トラックGメン発足!物流改革に向けた政策パッケージは物流を変えるか?
2023年7月12日
労務管理ヴィッセンシャフト vol.13
①2024年問題に直面!物流改革に向けた政策パッケージの策定
運送事業者様におかれましては、2024年問題に向けて荷主交渉など、様々な準備に苦慮されていると思われます。ドライバー職への時間外労働の上限規制適用や改正改善基準告示により、ドライバーは従来のような働き方が困難となり、労働集約型産業である運送業においては、それらが営業利益の減少などにも繋がりかねない困難を導くことが想定されます。
そのような中、政府は6月2日に「物流革新に向けた政策パッケージ」策定を公表いたしました。これは「我が国の物流の革新に関する関係閣僚会議」で審議された内容です。この政策パッケージは主として2024年問題を大きく意識しており、我が国の物流の輸送力を維持するためのものとなっております。
施策は大きく分けて3つのポイントとなっております。
- 一つは商慣行の見直しです。荷主と物流事業者間における負担の軽減、及び納品期限における3分の1ルール、物流コスト込み取引価格等の見直し、多重構造の是正などが挙げられております。またトラックの「標準的な運賃」制度の拡充や徹底などです。
- 二つ目には物流の効率化の推進です。物流GX(モーダルシフト、脱炭素化等)やDXの推進、物流標準化等が挙げられます。高速道路の速度規制(80km/h)や特殊車両通行制度に関する規制緩和等も挙げられております。
- 三つ目は荷主、消費者の行動変容を促す取組です。その一つとして挙げられるのは、荷主の経営者層の意識改革や行動変容を促す規制的措置等の導入です。具体的なことはまだ述べられておりませんが、荷主の経営層からの物流管理者の選任が義務化するのではないか、といわれております。また、消費者の意識改革や行動変容を促す取組も述べられております。B TO Cの物流が多い昨今、われわれ個人の消費者もある意味「荷主側」にあたる訳ですが、Eコマースのショッピング等で「送料は無料が当たり前!」という人もおり、これら意識改革が求められます。「運送コストはタダではない!」と極めて当たり前のことの啓蒙ですが、かかる認識の改革を求める施策に国が積極的に取り組みというのは、具体的にどのようなことが行われるか注目したいところです。
②トラックGメン発足は実運送と荷主の関係を変えることができるか?
2024年問題にとって欠かせない柱はドライバーの働き方改革にあると共に、適正な運賃を交渉することができるかにあるといえます。従来から政府は荷主勧告制度などにより、実運送会社の違法行為につながるような圧力をかけていないか、取り締まる制度を実施してきました。しかしながらそれらは中々改善に結びつくこともなく、より踏み込んだ規制が必要でした。そのような中、今般の施策の一つとして挙げられているのがトラックGメン(仮称)の発足です。
トラックGメンの役割としては、荷主・元受けの監視の強化、結果の発表、継続的なフォロー及びそのための制度強化とされております。(物流革新に向けた政策パッケージ」のポイント(案)より)。具体的には物流の担い手の賃金水準向上を図るための適切運賃授受・荷待ち時間や付帯業務等の価格転嫁が円滑に行われているか、力関係によって握りつぶされていないか等を監視することになるといわれております。
その他物流改革の施策においては、物流の適正化・生産性向上に向けた荷主事業者・物流事業者の取組に向けたガイドラインが公表されております。(経済産業省・農林水産省・国土交通省の連名)これらはまた次の機会で、触れてゆきたいと思います。
◆内閣官房(我が国の物流の革新に関する関係閣僚会議)
開催日:令和5年6月2日(第2回)
配布資料:「物流革新に向けた政策パッケージ」のポイント(案)
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/buturyu_kakushin/dai2/siryou.pdf