物流なんでも相談所

幹部育成を進めるには その①

2022年1月26日

物流なんでも相談所 Vol.40


物流業にとって一番の課題は人材採用と定着と言われて久しい。その中でも物流企業にとって、幹部育成は重要です。経営者にとって、幹部とは、自分の経営理念を理解し、与えられた組織の力を最大限に引き出し、その実現のために支援してくれる右腕となる存在であるからです。

幹部の役割としては、まず会社および自部門が抱えている問題を正しく理解し、解決への努力を継続していることが幹部に必須の条件でしょう。行動指針として①経営トップの立案した経営戦略にしたがって、部門の成長戦略を立案し、その実行計画を立て、業績目標を達成すること、②部門目標の達成に向けて部下を動機づけ(新人・若手の人材育成)、自ら先頭に立って業務を遂行する、③新たな仕事のやり方、提案の仕方など業務改革を推進、④しっかりトップを補佐し、リーダーシップを発揮し、社員の模範となる人物になる、などです。

幹部の存在は経営者の理念や考え、気持ちを十分理解し、その意向に沿った方向に組織を導くことができ、また経営者のいないときには、経営者の代わりとして業務を遂行できることです。 物流業人材教育のなかで管理者教育に注力する企業が増えている背景には、リーダーのスキルアップ(リーダーシップ)が企業自体の活力の増大に大きく結びつき、管理者次第で会社は成長もすれば衰退もするだからと考えられています。事実筆者も多くの物流企業で幹部育成を担当させていただいております。これは実に多くの物流企業で幹部社員(管理者)育成・指導がうまくいっていないからだと考えられます。

ここに実に多くの物流企業に限られたことではありませんが、企業が抱える課題が浮き彫りになってきます。具体的には次のようなことが考えられます。①経営者が管理者に「指導したこと」が行動にどのように活かせるかが明確でない、②管理者に対して、どれだけ具体的な指導ができるか考えていない、③経営者の管理者指導のフォロー(指導後の実施過程)不足、④経営者が管理者に「考えさせる」ことをしていないなど経営者自身を含めて管理者(経営幹部)のマネジメント能力の問題が見えてきます。

ではそのように進めていけばいいかを考えてみたいと思います。経営者は孤独だと言われていますが、実際に多くのドライバーやセンタースタッフを抱える物流企業においていくら優秀でも一人ですべての面倒を見ることができないのは当然のこと。また現場の理解度不足や今後の方針など決める時に迷いも生じることでしょう。そんな時に頼りなる右腕、左腕となってくれる幹部社員が必要となることはまちがいないでしょう。そうした時に、経営者に近い視点で、経営を考え、実践できる幹部が身近にいるか否かで、意思決定の質やスピードに大きな違いが出てきます。経営者としては、こうした頼りになる幹部社員を育成したいところです。その際には注意すべきポイントがあります。

幹部社員は、誰もがなれるというものではありません。経営トップが幹部社員に期待することはまずは目標とする業績を達成すること、次に自分を補佐して欲しいということです。加えて、自分だけでは足りない点を補う中で、新たな仕事のやり方、提案の仕方など業務改革などを提案、推進をして欲しいと願うことは当然の要望でしょう。そしてその幹部社員に求めるのは社員の手本となる人物になって欲しいということ、人格と行動、その結果後継者となる若手社員の育成を願うことでしょう。

上記に述べたように幹部社員には相応の高い能力が求められるため、そう簡単に見つかるというものでもありません。従って、幹部育成の際には、まずは、幹部となる素養を持つ人材の選抜から始めます。それにはこれまでの業績や経験年数だけでなく、①知識力(ビジネスに関する知識に加え、社会・経済・文化などの幅広い知識)、②理論的思考力(物事や事象を理論的に把握・説明できる能力)、③統率力(部下をまとめ、率いることができる能力)、④コミュニケーション能力(社内外の人達と良好な人間関係を構築し、相手の話をいつも聞ける)、⑤調整力(利害の異なる関係者間の意見を調整し、まとめる能力)、⑥行動力・実現力(自ら動き、周囲を巻き込みながら目標を達成できる能力)などのスキルと能力を持ち合わせた社員を選抜することが望ましいと言えます。

著者プロフィール

岩﨑 仁志

代表主席研究員

職歴
 外資系マーケティング企画・コンサルティングセールス


物流・運輸業界に留まらず、製造業や流通業物流部門などを対象にコンサルティングを行ってきました。国内外の物流改善や次世代経営者を育成する一方で、現場教育にも力を発揮し、マーケティング、3PL分野での教育では第一人者とのお声をいただいています。ドライバー教育、幹部育成の他、物流企業経営強化支援として、人事・労務制度改定に携わった経験から、物流経営全般についてのご相談が可能です。

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