商品事故を削減する
2019年10月30日
物流よろず相談所
重大事故につながることからも運送事業者は事故防止に真剣に取り組んでいます。このため交通事故は減少しても、意外に減らないのが構内事故や商品事故なのです。ある物流会社の担当者は「積み下ろし先の門扉にぶつけるなどの事故が発生した原因を探ると、バックモニターなどの機器に頼りきってしまっていることに原因があるようだ」と指摘しています。取引先で建物にトラックをぶつけるなどの事故は、著しく信頼を損失することになってしまいます。そうした事故は、バックモニターなどの機器に頼りきってしまい、トラックを降りて確認するなどの作業を怠ってしまうことにも要因があるようです。
ある物流会社では、次のような事例があったそうです。構内に入ってきたトラックがバックをしようとしたところ、後ろでフォークリフトが動いていました。荷物が載ったパレットを積んでフォークリフトが動きだしたことをバックモニターで確認したドライバーは「フォークリフトがいなくなった」と勘違いしてトラックをバックさせてしまったといいます。ところが、バックモニターに写らない角度に来た時にパレットから荷物が崩れてしまい、フォークマンはフォークリフトを止めていました。それに気がつかないドライバーは、そのままトラックをバックさせてしまいフォークリフトを損傷させてしまいました。幸いにもフォークマンは怪我をしなかったとのことですが、トラックとフォークリフトの間に挟まれるなどしたら重大事故にもなりかねない危険な状況でした。この物流会社では「バックモニターは便利だが、死角があることも知っておかないと思わぬ事故につながる。見えない場合には降りて目視で確認することが大事だ」としています。
また「商品事故=物流会社の問題」となってしまっているケースが多くなっています。車両事故ならともかく、商品事故まで「荷扱いが悪い」など、それなりに妥当とも言える理由付けで、物流会社に問題があると決めるつけられている場合が多いのも事実です。ここから、物流会社への丸投げ構造の実態が見え隠れしています。「管理」は自社、「運営」は外部という外注化の基本が守れていないことが大きな要因のひとつと考えられます。また、物流会社もこのような「決めつけ」に泣き寝入りしてはならないのです。「なぜ商品事故が起こったのか」と原因を追及し、問題が解決できれば悪者を作らなくても済むはずです。 物流会社としてできることは、「商品事故報告書」の内容やフォーマットを見直し、担当者に詳細な記入を徹底させること。そして、それを集計して荷主と話し合いの場を設ける必要があります。
これは一例ですが、あるガラス器械卸・販売の会社では、商品事故のあまりの多さに、物流会社だけに任せてはいられない、自社でも策を講じなければならないと「商品特性マスター」を作成し、出入り物流会社のドライバーに自社の商品の特性を理解してもらうようにしたそうです。またある精密機械・部品メーカーでは、梱包方法の見直しを行い、ムダな梱包部分を無梱包状態にし、「キケン個所」の強度をさらに高める梱包形式に変更しました。これには段ボールメーカーも参加し、共同開発を行ったそうです。 また、ハンドリング数が多い路線便の使用を諦め、近場の得意先に限って最低0.5トン分のロットがまとまるまで出荷せず、在庫を持ってもらうことで路線会社から地場配送会社に切り替え、事故を削減できたという例もあります。得意先の多頻度少ロットのニーズを断り、輸送品質向上に傾注した例として意味ある事例ですね。
このように、物流会社側でも商品事故に対する具体的な情報を提示するくせ付けが必要です。荷主と着荷主まで交えて商品事故の削減に努めれば、勝手な「荷主の言い分」も変わってくることになるでしょう。