物流よろず相談所

年の瀬を間近にして

2023年11月29日

物流よろず相談所 

 

年末の繁忙期突入に向け今一度、社内の安全体制を見直していただきたいと思います。安全は全てに優先することは物流業における基本です。2006年10月に300台のトラックを保有する事業者に対し施行された運輸安全マネジメントですが、翌年2007年4月からは全事業者が対象となりました。これに加え、同年10月1日付で施行された運輸監査の強化による社会保険加入の徹底などにより、さらなる人件費増加の要因も増えています。コスト抑制の意味でも事故防止が重要となる中で、厚生労働省が指定する労災防止の強化業種に指定されているのが建設業と運輸業です。原材料費や燃料費の高騰に加速する円安も加わり経営環境は、ますます厳しくなっていく中小物流業者には、来年4月から実施されるドライバーの残業規制、2024年問題も迫ってきています。これらの課題を克服するために欠かせないのは、やはり不要なコストの削減がポイントとなってくるでしょう。無駄な費用を徹底排除することが重要で、その第一にあげられるのが事故を減少させる、可能な限りゼロにすることに他ならないのです。

この現場を支える労働者でも動きが出ています。政府では深刻化する労働者不足への対応策としての外国人雇用。政府の外国人労働のあり方を巡る有識者会議が10月18日、11月中にもまとめる“外国人労働者の受け入れ新制度に関わる最終報告”について素案を提示しました。新しい制度は3年間の就労を基本とし、日本語・技能検定の合格を現在労働者の資格である特定技能に移行できるようにするもの。技能実習の事実上の廃止に伴い、未熟練者が1年以上就労し、日本語などの条件を満たせば転職可能とする案を示しました。来日直後の育成にかかる負担が転職前企業に集中しないための方策として移籍金のような支払い案も検討するとしています。しかし仮に外国人労働者を雇う側のハードルが低くなったとして、その先に越えなければいけない課題が存在することも忘れてはなりません。在留資格や在留期間はどうなっているのかなどの調査はもちろん、日本における物流品質の高さや免許取得の難易度を、彼らは理解できるのか等々、採用以前の問題解決にも一定の時間を要することでしょう。いずれにせよ、物流業への門戸も開放されることが見込める新制度。今後の動きが注目されています。

年の瀬を間近に控え、働き方改革関連法案の施行も4か月後に迫って参りました。しかし、荷主や当該事業者の中でも、対策が思うように進んでいないという現実を受け、政府は10月6日、2030年の輸送力不足解消に向けて、可能な施策の前倒しをはかるとして、必要な予算の確保も含め、緊急的に取組む“物流革新緊急パッケージを決定、発表しました。内容はこれまで幾度となく発信してきた①物流の効率化②荷主・消費者の行動変容③商習慣の見直し、といった訴えの再確認、といったところですが、危険のシグナルを出し続けることで、社会全体にも当事者意識を高めて欲しいという狙いがあるのでしょう。ただ今さらですが、本来”働き方“と言っても各社・各現場によって、正しいと思われる形は様々なのかも知れません。しかし、異様なまでの少子高齢化と人手不足加速の前には、国全体で足並みをそろえ、この苦しい局面を乗り越えていくしかない、という関係各所からの訴えが、あえての法整備という形になって現れたのでしょう。

改めて考えると、業務中当たり前に行なわれている重量物運搬にしても、法律の制限があることは、御存知の通りです。その内容は細かく分類され例えば男性の場合、16歳未満→15Kg、18歳未満30Kg、(19歳~は体重の、概ね40%となるよう厚労省の指導あり)など、あくまで腰痛対策予防お観点から指導が行なわれているものでもありますが、ひとつひとつの決まりを確実に行なっていくことで、労働災害や事故を防ぐことにもつながっていくはずです。法規制の発端は取りも直さず人を保護し、安全安心は社会を作りあげていくという目的にあると信じ、自社における働き方改革取組みの強化に引き続き取り組んで参りましょう。

著者プロフィール

岩﨑 仁志

代表主席研究員

職歴
 外資系マーケティング企画・コンサルティングセールス


物流・運輸業界に留まらず、製造業や流通業物流部門などを対象にコンサルティングを行ってきました。国内外の物流改善や次世代経営者を育成する一方で、現場教育にも力を発揮し、マーケティング、3PL分野での教育では第一人者とのお声をいただいています。ドライバー教育、幹部育成の他、物流企業経営強化支援として、人事・労務制度改定に携わった経験から、物流経営全般についてのご相談が可能です。

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