物流業の勝ち残り策
2022年3月30日
物流なんでも相談所 Vol.42
物流業界を取り巻く環境は依然として厳しいものがあります。変化の中でどのように物流企業は勝ち残るかをこれまで述べてきましたが、今号ではそのために物流業として重要な品質の問題を考えてみたいと思います。物流業を取り巻く経営環境は年々厳しさを増しています。このような時こそ、物流業とはどのような事業なのかを、原点に戻って見つめ直したいものです。物流企業としての自社を、外部の目線からもう一度分析・評価してみましょう。
本当の意味でお客である荷主から信頼されているのでしょうか、お客が期待しているサービスができているのか、多方面から確かめたいものです。この様な時には、ひとつの目安があります。まず、自社の荷主ごとの売り上げを見て、その売上が増えているかどうか。次に、その荷主の物流費用の中での割合が25%に達しているかどうか。そして、指名されるドライバーが増えているかどうか。最後に、届け出先の荷主の評判がよく、荷主からほめられたり、感謝されたりしているか、です。
次に、物流品質を上げるには、社員の満足度(ES)が十分であるかどうかも、重要なポイントです。社員は自分自身にやりがいを見つけることで、サービスレベルが上がってくるという事実が存在します。ですから、社員の満足なくして、顧客の満足はありません。社員が前向きとなると、現場での改善が進みます。改善を行う中で、コミュニケーションが活発化してきます。この様な物流企業は、企業風土自体が明るく、社員間でも、社員と上司との間も、経営者と社員との間も意思疎通を欠くということがなくなります。現場での問題が、レベルごとに精査され、そして引き揚げられていきます。その時、経営者にまで達している意見具申は、経営に役立つものとなり、現場での改善によって積み上げられたノウハウは他社との差別化が可能です。揺るぎない物流、他社にマネのできないサービス提供が可能となります。
物流企業において、サービス品質を向上させるには、何よりもその原点となる人材のレベルを引き上げることが重要です。そのためには、まず挨拶の徹底から始めましょう。物流企業において挨拶が徹底できるだけで、サービス品質の良い企業との印象を与えることができます。“おはようございます”“ありがとうございます”“失礼いたします”“すみませんでした”という「オアシス」が十分にできているか、「ハイ」という明るい返事が徹底されているか確認してください。普段から挨拶が行われていないと、とっさの時に挨拶ができなくなってしまいます。多くの物流企業において、ドライバーの方々と接する機会がありますが、残念ながら自ら挨拶をされる方は少ないのが事実です。そのようなドライバーの方々でも“挨拶訓練”をミーティング時に毎日繰り返し行うことで、習慣化され、挨拶が身に付き、自然とできるようになります。簡単なようで、なかなかできていないのが実は挨拶の徹底なのです。挨拶訓練は最近では学校教育の現場では、きちんと行っていません。ですから、社会人として働く場所で訓練をしなくてはできるようになりません。ドライバーや現場の方々でも、“挨拶”くらい誰でもできるだろうと早合点しないで、挨拶がきちんとできているかどうかを現場で確かめてみてください。そうすると、案外徹底されていないことに気付くものです。現場を観察すると“挨拶”、そして“言葉遣い”など、目に余るものに驚かれるのではないでしょうか。それが荷主や着荷主相手であると想像すると、恐ろしい気がしますね。
物流業はサービス業ですから、相手である荷主や着荷主がその物流企業に対して評価を下すのは間違いありません。その荷主や着荷主に対して基本となる挨拶すらできていないとなると、これは評価の対象外となってしまいます。いくらどんな奇麗なトラックを導入しても、ユニフォームを新調して身だしなみをよくしても、これでは意味がありません。まずは挨拶の徹底から始めていただきたいと思います。次に人材の育成です。人材における人在(いるだけの人)と人罪(存在が会社に害となっている)をなくし、人財(会社の益となる財産)を増やすことが必要です。この人材問題は次回以降に詳しく説明したいと思います。