2024年問題対策 ~その1~
2023年7月26日
物流よろず相談所
「ドライバー不足」という明確な重要課題を抱えている運送業界において、現在その対策はどれほど進んでいるのでしょう。2024年4月以降時間外労働が年間960時間までとなるドライバーの有無について業界全体の27.1%が「いる」と回答。特に長距離ドライバーでは48.1%が「いる」としています。それでも時間外割増賃金に係わる準備ができている、とした中小企業は全体の3.9%でしかありません。荷主に到っては改善基準告示を認知している、としたところは16.5%。今だにその「存在も知らない」荷主が50.5%。その「内容までは知らない」荷主も33%―、これらの数字を前に、この先の問題解決が容易ではないことを改めて思い知らされます。
日本経済の中枢と国民生活を支える物流を止めないとするのであれば、いまその覚悟を決めなければならないのは、物流企業と共にあるはずの荷主も同じです。お互いが心を開いて真剣に交渉を進めていくためにも、まず物流業者として当たり前に守ること、行なうことを認識し、一粒の落ち度もないプロの仕事を提供していく必要があります。製品の誕生から提供のラストマイルまでに関わった全ての人々が幸福になるー、これが止まらない物流がたどり着く理想の形と言えるでしょう。
山積する課題を前に、物流業者としてはまずどのようなことから検討を始めるべきか考えてみましょう。2024年問題によりさまざまな影響を受ける物流業者とその荷主は、少しでもゆとりのある今のうちから少しずつ対策にとりかかっておくことが必要です。その中で注意点としては勤務時間のインターバルが8時間から9時間へ変更となること。勤務間インターバル制度も物流業界に大きな影響を及ぼす制度です。勤務間インターバル制度とは、前日の終業時刻と翌日の始業時刻の間に、一定以上の休息時間を確保しなければいけないというもの。運送業界における自動車運転手の休息は、これまでは8時間以上と定められていましたが、2024年からは休息9時間以上を義務とし、11時間以上を努力義務として定められる可能性があります。ドライバーの健康や安全を守るために必要な制度ですが、勤務間インターバルが長くなると売上減少やドライバー不足につながる恐れがあるだけでなく、ドライバーの収入減少となる可能性が高いと考えられます。特に長距離輸送においては走行距離が長いだけに運転時間が短くなるとこれまでの輸送が難しくなる、と考えられています。
物流はサービスレベルによってコストが変わってくことをまず認識しておくべきです。サービスレベルの違いが、働き方に及ぼす影響が大きく、長時間労働時を引き起こす要因の一つとされています。では物流業者が取り組むべきその項目を確認して参りたいと思います。
1.労働環境の改善
労働環境の改善が必須とされる物流業、ただでさえ物流業界では人手不足が深刻化しているため、人材採用・育成・定着を強化するためにも、労働環境を改善し、働きやすい環境づくりを心がけることが必要です。優れた労働環境とは給与や休日などの待遇を含めた仕事に対する満足度の高さも入ります。ドライバーやスタッフが仕事を続けて行きたいと思えるような自社の労働環境とはどういうものか、経営者・幹部でまず一度検討しておくことが必要です。
2.荷待ち時間の削減
荷待ち時間は、ドライバーの拘束時間を増やす大きな要因となっています。荷待ち時間が1時間を超えるケースも珍しくなく、これを削減することにより、今までよりも短い時間で輸送することが当然可能となります。長距離輸送における待ち時間の平均が1.45時間と調査で出ておりできるだけ短くすることが必要です。その為には荷主企業と協力して、先着順の荷下ろしをやめ、バースコントロールシステムなどの導入により、柔軟に時間を指定・予約できるようにするなどできれば労働時間の短縮につなげることができます。荷待ち時間削減対策は、荷主側と着荷主側との協力が必要で、そのため現在の待ち時間の実態など示して働きかけることが必要です。
3.荷役時間の削減
荷役時間の削減も大事なポイントです。荷物の積み下ろしや積み込みなどの荷役作業は、拘束時間を増やす要因のひとつとなっていますが、これらの作業はドライバーの本業ではありません。あくまで、輸送の際に付随する業務という位置づけのため、できるだけドライバーに負担がかからないようにしたいものです。解決策として荷役機械の導入やパレットの活用も検討することも一つです。また着荷主企業に理解を得た上で、着荷主スタッフに協力してもらうなどの対策は是非行ないたいものです。