物流なんでも相談所

2024年問題を踏まえて

2023年5月31日

物流なんでも相談所 Vol.64

 

2024年5月広島においてG7を中心とするサミットが開催され、ロシアのウクライナ侵攻で経済的にも大きな影響があったことを受けその声明の中で「G7首脳は、現在のグローバルな課題に対処し、より良い未来に向けた方針を定めるとの決意において広島で一堂に会した。われわれの取り組みは、国連憲章の尊重および国際的なパートナーシップに根ざしている。次に掲げる具体的な措置を講じている。ロシアの違法な侵略戦争に直面する中で、必要とされる限りウクライナを支援する。全ての者にとっての安全が損なわれない形での核兵器のない世界という究極の目標に向けて、軍縮・不拡散の取り組みを強化する」としました。物流への影響も大きかったことから、このサミットの成果で世界平和に一歩でも近づくことを願います。

物流における大きな問題となっている2024年問題ですが、あと期限まで10か月を残すのみとなっています。多くの物流企業が運賃値上げをはじめとする様々な対応策を荷主へ働きかけているようですが、大手流通業を中心として消費者への転嫁は難しいとの理由で、運賃値上げを渋るだけでなく、荷待ち時間など効率化への協力にも消極的な荷主がまだ多数存在しており、この問題の難しさが浮き彫りになってきます。物流業者としてできることは事故やミスをなくし、品質を引上げ効率化への努力を惜しまないこと、社員育成に注力して人材確保に努めることなどが必要を思われます。

4月以降、改正改善基準告示の影響を強く受けるとされるトラックの長距離輸送。改正法施行まで1年を切った今でも、様々な日常の現場では改善に向けた動きがなかなか見えていません。国内物流の危機を訴える声が高まるなでも、当事者のひとりであるはずの荷主が、なかなか理解を示そうとしてくれない、というのも理由のひとつでしょう。事業者、ドライバー、発着荷主、全てが従業員やドライバーの働き方を改革し、これらを消費者を含む社会全体が受け止めることができて初めて2024年問題はステップのひとつをクリアすることになるのです。

例えば、好条件を出して募集したドライバーに高速道路料金所で0時待ちをさせたり、休憩所をさがす苦労をさせたり、さらにはようやくたどり着いた到着先で延々と荷待ちをさせたり、と決して事業者側の本意ではないはずのこれら切ない現状の数々は、この改正を機にぜひとも大きく改善していって欲しいもの。なお、先の高速道路料金については、国も動き出し、深夜割引きをPM10:00~AM5:00に拡大。400km以上の走行は距離に応じて割引率をあげるーという改定案を出しており、2024年の運用を目指しています。ただ、これら制度の改定は、取り残された根深い物流課題の対処療法にしかすぎず、まずは2024年問題に向けて荷主と運送会社が運賃問題を含む多くの取り決めにおいて対等の立場で話を進めていかねば、日本のトラック輸送は本当にこの先、崩壊してしまうことになりかねません。何より、現在でも危険と隣り合わせのドライバー業務にはもっと早い段階で抜本的な対策が必要だったはずです。

今を生きる物流事業者にとっては、どうしても現実とかけ離れた目標に見えてしまう点も多い、2024年の改善基準告示かもしれませんが、確実に吹いてきた改革の風を味方にすれば、国内物流と自社の飛躍は必ず現実のものとなるでしょう。そのために必要かつ重要な点をもうひとつ付け加えさせていただくなら、物流事業者としての安心・安全な業務の提供をどのような時も変わりなく行ない続けていくことです。荷主に、また社会全体に、運賃値上げや働き方改革を納得してもらえるためにも社員やドライバーの教育により力を入れ、まずは2024年の壁を乗り越えて行くことにいたしましょう。

著者プロフィール

岩﨑 仁志

代表主席研究員

職歴
 外資系マーケティング企画・コンサルティングセールス


物流・運輸業界に留まらず、製造業や流通業物流部門などを対象にコンサルティングを行ってきました。国内外の物流改善や次世代経営者を育成する一方で、現場教育にも力を発揮し、マーケティング、3PL分野での教育では第一人者とのお声をいただいています。ドライバー教育、幹部育成の他、物流企業経営強化支援として、人事・労務制度改定に携わった経験から、物流経営全般についてのご相談が可能です。

無料診断、お問い合わせフォームへ