物流業界におけるDXへの取組み
2022年5月25日
物流なんでも相談所 Vol.44
まだ聞くに新しい物流DXという言葉。このDXとは何か、考えてみましょう。DXという言葉は聞いたことがあるものの、どのような意味なのかはよく分からないという方も多いでしょう。まずはDXの概要について分かりやすく説明していきたいと思います。DXは「デジタルトランスフォーメーション」を縮めた言葉で、「最新のデジタル技術を駆使して業務上の課題を解決し、新たなビジネスモデルを生み出すこと」を意味しています。IT化と同じようなものと思われがちではありますが、厳密にはDXとIT化は異なります。IT化は「自社の業務をIT技術によって効率化・自動化して課題を解決すること」ですが、DXは「IT技術によって自社の課題を解決し、自社だけでなくユーザーにとっても利益をもたらすこと」を目的としています。IT化は単純に既存の業務をIT技術に置き換えることを指しますが、DXにおけるIT技術は手段に過ぎないといえるでしょう。近年、IT技術は目覚ましい進歩を遂げており、最新のデジタル技術を活用した多様なビジネスモデルが登場しています。変化に付いていけない企業は他社との競争力を失ってしまうことから、社内のIT化を推し進めて安定的に競合企業と渡り合える力を維持することは非常に重要です。DXを実現するためには、単にIT技術を導入するだけではなく社内のさまざま業務を根本的に見直さなければなりません。IT技術を交えた新たな業務フローを構築することにより、自社にとって安定的に利益を得られる体制を構築することが企業におけるDXの最終的な目標であるとも言えるでしょう。
物流業界におけるデジタル化は、運輸管理から始まり、車両にデジタル式タコグラフ(デジタコ)の設置が義務付けられると、そのデータを活用し、給与や様々な管理が行われるようになりました。今では物流業の多様化によって、受発注データや在庫管理まで一元して管理するサードパーティ事業を運営する物流企業も数多く出ています。
物流業界の現状としてまだデジタル化が遅れているのが実情です。物流業界では未だアナログな対応が多く、DXの推進による業務の効率化や新たなビジネスモデルの登場は十分に進んでいないといえるでしょう。物流業界のDX推進が遅れている背景には、日本特有のいくつかの事情もあります。まず欧米では荷主はコストの最小化を重視する傾向にあり、物流業者には「どこに依頼しても標準的な対応ができる」ことを求めています。そのため、DX推進によってどの業者であっても共通した対応ができるようになることは双方にとってメリットがあるといえます。一方で、日本の荷主は状況に応じた臨機応変な対応を期待する傾向にあり、物流業者は対応力の高さが重要視され、荷主に追随するため、柔軟な対応を行う必要があります。そのためにはIT化による標準化よりもアナログな対応の方が都合が良い面も多く、DX推進に踏み切れないという企業は少なくありません。さらに、日本では現場主義の風潮が強いため「マネジメント主導でまずはやってみる」という身軽な対応が取りにくい企業が多いといえます。まずは将来的にどのような姿を目指しているのかを明確にして荷主の理解を取り付け、大きく環境を変化させられる状況を作り出すことが物流業界におけるDXの第一歩であるといえるかもしれません。
物流業務のアウトソーシング先である物流企業には現在大きく3つの課題があると考えられます。まず少子高齢化による老年人口割合の増加によって働き手は減少していくことが予想され、人材不足はこれまで以上に深刻化することが予想されます。次に人材不足や荷主ニーズの高まりによる従業員の機能アップと生産性が求められ、社員一人一人の負担が増すことが考えられます。最後にコロナウィルスなどによって派生したテレワーク等によって少量多頻度の小口宅配需要が増すことも間違いないでしょう。今までのやり方を続けると物流企業として運営に行き詰まることになります。そこで、DXという機能をかつようすることが必要となります。人手不足を補うためのロボティクスや自動仕分けなどIT活用、機能不足を細分化し、機能別に生産性を高めるためのAI活用、小口宅配を可能とするための在庫から配送までの一元した情報システム活用が効果的であると思われます。ぜひ各社でも導入できるところから、システム化を検討していただきたいと思います。