物流なんでも相談所

コロナウィルスと戦う物流企業

2020年6月3日

物流なんでも相談所 Vol.4

 

感染が拡大し続けるコロナウィルスとその中でも、生活や産業を維持するために日々その業務を全うしている物流企業の戦士達、本当に大変な活動に頭が下がります。医療現場で働く人達がその使命感から尊敬されるコメントがよく耳にいたしますが、物流企業における業務でもその価値は劣るものではないと私は常日頃から申し上げております。物流は産業や生活を支えるライフラインを維持する尊い仕事であることを一部の人達は理解し始めておられるようです。

日本ロジスティクスシステム協会(JILS)はこのほど、新型コロナウイルスの感染拡大による物流への影響について緊急アンケート調査を実施しました。それによると、物流企業で業務上の課題が発生したと答えた割合が50%を超過。感染拡大の報道以降、例年よりも物量が増加している商品として消毒薬や紙製品のほか、小中学校の休校を理由とする参考書などがあった。今後想定される課題として各種のリスク発生を想定したサプライチェーンの見直しなどをあげる企業が多くを占めました。

今回のアンケートは、同協会の会員企業である荷主および物流企業の789社から回答のあった182社を有効回答としてまとめたもの。調査期間は3月11~13日。方法はWEB回答方式を採用して集計しました。同調査によると、新型コロナウイルス感染の拡大によって業務上での課題が「発生した」と回答した物流企業は全体の58%になりました。発生した課題の具体的な事例として、運輸業で「一部の荷主企業で生産や出荷が大きく減少し、輸送量が減少し乗務員の水揚げ確保が難しくなった」や、「荷主企業から運転手のマスク着用を義務付けられたが、入手困難なため対応に苦慮している」などもありました。マスクを手に入れることは、今ようやく在庫から困難さは緩和されたように思えます。物流企業の現場やドライバーに実際ヒヤリングをかけてみると、“マスクも着用していない現場に入るのは危険で嫌だ”とか、“配送に行くとコロナを持ってくるなと言われ嫌な思いをした”等様々な現場での困難があることを耳にしました。物流分野では日配品、食品における落ち込みはそれほどでもないにしろ、医療や企業物資の物流では貨物量の減少が著しく、稼働車両数を減らし調整を余儀なくされているとの意見もありました。

利用運送・物流管理業では「倉庫内作業・納品現場ではテレワークなどができないため、安全上の配慮がスタッフ部門のようにはできない」、「緊急輸送案件が急きょ航空会社の運休により、代替えルートの計画に苦慮している」などの意見も。物流子会社では「医療機関からの返品、返却品の扱いで出勤時間との兼ね合いによる出荷要請時間の1時間繰り上げ」「中国向けの輸出ストップ」などの切実な意見も出ていました。

感染拡大が報道されて以降、例年と比較して物量が増加している商品が「ある」と回答した物流企業は全体の44%になりました。運輸業では一般向け加工食品、市販用の冷凍食品のほか航空貨物全般が、倉庫業では消毒薬、医療機器、紙製品などが増加しました。物流子会社では休校によって参考書や長期保存可能な加工食が増加しているとの報告もありました。ある運輸企業ではメーンの荷主が食品など包装資材で、前年比3割上がっているとの報告もありました。

物流業の現場では、マスク着用、消毒薬常備で除菌の徹底をはかるなどして、困難な状況でも、ライフラインを支え続けるために、日々奮闘していることを多くの庶民に理解していただきたいと切に願うばかりです。


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著者プロフィール

岩﨑 仁志

代表主席研究員

職歴
 外資系マーケティング企画・コンサルティングセールス


物流・運輸業界に留まらず、製造業や流通業物流部門などを対象にコンサルティングを行ってきました。国内外の物流改善や次世代経営者を育成する一方で、現場教育にも力を発揮し、マーケティング、3PL分野での教育では第一人者とのお声をいただいています。ドライバー教育、幹部育成の他、物流企業経営強化支援として、人事・労務制度改定に携わった経験から、物流経営全般についてのご相談が可能です。

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