“物流寸断”でBCPの見直しを
2020年7月22日
物流なんでも相談所 Vol.8
九州や西日本、に加えて岐阜県等を襲った線状降水帯による豪雨は、九州南部、九州北部などで河川の氾濫などによって多くの人命を奪い、高速道路や鉄道などの交通網を大きく寸断し、浸水や物流の停滞で操業を見合わせる工場や、休業する小売店が相次いでいます。特に熊本県南部での球磨川の氾濫によって多くの人命が失われました。日本高速道路(NEXCO)によると、九州自動車道、中国自動車道は9日朝に全線で通行可能になりましたが、予断を許さない状況です。1年分の雨量を1日の数時間で記録するなど、土砂崩れや河川氾濫によってこれまでにない大きな被害をもたらしています。コロナウィルス被害に加えて、異常降雨よる被害が続く中、 物流業として産業と人の命を守るライフラインの使命を今一度考え直す必要があると言えるのではないでしょうか?
記録的な大雨による被害は各地に及んでいます。雨の勢いは、7月8日未明から明け方にかけて、西日本、中部地方を中心に深刻な状態になりました。気象庁は午前6時半、岐阜県や長野県に大雨特別警報を出しました。岐阜県や長野県では、48時間で500ミリを超える雨が降りました。川は一気に増水し、岐阜県の飛騨川が氾濫。土砂崩れや道路が崩落するなど、大きな被害が出ました。平野部では加茂川が氾濫。田畑や住宅が水没しました。岐阜県内では各地で床上・床下浸水が報告され、少なくとも1500世帯以上、約4000人が孤立状態となりました。
一方、九州では、いったん豪雨が落ち着きました。大雨による死者が55人に上っている熊本県では雨が上がり、気温が30度近いなか、一部では、ボランティアなどによる片付けが始まりました。毎年、この時期に九州でこれだけの雨が降る原因の一つとして、この時期の気圧配置にあります。梅雨末期になってくると、太平洋高気圧が勢力を強めて、梅雨前線を本州付近まで押し上げます。そうすると、太平洋高気圧の縁を通って、暖かい湿った空気が流れ込み、また東シナ海からも、暖かい湿った空気が流れ込みます。この2つの湿った空気の入り口が九州にあたるので、今回のような大雨が降りやすいといえます。
今年は、梅雨前線が長く停滞し、ここまで強い雨が降り続くというのは珍しいことだと思います。“線状降水帯”は、梅雨前線の南側に出来るもので、実は、毎年のように出来ています。今年は、梅雨前線が長く停滞していることで“線状降水帯”が、毎日、発生。だから、ここまでの大雨になっているといえます。 “線状降水帯”によって記録的な大雨が降る場合は、南の海上に台風や熱帯低気圧がありますが、南の海上を見てみると、それがありません。台風が湿った空気の供給源ですが、その元がないのに、大雨になっていることは異常だといえます。この原因は、日本付近の海上を見ただけではわかりません。南アジアを見るとわかります。“太平洋高気圧の強さ”と“インド洋の海水温”が大きな理由と考えられます。また、インド洋の海水温が高く、そこから、暖かい湿った空気が太平洋高気圧の縁を通って、日本列島まで運ばれてきていて、その入り口が九州です。だから九州で、これだけの大雨が降り続いているというのが、今年の大きな特徴だといえます。もう1つは『地球温暖化』。地球の気温は上がってきていて、同時に海水温も上がる。海からよりたくさんの水蒸気が供給されます。同じ気圧配置であったとしても、より雨が多くなります。それらが重なり合って、今年のような異常な雨の降り方になっているのではないかと思います。今後、大雨は、1週間くらい続きそうです。
物流業としては、自社の事業継続はいうまでもなく、社会インフラを担う社会的責任、また 有事の際には支援物資等の供給体制の一翼を担う民間事業者としての社会的貢献も求められています。企業規模を問わず、事業継続のための備えである事業継続計画の策定は当然お義務となりつつあります。企業トップのリーダーシップのもと、BCPが策定されなければならない理由はそこに企業経営方針に基づく意思決定が必要であるからに他なりません。物流業の場合、①自社の営業をいかに早期に開始し、できるだけ短期間で通常通りに戻すか。事業をいか に存続させるか。 ②緊急物資輸送など社会から求められる物流機能をいかに担うことができるか。③顧客のサプライチェーン(物流システム)をいかに確保し、早期に復旧するか。この3つの視点から早期に事業を行うことができる体制を、予め準備しておくことが重要と考えられます。BCPとはまさに、こういった緊急事態への備えを指すものでしょう。
BCPは一度策定したからよいのではなく、時代の流れや環境に合わせて見直すことが必要です。必要のなかったインターネットウィルスに対するセキュリティなど大きな問題となりつつあります。経営環境にふさわしいBCPの策定を進めていただきたいと思います。