法を味方に社員を守る
2019年12月25日
物流よろず相談所
深刻なドライバー不足が解決を見ないまま運送業界は本年も年末の繁忙期に突入しました。従業員への負担を軽減しつつ、荷物も滞らせないことが理想ではありますが、しかし師走の忙しさの中、日々発生する様々な問題への対応も加わり、会社全体が100%以上の許容量を抱え込むことになるのが通年のことでありましょう。それでも裏切る訳にはいかない社会と顧客の信頼を肝に命じて、従業員の皆様には今しばらくの奮闘をお願いしていくしかありません。
思えば本年も物流業界の上空には様々な風が吹き抜けていきました。7月には改正貨物自動車運送法が施行。これにより、それまでどうにもあいまいだった荷主への対策に関する具体例が、付け加えられました。少し思い返してみましょう。例えば業者に対する行いに違反が疑われる段階から、国が勧告を行なうことができるようにもなりましたが、これは荷主に“配慮義務”という形で、より強い圧力がかかることになるものです。改正物流二法も施行されてから20年近い時が過ぎ、その各所に時代とのずれ・ひずみが指摘されるようになってきた今、人手不足や働き方改革といった課題に対応していくためにもより深い部分に踏み込んだ対応が始まった、とも言えそうです。改正を通して重要な顧客である荷主との関わり方にも変化が表れてくるのか、運送業者としても法にのっとり関係改善に向けた努力を行なっていくべきでしょう。人手不足の深刻化は荷主側も同じ。業者に対し、荷待ちや過積載を強いる行為がなくならないのも、そのことが一因としてあるのかもしれません。しかし、今後はそれも違反としてしっかり国から勧告される行為となります。つまり先にも述べた通り運送業者が法令を遵守して業務を遂行できるよう、荷主側も十分配慮しなければならないということです。
これだけ明確に運送業者に寄り添った形で保護を示してある訳ですから、荷主に対し胸を張れるよう事業者側としても日頃より法令に即した運行や業務を続けておかねばなりません。2024年には時間外労働960時間という上限規制も始まります。人材の定着を図る意味でも、まずは来年に向けた自社独自の働き方改革を検討し直しておく必要があるかもしれませんね。
話は戻りますが、先の法改正は国交省や経産省などが推奨するホワイト物流にもリンクする部分があります。荷主との関係を見直す意味でも参考になるその推奨項目の中には“契約相手を選ぶ際、法令遵守状況を確認する”や“働き方改革に取り組む業者を積極手に選ぶ”など荷主としても更に襟を正していかねばならない事を実感できそうなものが多く含まれています。業界全体の変化に期待したいものです。
時代は確実に進み、人も仕事もそれに合わせた形に変化していくー、この事実をまずしっかり受け止め、企業としての体制もその流れに馴染んで行かねばならないのでしょう。社員達の人生をそのまま背負う企業が、右へ左へそう簡単に舵を切れるものではありません。しかし、経営者の判断と理念が正しい方向を指せばそれら社員達が一緒になってその手を支えてくれるはずです。今後も皆と共に努力を続け、先に進むことだけを考えて参りましょう。