誤出荷をなくすには
2021年7月14日
物流なんでも相談所 Vol.33
前回からの続きです。センターにおける物流品質における最大の課題は誤出荷ゼロであると述べました。ある物流センターで誤出荷改善に取り組んだ時の事例では、事故の80%は2つの要因で発生していました。いわゆる誤出荷事故が起こる原因には実に様々な要因が考えられます。しかし過去のデータを分析すると誤出荷が発生してしまう2大原因は誤ピッキングと出荷時の伝票誤添付によるものであり、その2つのミスが事故原因の80%を占めていました。 ピッキングのミスとは、違う商品をピッキングしてしまう、違う数量をピッキングしてしまうという事故ですが、ほとんどのミスは数量ではなく、商品間違いによるミスでした。 また、出荷時の伝票誤添付というのは、作成した伝票、送り状と出荷準備をした商品の突合せ時にあべこべに貼り間違いをするというミスでした。そこで現場ではWチェックでなくそうとしていたのですが、言われるWチェックという手法は、誤出荷防止には余り役に立たなかったようです。 それというのも誤出荷事故の発生件数自体が作業量に比べると非常に少ない、つまり日々のチェック作業自体が結果として必要のない状態が続くと、どうしてもチェック自体が疎かになってしまうということにもあったようです。
しかし一方では、ピッキング作業者、伝票貼り付け作業者が人間である以上、いつか必ずミスを起こしてしまいます。 つまりヒューマンエラーはいつか100%起こりうるのです。よく言われる作業者の不注意が事故を起こすということは厳密には間違っていると思います。 例えば、ピッキング作業において、商品現物表示の商品番号とピッキングリストにある商品番号を確認する際に、不注意で合っていると思ってしまってミスが起こる。これは注意力不足によるものですが、実際には確認作業をしていない、頭から合っていると思い込んで確認作業が抜けてしまうということでミスが起こってしまうようです。
何故、確認作業が抜けてしまうのか?本来、人間は自分が確信を持っていることについては逐一確認作業をしながら業務を進めるということは心理的に無駄だと思ってしまうので抜けてしまうのです。つまり処理業務は得意で忘れることは皆無だが、確認作業は不得意で、つい思い込んだり、忘れてしまったりということが多いのです。そこでちょっとした工夫と改善で、作業者の意識を変えてあげることが可能となります。 つまり確認作業を処理作業に変えてやるのです。 このことだけで、結果として確認作業が完璧に行えるようになり誤出荷事故が大幅に低減できました。余りにも当たり前のことですが、ピッキング作業者が業務をしやすい状況を作ってあげるということも、注意力を自然に喚起する有効な手段であると言えます。
しかし当たり前のことができていないことも少なくありません。ピッキングリストには必要のない情報を入れない、重要な情報は文字を大きくする、文字レイアウト、作業性を考慮して配置するなどなど、情報システムだけに頼らない仕組みを持つことも大事です。改善活動を生かし、そういう愛情細やかなピッキングリストを作りあげると効果があがりました。現物表示のシールやカンバンにも工夫して、類似表示品と区別しやすいように、そこだけ大きくするとか、色を変えるというのも効果があるでしょう。 その他には、数字やアルファベットではなく「ひらがな」を使うというのも効果的だと思います。そうやって細かな改善と加えることで商品事故をなくすことが可能となります。