物流よろず相談所

SDGsへの取組み2

2020年4月1日

物流よろず相談所 

 

具体的にSDGsへどう取組むか

前号で、SDGsの概要を説明させていただきました。全般にわたり169もの具体的なターゲットが示されていますが、現在我々に最も身近であると思われる働きがいと経済成長について、まずは掘り下げていこうと思います。

先に述べた8番目の目標にある「働きがいと経済成長を上向かせる」ために示されているターゲットは10項目。

まず1番目は、“各国の状況に応じて、一人当たり経済成長率を持続させる(後発開発途上国は少なくとも年率7%の成長率を保つ)”。

2番目以降もご覧ください。“高付加価値セクターや労働集約型セクターに重点を置くことなどにより、多様化、技術向上およびイノベーションを通じた高いレベルの経済生産性を達成”。

.“生産活動や適切な雇用創出、起業、創造性、およびイノベーションを支援する開発重視型の政策を促進するとともに、金融サービスへのアクセス改善などを通じて中小零細企業の設立や成長を奨励”。

.“2030年までに、世界の消費と生産における資源効率を漸進的に改善させ、先進国主導の下、持続可能な消費と生産に関する10カ年計画枠組みに従い、経済成長と環境悪化の分断を図る”。

.“2030年までに、若者や障害者を含むすべての男性および女性の、完全かつ生産的な雇用およびディーセント・ワーク、ならびに同一労働同一賃金を達成”。

.“ 2020年までに、就労、就学、職業訓練のいずれも行っていない若者の割合を大幅に減らす”。

.“強制労働を根絶し、現代の奴隷制、人身売買を終わらせるための迅速で効果的措置の実施、最も劣悪な形態の児童就労の禁止・撲滅を保障する。2025年までに少年兵の徴募や利用を含むあらゆる形態の児童就労を撲滅”。

.“移住労働者、特に女性の移住労働者や不安定な雇用状態にある労働者など、すべての労働者の権利を保護し、安全・安心な労働環境を促進”。

9.“2030年までに、雇用創出、地元の文化・産品の販促につながる持続可能な観光業を促進するための政策を立案し実施する”。

10“ 国内金融機関の能力を強化し、全国民の銀行取引、保険、および金融サービスへのアクセス拡大を促進”。

補足として、“グローバルな観点からも雇用や経済活性化を促進するため、拡大統合フレームワークなどを通じ、後発開発途上国に対する貿易援助を拡大したい”こと。また“2020年までに、若年雇用のための世界的戦略および国際労働機関(ILO)の仕事に関する世界協定の実施を、展開・運用化したい”こと等もあげています。随分細かい内容で構成されているようにも見えますが、これらの中には1のように“年率7%の成長率を保つ”という具体的な数値目標もあれば、3“中小零細企業の設立や成長を奨励する”という漠然としたものも含まれています。

そのため、169のターゲットのさらなる詳細版である230の指標を策定することにもなりました。ここで問題になったのが、例えば9の“2030年までに、雇用創出、地元の文化・産品の販促につながる持続可能な観光業”と言った時、各国において何をもって観光とするか、など定義する範囲が異なっているものがある、ということなど。そのため、230の指標をまた3種類に分け、Tier1・・・概念が明確、かつ国際機関等が基準設定があり、定期的に発表しているもの、Tier2・・・概念が明確、かつ国際機関等が基準設定があるが、定期的な発表に至っていないもの、Tier3・・・基準設定もされていないものとしました。Tier3に関しては今まで基準がなかったこともあり、現時点で確定しておらずさらに継続検討していこうとしていますが、このように全世界で同じ枠組みで考えよう、進めよう、としている点がSDGsの高い評価、支持につながっているところなのでしょう。

SDGsは今後も、この数値目標を定期的にモニタリングしていきますが、その進捗をモニタリングしていく枠組みとして、国連ハイレベル政策フォーラムというものがあります(レビューが毎年7月頃に実施)。日本政府におけるSDGsの動きを見てみると日本では2016年5月20日、安倍総理が本部長、すべての国務大臣がメンバーになり、第1回「持続可能な開発目標(SDGs)推進本部会合」が開催され、続く2016年12月22日に第2回が開催されました。日本はSDGs関連に9億ドルの支援、30億ドルの取り組み、日本円にして合計約4000億円を投資すると言っています。もちろん、多くのものがこれまで取り組んでいたものを改めてSDGsの枠組みで表現しなおしているのだと思いますが、首相自らこのような宣言をすることは大変意味があり、日本のSDGsに対する姿勢を表しているものだと言えます。

ビジネス分野においてはGCNJと公益財団法人 地球環境戦略研究機関(IGES)により作成された「動き出したSDGsとビジネス~日本企業の取組み現場から~」によると、SDGsの認知度は総じて高く、CSRレポートでSDGsに言及したものが2015年にくらべて2016年は圧倒的に増えており、CSR担当者の認知度は84%に達しています。一方で、経営層の認知度は28%に留まり、中間管理職においては、4~5%程度に低迷しています。さらに2018年3月14日に同団体から発刊した「未来につなげるSDGsとビジネス~日本企業の取組み現場から~」でも同じアンケートを行っていますが2016年にくらべて2017年は若干増えているだけで未だ認知度はそれほど高くなっていません。日本企業でもSDGsに対して積極的に取り組む企業が増えていますが、多くの企業は未だCSRの一環としてSDGsを捉えている、といのが現状のようです。

また、一方でSDGsをビジネスチャンスとして捉えた企業が注目を浴び、環境や社会に配慮した優良企業というイメージアップにもつながる好循環も生まれています。物流業界における取組はまだ始まったばかり。今後他社に先駆けグローバルな観点に立った目標の達成をパートナーとして顧客に働きかけて行くことで、成長の足がかりにもなりそうなSDGs-、この機会に一度検証されることをお勧めしたいものです。

著者プロフィール

岩﨑 仁志

代表主席研究員

職歴
 外資系マーケティング企画・コンサルティングセールス


物流・運輸業界に留まらず、製造業や流通業物流部門などを対象にコンサルティングを行ってきました。国内外の物流改善や次世代経営者を育成する一方で、現場教育にも力を発揮し、マーケティング、3PL分野での教育では第一人者とのお声をいただいています。ドライバー教育、幹部育成の他、物流企業経営強化支援として、人事・労務制度改定に携わった経験から、物流経営全般についてのご相談が可能です。

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