働きやすい職場作り
2020年11月11日
物流なんでも相談所 Vol.16
2020年4月国交省が標準的運賃を告示したことで、現場におけるパートスタッフの時給も上昇しました。しかし輸配送の現場ではそれでも人手不足が加速し続けています。
今年1月のトラックドライバーの有効求人倍率は3.17倍。全産業の約2倍にものぼりました。ご存じの方も多いでしょうが、トラックドライバーは現在すでにおよそ10万人が不足していると言われており、5年後になるとこれが倍の約20万人超にまで増えていくと見込まれています。この数字を見ただけでも、国内物流の危うさは見て取れますね。“今現在、人手は足りているから大丈夫”では今後の成長は望めません。人手不足を緩和させ、改めて“持続可能な物流”の実現に向けた取り組みを見直す、として今年6月経済同友会は4つの提言を行ないました。①既存の営業トラックの生産性向上、②自家用トラックの活用に係る規制改革、③大型免許を持つ女性と外国人ドライバーの活用、④国家戦略としての機関設立・人材育成、以上となっています。実現させるため、超えなければならないハードルは決して低いものではありませんが、今から準備できることもいくつかあります。①営業トラックの生産性向上に関しては、すでに取り組んでおられるところも多いでしょう。この機会に幹部、ドライバー共にコスト面から1台当たりの生産性を見直し、改善に繋げていただきたいもの。トラックの1稼働にかかるコストは常に理解されていることが理想です。ゆとりがあれば物流ABC(アクテイビティ・ベースド・コスティング)に基づき、センターなどの作業全般にも生産性の見直しを広げることもできます。
先の提言③に関しても同様に取り組みを続けて行く必要性を感じます。国内で大型免許をも持つ女性は約15万人。それなのにドライバーとして働いている女性は2万人のみです。“免許は持っているが大型トラックの運転はやはり怖い”、“長距離など労働時間が長すぎる”、“更衣室やトイレなど職場環境が心配”―、などよく聞く悩みばかりなのに対策を講じている企業はまだわずか。雇う側も女性ドライバーに対しての“接し方”に、不安を持っているのかもしれませんが、多くの女性ドライバー予備軍をこのままにしておくなど、本当にもったいないことです。
同時に対策を急がねばならないのが、外国人ドライバー採用の問題。在留資格としての特定技能にトラックドライバーを加えるよう現在トラック運送業界は求めています。昨年4月の入国管理法改正から1年半が経過し政府もその見直しを始めている今、新たな労働力としての外国人ドライバーは少しずつ現実味をおびてきたようにも思えます。ただし、そうなってくるとトラックの運転を“特定技能=高度な技術”と認められるにふさわしい、高レベルの教育を行なえることが条件となるでしょう。
いずれにせよ従業員が働きやすい環境を整備し、ドライバーの意識を高めて、そのスキルを向上させていく努力は、今後も続けていかねばならない重要項目です。全てがコロナを意識した上でー、という取り組みになってしまうことは本当にもどかしいものがありますが、現在はまだそれが最優先。残り少なくなった2020年、せめて有意義の密度くらいは高めたいー、1年の締めくくりとなる繁忙期を意識し、健康と安全をベースに、しっかりと目標を目指して進みたいものです。