2024年問題対策の進捗は
2023年6月28日
物流なんでも相談所 Vol.66
「物流の2024年問題」とは、2024年4月1日からの運送業ドライバーに対する「時間外労働の上限規制」の実施にともなって、さまざまな影響が出るだろうと危惧されている問題です。働き方改革の一環として、労働者の時間外労働の上限規制が定められ、一部の大企業では2019年4月から、中小企業では2020年4月から実施されています。国としては、総労働時間規制は働き方改革の一環と考え不足するドライバーへの対応を含めたものです。支援策として、標準的運賃を定め、荷主団体への周知など図っていますが、その効果はまだ出ていないように見えます。国内物流への影響は決して小さくないと思われます。しかしながら多くの荷主はこれを自分の会社の問題としてとらえず、物流業者自身が解決すべき問題としていることが、2024年問題対策がなかなか進まないことの要因となっている、とされています。
「ドライバー不足」という明確な重要課題を抱えている運送業界において、現在その対策はどれほど進んでいるのでしょう。2024年4月以降時間外労働が年間960時間までとなるドライバーの有無について業界全体の27.1%が「いる」と回答。特に長距離ドライバーでは48.1%が「いる」としています。それでも時間外割増賃金に係わる準備ができている、とした中小企業は全体の3.9%でしかありません。荷主に到っては改善基準告示を認知している、としたところは16.5%。今だにその「存在も知らない」荷主が50.5%。その「内容までは知らない」荷主も33%―、これらの数字を前に、この先の問題解決が容易ではないことを改めて思い知らされます。
国内物流企業の9割以上が中小規模である現在、さらにその下請けに位置する小規模運送会社においては、課題の数もまた跳ね上がります。運送業専門の行政書士鈴木隆広氏によると車両20台以上の小規模運送会社で、いまだに点呼記録簿も運転日報もなく、拘束時間のルール違反を隠すため、タコグラフのチャート紙を抜き取るなどといった違法行為が常態化しているところも少なくないとか。一方でこれらの行為も社長に初めから悪意があってやってきたわけではなく、ドライバーのことを自分なりに思いやったり、荷主に逆らえなかったりする中でたどり着いた切ない抜け道だったに違いない、とも。
日本経済の中枢と国民生活を支える物流を止めないとするのであれば、いまその覚悟を決めなければならないのは、物流企業と共にあるはずの荷主です。心を開いて真剣に交渉を進めていくためにもまず物流業者として当たり前に守ること、行なうことを認識し、一粒の落ち度もないプロの仕事を提供していく必要があります。製品の誕生から提供のラストマイルまでに関わった全ての人々が幸福になるー、止まらない物流がたどり着く理想の形に思えます。
物流業界は2024年問題に続いて、2030年問題があるとされています。2030年度の物流業界は、このままいけば 貨物の3分の1が運べなくなる輸送能力不足に陥るとされています。これはドライバー不足と2024年問題への対応によるものとされています。2024年問題を、自社と荷主、さらには周辺社会全体共々で取り組む課題ととらえ、持続可能な物流の実現を目指していく覚悟が必要です。