2024年見据えて、安全はドライバー満足から
2024年7月3日
物流よろず相談所
改正改善基準告示の施行から3ヶ月近くが過ぎ、物流業界は今、第一の関門である夏の繁忙期に、突入しています。早めに対策を行なった企業とほぼ無体策の企業―、一見してもまだその差は識別しにくいようです。いずれにせよ従業員の働く時間を節約しながら、効率よく成果をあげていくためのポイントをしっかり抑え、人が作り出す物流現場の体力を今のうちに強化しておくことが必要です。
2024年問題における対策の中でも重要度が高いものが、積載率の向上でありますが、今後ダブル連結トラックの増加や大型・中型トラックのAT限定免許導入などにより、大型トラックドライバーがさらに多く求められるようになることも考えられます。物流業においてなくてはならないトラックですが、ご存じの通り、事業用貨物自動車が引き起こす死傷事故の中で一番多いのが大型車両によるもの(R3年は9415件中、4103件/内754件はトレーラー、が大型による)。実際フルトレーラーやダブル連結トラックなど、停止しているものを間近で見るだけでも相当な大きさ、迫力があります。乗車するドライバーには、その技術もさることながら、より高い安全意識も一層求められることになりそう。もちろん中型以下のトラックとて、プロとしてハンドルを握る以上は、仕事に必要な知識と十分な安全意識をもった上で乗務していただく必要があります。
また重要なことは安全対策を初期教育のみで終わらせてはいけない、ということです。とくにドライバーは初期教育が終わってしまうと、一人で稼働することが多く、その後教育の機会は、ほとんどない(仲間や先輩が必要に応じて教える)ところも多いのです。センターなどの事故も含めた労働災害では休業4日以上を要する死傷災害は、経験3年未満の未熟練労働者によるものが4割近く。作業の負荷を見誤ったり、危険なポイントを習熟していなかったり、と重大な労災につながりやすいとされています。一方でドライバーによる重大事故は50歳をこえると急激に増加、死亡事故の54%を50~64歳のドライバーが引き起こしていました(2022年全ト協による)。体力や判断力などの衰えが始まるのと同時に、ベテランとしてキャリアを積んできたことによるおごりや油断も事故の大きな要因でしょう。毎日の点呼や車両点検に加え、自らの健康を決して過信せず、不調の際は勇気を持って乗務を辞める、という決意と、それを認める職場の空気を日頃から幹部も含めた現場の中で作り上げておく必要があります。
働き方改革を実践し若者を業界に呼び込みたい、とはいえ現在最前線で国内の輸送を支えているベテランドライバーの皆様にも、まだまだこれから引き続き活躍してもらい、若手ドライバーの育成にも手をお貸しいただきたいもの。事故はその対策の有無が企業の運命を大きく分けます。また「事故は限りなくゼロ」でなければ対策の意味もない、という認識のもと、定期的な安全教育を続けるようにいたしましょう。企業によっては法定12項目対応の安全教育をスマホやタブレットでなどで行なうところもありますが、基本は日常の安全指導がやはり重要です。ドライバーの心と頭にすり込ませるように、乗務の心構えを指導して下さい。①慣れている道路でも油断しない、②周囲の車、歩行者を思いやる、③あせらず、おごらず、危険を招かない、④適正速度を守り抜き、急発進・急停止を止めたところにエコドライブはある、以上4項目を守るだけでも、事故は遙かに遠ざかります。貴重な人材と自社の存続を危険から守るためにも、できる安全対策を怠らず、2024年問題解決の糸口につなげていきたいものですね。