「物流業経営はどうあるべきか」①
2021年9月8日
物流なんでも相談所 Vol.36
これまで自然災害やパンデミックなど状況が大きく変化する中でどのように物流企業は勝ち残るかを述べてきました。今回はそのまとめとして物流業経営はどうあるべきか考えてみたいと思います。
経営者であればだれでも知っている『断絶の時代』等、数多くの著作で有名なドラッカーは、自由経済において経営と経営者のあり方について、「自由競争の経済にあっては、企業が競争に勝って成功をおさめるか、あるいは企業が存続するかどうかを決定するのは、経営者の能力と実行力である」と述べています。企業経営において、ビジョンの設定は、経営者の役割の最も重要なものです。経営者であるならば、常に次の3つの問いに即答できなければなりません。①自社の事業は何か、②自社の事業はどうあるべきか、③自社の事業の将来はどうなければならないか、これを常に社員に対して啓蒙しているかが、とても大切です。社訓や朝礼で徹底するだけではなく、幹部社員がそれを理解し、いつでも説明できるようにコミュニケーションの徹底を図ることも必要です。ドラッカーは、「事業のただ1つの明らかな目的は顧客の創造である」といっています。
顧客の創造とは、じっとして電話やFAXでの注文を待つのではありません。市場は小さく、厳しくなっています。とりわけ物流業は供給過剰で、安閑として顧客を待つのではなく、すすんで顧客を探し出さなければ、企業の存続すら危うくなることでしょう。ポイントは、その市場である荷主の要求を実現するには何をなすべきか、ニースはどこにあるのかを探ること、すなわちマーケティングを行なうことと言えるのではないでしょうか。市場調査をもとに顧客の求める商品やサービスをつくり出し、それを直接セールスする活動を通して、仕事を獲得することが経営として重要となっているのです。提案営業とはこれができるかどうかで、成功できるかどうかが違ってきます。
かつて物流業は、受注産業と言われ、荷主の注文に応えることが仕事のやり方でした。今経営環境が劇的に変化しています。物流企業として強くたくましい会社とならなければ時代の変化の波に乗ることはできません。今こそ、全社挙げての改革の時ではないでしょうか。これまでやり方では、勝ち残ることができません。勝ち進むためにはさらなる、革新が求められます。革新は企業のあらゆる面で進められなければなりません。価格において、商品内容において、営業の方法においても同じです。社内においても無駄な業務のやり方を見直し、経営組織や管理方法においても革新が必要です。企業経営のあらゆる面において、環境に順応するだけでなく、積極的に経済条件を変革し、環境を創造的に革新することが企業として勝ち残る力となります。
何故企業を拡大しなければならないのでしょうか。それは利益の拡大のため、と考える方が多いのではないでしょうか。これに対して、ドラッカーはその目的を企業の維持存続のためとしています。そして利益については、①企業が維持存続するための諸経費、②企業の発展と拡大に必要な将来費用、③顧客の創造に必要な経費等をカバーするための必要最小限の利益、という概念を打ち出しています。企業の価値は、利益を上げて存続してこそある、と説明しているのです。話を戻しますが、厳しい経営環境の今日、勝ち残るには、企業経営の方針の徹底が全社員にまでなされているか、そのためのコミュニケーションを活発に行っていただきたいと思います。
これまでの説明でご理解いただけるように物流業も経営としてなすべきこと、市場である顧客が望んでいる商品(サービス)を提供して評価を得ると言うことがとても大事なことなのです。自社のインパクト分析を行った上で、今後どのように進めるか、経営方針(ビジョン)を示していただきたいのです。この経営方針に基づき、幹部会ではこれを現場に落とし込み、アクションプランを定め、これを実行していただくことが大事です。この時に、現場における課題点が明確となっていることがとても大事です。このアクションプランが確実に実行されているかどうかを日々確認する現場の長とともに、その成果を確認していくことが物流業経営における基礎と考えて間違いないでしょう。この場合、まず利益がでるビジネスであるかどうかも極めて重要なことです。現場では、仕事をすることで役割を果てしていると考える現場スタッフ・ドライバーが多いのが事実です。実際経営としては、利益の出ないビジネスは会社には何の貢献もしていないのです。しかし、働いた現場のスタッフは、自分の貢献と権利を主張することになるでしょう。ここで必要となってくることは、経営状況の「見える化」です。経営をオープンにすることで、どうしたら利益が出るのか、改善を現場で常に実行する体制を構築して欲しいのです。現場の改善が経営に取り入れられることで、社員の前向きな姿勢も、経営への関心も生まれてくるでしょう。こうして現場を巻き込んだ、全社一丸となる経営が行えるかどうかが、この厳しい経営環境を乗り切る力となることは間違いありません。
経営者・幹部・現場と一体となっている会社には、業種は違っていても共通点を発見することができます。会社が明るく、元気がいいのです。5S(整理・整頓・清掃・清潔・しつけ=作法)の徹底がなされており、会社も車もきれいであることはもちろん、無駄・無理・むらと言われる3Sの排除がなされています。では、どこからはじまることが望ましいのでしょうか?私は“あいさつの徹底”であると思います。あいさつは、すべの始まりです。この挨拶をきちんとすることから始めていただき、経営者の方針を実行できる会社へと改善していただきたいと思います。