職場のハラスメント対策について
2022年10月12日
労務管理ヴィッセンシャフトvol.4
1.ハラスメントを許さない風土づくり
先月に引き続き、会社のハラスメント対策について具体的に触れます。ハラスメントに該当するための要件は、必ずしも法律で一義に決まっているとはいえません。ハラスメント妥当性の有無は、各種ハラスメント関連法により定義されているため、様々な局面での判断となります。
それらを踏まえたうえで、会社としてハラスメント対策は何をすればよいのか?一番大事なことは、事業主が主体となって、ハラスメント防止に関する方針を明確にすることです。「なんだそんなことか」と思われるかもしれませんが、社長が主体となって防止対策に取り組むことは、経営者全体やマネージャーの行動変容を促す上で、大きな影響を与えます。方法としては、就業規則等に明記し、服務規律違反として明文化することです。とは申しましても、一般的な就業規則に会社の風紀を乱した行為は違反行為として定められているケースが多いと思います。望ましいのは「ハラスメント防止規程」などの別則を設ける方法です。
規程の中で設けるのは、まずはハラスメントの定義です。パワハラ防止であれば、「職場内での優位性を背景に行われる身体的、精神的苦痛を与える」行為はハラスメントになる旨、明記します。また、セクハラは上司から部下だけでなく、同僚から同僚、先輩から後輩(逆も含む)においても成立するため、これら関係において性的言動や嫌がらせがセクハラにあたる旨の定義を明記します。
マタハラに関しては、育児介護休業を取得する等、制度利用を制限するような言動、また制度を利用したことに対するいやがらせが該当しますので、定義を明記します。
職場における三大ハラスメントは、パワハラ、セクハラ、マタハラですが、その他アルコールの強要(アルハラ)や、PC、スマートフォンの知識が乏しく、苦手とする人へのハラスメント(テクハラ)等、様々なハラスメントがありますので、各職場の現状にあった定義も必要となることがあります。
また、ハラスメントの事実が発覚した場合の対応も重要です。次章で相談窓口にふれますが、行為者にいかなる対応をすべきか、再発防止のために適切な対応を行うことも大事です。一般的には服務規律などで職場秩序違反などがハラスメントに該当すると思いますが、行為者に改善がみられない場合は懲戒処分を行うことも考えられます。
懲戒処分は戒告や出勤停止、降格や減給、最悪の場合懲戒解雇も考えられます。ただし懲戒にあたっては、賞罰委員会を経て本人に弁明の機会を与える等、公平さが求められます。賞罰委員会に関する規程も就業規則に設けておいたほうがよいでしょう。
2.相談窓口の適切な対応が大事
ハラスメント対策の要として、相談窓口を設置する場合があります。相談窓口は社内であれば人事担当者や管理職、社外であれば顧問弁護士などに依頼するケースが考えられます。相談窓口対応で一番大事なのは、相談者の人権を十分に尊重し、傾聴する姿勢です。「あなたにも問題があったんじゃないか?」とか、セクハラであれば「あなたにもスキがあると思う」など余計な一言をいってしまう事例がありますが、これは避けるべきです。勇気をもって相談窓口にきた相談者を肯定してあげることが適切な対応です。例えば「この度はよく勇気を出して相談していただけました。ありがとうございます。まずは何があったか、忌憚なく話してください」このように相談してきた相手を肯定してあげることが何よりも大事です。
また、相談窓口担当者は、相談内容などについての秘密を口外しないことです。窓口で適切な対応を行っても、社内の飲み会で「〇〇さんからこんな相談があって・・・」などと話してしまえば、相談者は二次被害に遭うことになります。
最後に、相談対応を行う場所は、できれば社外がよいです。会社の会議室等をつかって聞くと、他の従業員に悟られてしまい、また相談者から十分な情報を引き出せないこともあります。
最後に、職場のハラスメント対策は、人権を守ることだけでなく、会社に良質な業務と人材が集まる上で重要です。ハラスメントが横行する職場に優秀な人材は集まらないといってよいでしょう。