2024年問題を見つめ直す
2022年8月3日
物流なんでも相談所 Vol.47
物流業では、昨今2024年問題に関する様々な対応策が必要だと話題となっています。実際に筆者も講演依頼の多くが2024年問題に関するものが少なくありません。2024年問題とは、働き方改革法に伴う「時間外労働時間の上限規制」などが2024年4月から「自動車運転の業務」にも適用されることなり、物流業界でも対応が必要となってきたことがその要因だと考えられます。2024年問題は実は労働法規が改正された2019年から始まっているのですが、それまでほとんど対応できていない物流業者が2024年問題に対応できておらず間近に迫ってきたことから、大問題として注目されるようになってきたのではないでしょうか。それでは2024年問題を見つめ直していきましょう。働き方改革関連法は、大企業では2019年4月から、中小企業では2020年4月から順次施行されてきました。しかし「自動車運転の業務」や「建設事業」などについては、働き方改革が目指す時間外労働の上限規制と「実態」が非常に離れているため、5年の猶予が設けられていました。
今回の法施行で特に大きなインパクトを及ぼすとされる変更点は「時間外労働時間の上限規制」です。1人あたりの時間外労働時間が年間960時間までと定められています。今後、他業界の年間残業時間の上限(年間720時間)と同レベルまで削減される可能性も残されており、働き方改革待ったなしの状態に物流業界はいるのです。
今回の施行にともない、物流業界は次の2つの変更にも対応することが求められます。まず時間外労働の賃金の改定です。今改正にあたり60時間を超える時間外労働に対する割増賃金は、これまで大企業は50%増、中小企業は25%増でした。しかし2024年4月1日からは、中小企業の割増賃金が50%増になります。60時間超の残業が慢性化している物流・運送の中小企業にとっては人件費が増大することになります。
次に同一労働同一賃金の義務化です。正社員と非正規雇用労働者との間で、基本給や賞与などの待遇が同一とせねばなりません。また非正規雇用労働者から要求があった場合、企業側は待遇の差について理由を説明する必要が生じるなど様々な準備が必要です。実際物流業ではパートなど非正規雇用労働者を活用することで人件費、コスト低減に努めてきました。顧客である荷主は、さらなる物流コスト削減を物流業者に課し、そのため非正規雇用が物流業界でも進んだとされています。今改正は、同一企業で正規雇用と非正規雇用の間で生じる不合理な待遇差を解消することを目的にするものです。物流業界では、多くのドライバーやセンターで勤務する社員が非正規雇用で働いている場合が少なくありません。そのため、今後は給与体系や評価基準について待遇差が生じないよう合理的に設定する必要があります。非正規雇用と社員の労働内容に明確な差をつけることも一つの対応策ですが、実際には明らかな差をつけることは容易ではないと考えられています。
今の物流業界が抱えている問題を整理してみます。まず若年労働者など労働者不足、労働者不足等付帯業務増による長時間労働の慢性化、コロナ等の影響による商流の変化と宅配便など物流量の増加などが主なものだと思われます。その及ぼす影響は、運送業者の収益減少、トラックドライバーの収入減による離職の加速、荷主の物流コスト増などが考えられます。
それでは2024年問題に対応しながら、どのように課題解決に向けて取り組んでいけば良いのでしょうか。2024年問題、どのように対応すれば良いのでしょうか?まずは労働環境を改善し、働きやすい職場作りから進めるべきです。具体的にはワーク内容を見直し、標準化やワークシェアなどによる負荷の低減が必要です。福利厚生制度の見直し、自社単独で難しい場合は専門的なサービス企業に委託するのも一考に値します。最後には、正しい評価基準を設定することです。汗をかき頑張っている人が報われる賃金体系が望まれます。
次に効率化を進め、生産性を高める事が大事です。ドライバーの人材不足や長時間労働を解決する上では、長時間労働の要因である荷待ち時間の短縮、トラックの稼働率向上、配送・庫内作業の効率化などが大きな壁となっています。ドライバーの労働時間抑制には荷主や着荷主に現状を説明するためのデータを準備して、配送条件の緩和を考えてもらうことが大事です。そのため全ての業務の見える化、データ化を推進して参りましょう。配送でも共同配送を導入するとか、車両の大型化を進めるとか、長距離輸送時にはフェリーの活用や輸送モードをJR貨物や船に変えるモーダルシフトも考えられるでしょう。自社でできるところから対策を進めていただきたいと思います。