2025年の崖
2025年2月26日
『物流なんでも相談所』
岩﨑仁志
2024年5月に交付された改正物流総合効率化法に基づき2025年4月から物流効率化に向けた新たな規制が導入されます。まず全ての荷主に対し①荷待ち時間の短縮、②積載率の向上、③荷役時間の短縮など努力義務が課せられます(今回は努力義務≒何もしなくて良い、では決してない)。また2025年度は全ての荷主、物流事業者を対象に物量調査が行なわれ、一定規模(現段階では9万t以上)の貨物取扱業者が特定事業者に指定されます。その後2026年度に向け①物流効率化に向けた取組み、②物流に関する中長期計画の策定と報告、③物流統括管理者(CLO)の選任、などの項目が義務として課せられ罰則も適用されることになっています。他にも急拡大してきた軽貨物事業者による事故やトラブルの増加を受け、これらの事業者にも運行管理や記録を義務づけることになりました。さらに物流領域で常態化している多重下請け構造の是正を目的とした貨物自動車運送事業法の改正により、実運送体制管理簿の作成が元請け事業者に求められるなど、2025年4月以降しばらくは改正ラッシュが続きます。ただこれらの改正物流法により荷主や元請け事業者の責任が明確になってくることで、ドライバー不足や物流に支障が出てくるとの声が聞かれるのも事実。2024年問題の負の影響がこの先表面化してくる懸念もまだ残っています。
物流業界では2024年問題が注目され、対策を実行された企業も多いようですが、実は2025年問題の方が重要ではないかという見方もあります。これまで物流業界では2024年問題を中心に対策がとられていますが、これとは別に2025年問題も浮上しています。物流の2024年問題は、働き方改革関連法に伴う、時間外労働時間の上限規制が適用され、2024年から運送業における時間外労働は年間960時間が上限となり、これを超えて働かせた業者は罰則が科されます。これが2024年問題と言われます。時間外労働の上限が生じることで、運送業の売り上げに影響を及ぼすほか、ドライバー自身の収入も下がる可能性があるなど、多くの問題を孕んでいます。一方、2024年の前から慢性的なドライバー不足になっており、ドライバーの確保も問題の1つになっている状況は続いています。
改正物流総合効率化法と改正貨物自動車運送事業法が2025年4月に施行予定です。法改正により、施行後3年で(2019年度比)荷待ち・荷役時間を年間125時間/人削減させ、積載率向上による輸送能力を16%増加させることを目指すとしています。また法改正内容は、1.荷主・物流事業者に対する規制的措置(流通業務総合効率化法) 2.トラック事業者の取引に対する規制的措置 (貨物自動車運送事業法) 3.軽トラック事業者に対する規制的措置(貨物自動車運送事業法)が改正され2025年4月に施行予定となっています。これに伴い様々な規制が特定荷主に対して課せられることになります。
これとは別にDX化の課題として2025年問題、「2025年問題の崖」と呼ぶこともあります。2025年に国民の3人に1人が65歳以上、5人に1人が75歳になると予測されたため、今のままでは多くの高齢者を支える担い手が不足するなどの問題を指したものです。2025年問題は先にも述べましたが別名「2025年の崖」とも呼ばれ、DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進を求めていくためのメッセージにも使われています。2025年以降、DXを推進しないことで損失が大きく出始めることが要因とされ、2025年以降も古いシステムを使うことで、業務の効率性を損ねる結果につながると考えられています。
物流業界では3PLなど躍進企業では新システムを導入推進する企業もありますが、多くの企業では旧態然のシステムを利用している企業が多いようです。その点も2025年問題に直結していると言えるでしょう。それでは2024年問題と2025年問題はどちらが深刻なのでしょうか?2024年問題と2025年問題は物流業界から見れば、どちらも深刻であると言えるでしょう。しかし、2025年問題はDXの推進を求めていくメッセージが強く打ち出されたもので、DXの推進が2024年問題の解決につながる可能性もあります。1つ1つ異なる問題でありながらも、密接な関係性にある問題なのです。そのため、どちらの問題も解決することで、ピンチをチャンスに変えていくだけのポテンシャルは秘めていると言えるではないでしょうか。