コロナ拡大でBCPの見直しを(1)
2021年8月11日
物流なんでも相談所 Vol.34
2011年3月に発生した東日本震災後を機に、多くの企業で再重視されたBCP(事業継続計画)。当災害から10年あまりが経過した今、その取り組み方に少しずつ温度差も出始めているように思えます。東日本大震災以降、2016年の熊本地震、2018年の大阪北部地震・台風被害などが発生した日本列島は、次に自然災害がいつ発生するのかわかりません。常に災害に備える重要度が増しました。東日本大震災以降は物流BCPの重要性を認識する企業が増加し、関東地方に本社や拠点を置く企業に迅速な動きが出ました。関東地方は災害がいつ起きてもおかしくないと言われ続けていると共に、意思決定できる多くの役職者が勤務していることも一因だと考えられます。日本における自然の災害は減るどころかむしろ増加傾向にあります。災害の種類は異なりますが、ここ数年の間にも実に多くの方々がその犠牲となり命を落とされました。
加えてコロナウィルス感染拡大によって世界経済が大きく影響を受け、いち早く回復した中国と対策の遅れが見立つ国々では経済面での大きな違いも出ています。コロナウィルス感染拡大によって企業業績が厳しくなる見込みですが、企業が検討する業績向上策は、①売上増加策(販売促進プロモーションなど)、②売上原価率の低減策、③販売管理費の削減策(広告宣伝費・旅費交通費・交際費・マイナスの削減 および物流費率等の低減)などが考えられます。製造業や商社など、荷主企業の物流拠点業務および物流企業の拠点業務は、製造業の製造ラインや部品加工業務などと同様に、モノ(商品)の入出庫・保管・輸配送などの業務についてはテレワークが困難な業務と言えます。荷量が増えている物流の仕事は、在宅が増えたことでスーパーやドラッグストアーなどへの食品配送があります。特にカップ麺やレトルト食品、缶詰、冷凍食品、お菓子などの賞味期限が長めの食品が増加しているようです。荷動きが悪い理由は、コロナウイルス発生後に中国などの海外から輸入する部品や製品の入荷が減り、それによって製造ライン停止や、在庫が品薄になったことで荷量が減少している企業があります。また建築現場など資材が供給不足になり、工期遅れなどの影響が発生している建築・住宅関連商材の物流業務があります。
EC(電子商取引)による購入増加で、宅配業は多忙になった仕事の一つにあげられます。緊急事態宣言後は在宅率が高いと予想されるので、その時期は再配達率も減少し、配達効率が向上しているかもしれません。生産量が低下していることで、機械など工業製品の中長距離輸送の仕事が減少している模様です。それにより、急な荷量増加時にトラックと貨物のマッチングを行う求車求貨ビジネスにも影響が出ています。従来はトラックに対して貨物の引き合い件数の方が多かったですが、逆転して貨物の件数の方が少なくなっているようです。減少した貨物の仕事をしていた運送会社は、大手運送会社や大手倉庫業などの物流企業に仕事を求めて営業活動を活発にしているようですが、貨物の減少はしばらく続くとみられています。新型コロナウイルス感染拡大により消費や生産が落ち込み、国内貨物輸送の荷動きは鈍化しました。こうした中、人手不足が一時 的に緩和され、高騰が続いた運賃も下落しました。足元では、荷動きは回復基調にあり、運賃下落も底打ちしています。 巣ごもり需要の増加等を背景に、宅配便取扱個数は前年比で大幅な増加が続いていますが、新型コロナウイルス感染拡大を受けて、世界各地における生産活動の停止、モノや人の移動制限等の要因でグローバルベースの サプライチェーンが寸断されたことにより、様々な物資の供給途絶リスクが顕在化しました。
物流業務としての使命を果たすべく、今一度自社のリスク分析を進め、運用されているBCPがコロナ感染拡大に対応できているか見直していただきたいと思います。