が多いようですが、事故を起こしたドライバーに弁済する仕組みを取り入れるだけで事故が減るという考え方は必ずしも正しくありません。賞罰委員会を設けたり、ドライバーに弁済責任を負わせて全てが終わったとするなど、少し根本的な解決からずれている対処の仕方もまだ見受けられるようです。一体なぜ事故は起きたのか、ドライバーや周囲の日常業務に問題はなかったのか、まずそこで改めて検証してみる必要があるはずです。明日からも始まる日常業務の中で、2度と同じような事故が起こらぬよう他の社員共々その事故に向き合って出来る限り前向きな再スタートを切りたいものです。

著者プロフィール

岩﨑 仁志

代表主席研究員

職歴
 外資系マーケティング企画・コンサルティングセールス


物流・運輸業界に留まらず、製造業や流通業物流部門などを対象にコンサルティングを行ってきました。国内外の物流改善や次世代経営者を育成する一方で、現場教育にも力を発揮し、マーケティング、3PL分野での教育では第一人者とのお声をいただいています。ドライバー教育、幹部育成の他、物流企業経営強化支援として、人事・労務制度改定に携わった経験から、物流経営全般についてのご相談が可能です。

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