物流なんでも相談所

年末に向け事故をなくす②

2022年11月30日

物流なんでも相談所 Vol.53

Vol.52「年末に向かい事故をなくす ①」 の続き

次に商品移送中の事故が発生する場所や状況なども確認しておく必要がありますが、以前も取り上げさせていただいたように、やはり積み込みと積み下ろし作業時に起きる事が多くなっています。他にも、積み下ろし時、輸送中、荷役中など人の手が介在したタイミングで起きてしまうものなので、作業者に注意や警告をしっかりしておくことは絶対必要です。荷物の破損で最も多いのは箱の潰れやへこみ、擦れといった外装破損。内部の製品や商品にまで影響が及ぶ前に、箱に注意喚起などの目立つ印を付けるなど、対策は必要だと言えるでしょう。輸送に関する事故は責任の所在が物流企業になります。従って現在物流企業側でも破損トラブルを未然に防ぐため、「衝撃検知シール」や「衝撃レコーダー」を導入する等して対策を講じています。(梱包強度を強化する、取扱注意を促す、作業員に対する教育や安全研修なども実施)。

事故の発生要因や責任を明確化する上で活用したいのが「衝撃探知シール」。荷物が手元を離れた後に何かが原因で破損したけれど、それが輸送中なのか受取先の取扱いによるものなのかわからない場合、証明するものがなければ責任の所在を物流業者が追及される事になります。このような場合に衝撃検知シールを取り入れる事により、作業者に対する警告・注意喚起が直接できる様にもなるだけでなく、衝撃が発生した時点で赤変するので輸送中の事故でない場合は証拠を残す事ができます。衝撃検知シールが貼ってある荷物とそうでない荷物に対する荷扱いはかなり違ってくるのは当然のこと。事故や取扱不備などで発生するコストは相当なものですから、ここはしっかり対策をしておくべきです。乱暴に荷物を扱われて破損する事を防ぎ、良い意味で作業員にプレッシャーをかける事で安全に輸送ができる様になるでしょう。

事故を起こすこと=無駄な経費の支出ということになります。2024年問題も間近にする中で、人の動かし方=働き方改革は待ったなしの状況です。先進企業を中心にEC物流の急成長や人手不足による省人化をうけ、物流の装置産業化もまた進みつつあります。2024年問題をいよいよ間近に控えた物流業界でもマテハンの段階などで、ある程度の自動化は避けられないものになってくるかもしれません。しかし現場における改善を繰り返すごとに高められていく人の力やスキルにも、決してあなどれないものがあります。5Sの徹底で作業の標準化やルールが正しく機能していくと、レイバーコントロールの効果も確実に表われていき、誰がどの現場に行っても作業効率は変わらない、という理想の形を完成させることも可能になります。物流現場をうまく回すPDCAやKPIに沿った作業の効率化には人であるからこそ進めていけるものも多くあります。自社のオペレーションを快適に機能させていくために部分的なDXを利用することも良いでしょう。大切なのは少ない人の力を最大限に引き出せる企業体系を実現することであり、そのためにデジタルの手を借りる、という考え方を忘れないことです。

2022年、コロナという課題を抱えたまま日本は予測を超えたエネルギー危機や円安など、様々な問題に直面してきました。残り少なくなってきたこの年に、まだまだこれから明るい歴史をきざんでいけるよう、1人1人が意識して努力を重ねる必要、あるのかもしれませんね。今一度原点に戻り、事故をなくす=無駄をなくすことにつながる、を忘れずに頑張っていただきたいと思います。

著者プロフィール

岩﨑 仁志

代表主席研究員

職歴
 外資系マーケティング企画・コンサルティングセールス


物流・運輸業界に留まらず、製造業や流通業物流部門などを対象にコンサルティングを行ってきました。国内外の物流改善や次世代経営者を育成する一方で、現場教育にも力を発揮し、マーケティング、3PL分野での教育では第一人者とのお声をいただいています。ドライバー教育、幹部育成の他、物流企業経営強化支援として、人事・労務制度改定に携わった経験から、物流経営全般についてのご相談が可能です。

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