物流なんでも相談所

人手不足への対応~ヤマト運輸

2021年1月13日

物流なんでも相談所 Vol.20

 

厚生労働省の発表による有効求人倍率は沖縄を除く全国各地で1を超え、人手不足が全産業で切実な問題となっていることを表しています。物流業における人手不足は、建設業の1.0を大きく上回る1.55と深刻さを増していのが実情。このような人手不足の中、大手では対応策を講じ、ビジネスチャンス拡大を狙う動きも目立つようになってきました。

人手不足に対応するには輸送効率を引き上げることがまず第一になすべきことであり、陸運業界が持っている輸送能力を最大限に活用するのもその1つ。そのためには、片荷(かたに、幹線輸送において積み荷が片道分しかないこと)のような無駄を極力なくすための共同プラットフォームを、業界で構築することが日本の産業を支えていくうえで求められています。もう1つは働き手を増やすための労働環境の改善が急務であるとされています。厚労省H25年度統計によると全産業における女性労働者の割合が42.8%を占める中で、運輸業は割合の低いとされる建設業14.1%に比べて2.4%と群を抜いて低い割合でしかありません。女性の中にも大型車両のドライバーを希望する人もおり、女性が就労できる仕事の仕方など労働環境をいかに整えるかが重要となってくるでしょう。また、高齢者や外国人の活用も注目されます。そのほか、モーダルシフトや機械化も方策の1つです。各社でこれらの取り組みをどう組み合わせるかが重要となってきていると言えますね。

人材確保と年間を通してのスムーズな業務遂行は全企業の願いです。業界大手のヤマト運輸も長い間、人手不足に対応する多様な策を講じてきました。ヤマト問題として新聞で取り上げられた再配達による長時間労働の実態も総量規制など対策を講じることで少しずつ改善に向かっているようです。同社では宅配における集配エリアでセールスドライバーとターミナル拠点での仕分け作業人員の確保が課題となっていましたが、集配エリアでは顧客に直接接する場所なので女性、特に主婦を活用してきた他、集配を担当する女性約1万3000人の雇用も推進しました。主婦の場合、地域の中で短時間働いて残業がないという働きやすい就労条件が魅力となったようです。今後さらに、セールスドライバーの補助的な役割を担うフィールドキャストとしても、主婦の力は期待できるとしています。一方、仕分け作業分野では短時間労働の希望が多く、フルタイム人員を確保することがどうしても難しいのが現状です。当然体力ある若者の確保が厳しいので、仕分け現場では機械化を最優先で進めてきました。最新の搬送機械を導入すれば、2~3割は省力化が図れるため結果的には人件費削減が可能となり、全国に約70ある拠点に順次設備の導入を続けてきました。それ以外の施策として外国人の活用も推進中です。現在、中国やアセアン諸国などから来た1000人を超える外国人が働いており、そのための作業マニュアルも日本語を含めた6カ国語対応で有用な外国人雇用を人手不足対策にあてているということです。

この様に苦労を重ねて招き入れた大切な人材を本人自らの意志で企業戦士に成長させていく周到な社内整備も必要ですね。ヤマトでも仲間といかにコミュニケーションを図るかなど、“実践的な現場作業を想定したマニュアルの内容を充実させていく”としており、労働力の確保に向け全体ネットワーク(物流拠点網)の進化と合わせた機械化もさることながら時間軸や対象者の拡大など更なる施策を進める計画としています。一方で他方配送効率化が図りにくい地方エリアでは貨客混載によるサービス維持を進行している。北海道の名士バス、士別軌道、十勝バスの路線バス3社と提携し、4年前の9月から「客貨混載」を開始しており、過疎化や高齢化が進む中、山間地域でのバス路線網の維持と物流効率化による地域住民の生活サービス向上を目指してきました。それに先駆け2017年7月から北海道運輸局主導の下、ヤマト運輸を含む4社による「ひと・もの・協働輸送プロジェクト」が実証実験を行って効果を検証しました。客貨混載は「宅急便」を積載するため、座席の一部を「荷台スペース」として確保した路線バスを利用するもの。結果的にトラックの走行距離が1日約60km削減され、CO2排出量の低減にもつながった、とのこと。宅急便はすでに社会的インフラであり、その責任を果たすのがヤマトのミッションともしており、社会的インフラには信頼性と持続性が不可欠で信頼性はサービス品質の持続でもあることから、それをしっかりと提供できる体制を構築していく考えとのことです。

著者プロフィール

岩﨑 仁志

代表主席研究員

職歴
 外資系マーケティング企画・コンサルティングセールス


物流・運輸業界に留まらず、製造業や流通業物流部門などを対象にコンサルティングを行ってきました。国内外の物流改善や次世代経営者を育成する一方で、現場教育にも力を発揮し、マーケティング、3PL分野での教育では第一人者とのお声をいただいています。ドライバー教育、幹部育成の他、物流企業経営強化支援として、人事・労務制度改定に携わった経験から、物流経営全般についてのご相談が可能です。

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