物流クレームを改善へ
2023年2月1日
物流なんでも相談所 Vol.57
物流クレームが何故発生するのか、その要因と対策について考えてみましょう。クレームの中に、社内におけるミスコミュニケーションが原因であることも少なくはありません。このミスコミュニケーションはどうして起こるのだろうか?報告・連絡・相談の徹底がなされていないことが一番の要因であると考えられます。多くの場合は、各部署や個人の役割が明確にされていないことや、偏った情報しか持たされていないことも、報告が上下や横に伝わらないことにつながっていることも多いのでないでしょうか。ミスコミュニケーションは役割と責任が果たされていないことによるものと言わざると得ないのです。
共通の目標と業務プロセスを持つことが望ましく、必要となるのが、共通のガイドラインであるKPI。客観的な評価基準となるKPIを活用することで問題が可視化できること、KPIを通じ共通目標を活用することでコミュニケーションが促進されることなど効果があるとされています。KPIを共通認識することはミスコミュニケーションを防ぐ上でも効果が期待できます。物流業者が厳しい経営環境にある中で、物流が円滑に機能するには、物流事業者が安定的に業務に取り組み、経営改善・経営高度化への取り組みが必要となるのは間違いありません。そのためには、物流事業者が自社の経営上の課題を明確化、課題の改善に取り組まねばなりません。その改善活動の是非を判断、推進するには定量的な評価尺度のKPI活用が必須となってきます。自社に市1人時のコストがあきらかであれば、それ以上の生産性が必要となってきます。KPIに基づくことによって、企業間競争の激化による過剰な人件費の切り詰め等業務の効率化ではない部分での競争を解消し、荷主に対して自らの業務の生産性や最適性の程度を定量的に説明でき、健全な効率化を通じた業務改善を行うことが可能となるはずです。改善の成果を定期的にモニタリングしながらPDCAサイクルを回すことにより、持続的に改善活動に取り組み、経営状態を維持・改善することが可能となってきます。
KPIを利用する上で重要なことは「目的を明確化すること」、KPI自体は管理の手段(ツール)でしかなく、KPIの体系は目的に応じて変化します。KPI導入の際も、利用目的を確認することが最初のステップとなります。物流事業者が単独で物流改善等に取り組むケースでは、物流は生活物資を供給する等の重要な役割を担っているため、KPIを用いた改善活動を通じて物流サービスを安定的に提供できる体制を構築すること自体が、物流事業者の社会的責任となってきます。KPIを荷主等と連携するために利用することもできるでしょう。高度な物流改善に取り組むには、荷主と物流事業者が連携して取り組むことが必要ですが、その際、両者を繋ぐコミュニケーションツールとしてKPIの利用が可能です。荷主が物流事業者に品質や生産性等のKPIを定期報告させ、改善に取り組むようなケースも考えられます。品質向上へのステップはここから始まります。多くのクレームはこのKPIが明確でないため起こることも少なくないでしょう。ミス出荷率や配送時間の順守率など事前に定まっていればその範囲で業務改善に取り組みを行なうことが肝心です。物流業においてクレームゼロはあり得ないでしょう。クレーム対応から導き出された対策がマニュアル化され、徹底されることで品質向上と誰にでもわかり得る標準化が可能となってきます。標準化は共通のKPIを持つことにつながり、更にレベルアップへと進化が期待できるというもの。
自社にはクレームはないはずと考えるのは正しくないのではないでしょうか。伝わってこない無言のクレームが必ずあるはずです。クレームの多くは、お客様の視点での物流サービスが実施されていなかったり、物事をとらえていなかったために起こる問題でしょう。要望を先取りして実行することで、クレーム件数は減らすことが可能となります。前回説明したように宅急便や引っ越し業者など直接顧客と触れ合うサービスでは、クレーム処理がことさら重要になってきますが、顧客サービス業と位置づけられる現在の物流業では、クレーム対応が会社の存亡にかかわることになってくるでしょう。顧客ニーズの調査を行なうにはベンチマークやアンケート調査、ヒヤリングなど莫大な手間とお金が必要となります。クレームはニーズが顕著化したものと位置づけ、またクレームの要因を正しく分析することで、自社の課題とサービスレベルの向上を図る事が可能となってくるはずです。多くのクレームは慣れから来るもの、この位はいいだろうという甘い判断から起こることも少なくありません。物流業はサービス業であると考えるならば、顧客である荷主や着荷主に対して真摯な態度の望むことが肝心です。努力をしても結果的にクレームを起こせばそのサービスは顧客満足にはつながっていません。発生したクレームを分析し、その対策を改善につなげましょう。多くの企業で記録されているクレーム報告書今一度見直してみたいもの。クレームはサービスを生む宝、クレームを感謝して対応する姿勢を持ち続けたいものですね。