物流業におけるSDGs
2023年7月5日
物流よろず相談所
SDGsの17色のバッチをつけているビジネスマンを多く見かけるようになりました。このところ国内におけるSDGsの認知度も少しずつ上がってきているように思えます。例えば企業がSDGsの取り組みを掲げると、社会課題への対応をしているというイメージの向上にもつながりますが、それに加えて新たな事業機会の創出にもなるでしょう。「SDGs」の目標には「労働や雇用における格差・環境の改善」、「温室効果ガスの削減」、「持続可能な産業化や消費・生産」などの項目があり、個人を含めた社会全体の目標として設定がされていますが、これらは企業の経営や持続可能な成長・ブランディングにとっても重要な意味を持ちます。しかし物流業においては大多数を占める中小企業で、まだ取組みの課題は多く残されています。
ただ今後は、SDGsや脱炭素への対応がビジネス取組みや融資における取引条件になる可能性が高いと言われており、SDGsに取り組むことをきっかけに、地域との連携、新しい取引先や事業パートナーの獲得、新たな事業の創出など、今までになかったイノベーションやパートナーシップを生む可能性もあります。逆にいえば、SDGsに取り組まないということで、大切な機会を失ってしまうことも、あるということです。
兵庫県に拠点を置くある運送会社では、完成した製品と金属スクラップを特殊な車両で積み合わせ輸送を行い、トラックの稼働率を上げるだけでなく、CO2の削減に取り組んでいます。自動車部品の納品と引き換えに金属スクラップを回収し、積み合わせて輸送することで効率的な輸送の提供およびCO2の排出量削減に貢献しています。鉄くず・非鉄金属を輸送するための車両・設備を完備し、行政から許可を得て、鉄くず・非鉄金属の回収・販売をしており、年間取扱量は37,000t(スカイツリー約6本分)にも及んでいるそうです。また、荷主企業から金属スクラップを購入する代わりに、これを輸送費で還元することもできるようになっているとのこと。同社と取引する荷主企業は、輸送費とCO2を削減することが可能になり、またSDGsに取り組んでいるということを対外的にもPRできるとのメリットを打ち出しています。
さらに愛知県に拠点を置く物流会社では「住み続けられるまちづくり」のために、生前整理・遺品整理サービスを展開しています。同社が拠点を構える地域は、65歳以上の老年人口率が30%近くあり、今後も少子高齢化が進む中、誰もが安全・安心・健康で住み続けられる街になるよう、生前整理・遺品整理サービスに踏みこみました。また、回収した不用品をそのまま処分するのではなく、東南アジアを中心とした発展途上国へ独自ネットワークで輸出し、可能な限りリユースすることで、利用者は安価にサービスを利用することができます。SDGsへの取組みで事業活性化に成功している事業者は共にニッチ分野で取組みを進めているとうことでしょうか。
とはいえ現状、中小企業SDGsの認知度・対応状況はまだ低いままです。関東経済産業局が中小企業を対象に行った「SDGs認知度・実態等調査」において、SDGsについて全く知らないという回答が84.2%にも及ぶことがわかりました。ただ、裏を返せば、中小企業のSDGsに対する意識がまだ高くない今のうちに、これに取り組むことで他社との差別化を図かれることも確かです。SDGsの入り口は社員へのSDGsに対する理解を浸透させることにあります。SDGsと自社の経営戦略とを整合させるためにはやはり、社員ひとりひとりの意識と協力が不可欠だからです。SDGs対策を自社の経営戦略に生かしていただきたいと思います。