物流マン育成を柱に新年を始める
2023年1月25日
物流なんでも相談所 Vol.56
どんよりとした冬空、寒々とした風景の中で往来するトラックによって感じる確かな経済のいぶき。2023年、新年の始まりです。
物流業において仕事を確実にこなしていくためには、人手が必要であることは間違いありませんが、それと同時に優秀な物流マンであるリーダーがいなくては上手く現場は動くことができません。物流業務における重要ポイントは、物流業務における人を司るリーダーである物流マン育成が勝ち残るためには重要となります。それでは優秀な物流マンとは、どんな資質を持った人の事を言うのでしょうか?具体的には①指示されたことを適切に処理できる、②現場の課題を把握し、対処できる、③目的・目標を明確に持ち、仕事の優先順位を決めることができる、④コストを頭に置き、収益を追求する、⑤部下に見本を示し、社員育成ができるなどでしょう。しかし、これらを叶えるには、考える力が不可欠です。
物流業は長きにわたって荷主に対して、従属的地位にあっただけに、自分で考え行動するということが欠けてきたように思えます。もちろん現場で働くドライバーやセンター員とて、自分勝手に判断をして行動していては目的も果たすことができない、と考えられてきたのでしょうが、上長の指示に従うことが求められてきたことがその要因かもしれません。優秀な社員とは、その仕事を黙って行い、熟練した者のことを指してきたように思ってなりません。まさに機械のように指示されたことを間違いなく実行できることがかつての物流事業者に求められてきたのでしょう。筆者は最近荷主の地位にある物流子会社はメーカなどの物流改善を業務として行なうことが多いのですが、荷主から聞かされることは多くの場合これまで従う業者ではなく、最適な物流を提案してもらえる物流業者を求めていると言う事実です。これまでの従属的地位に甘んじる物流業者はもはや時代遅れであると言わざるを得ない状況に直面することが多いのです。優秀な物流マンを育成するには、OJT(現場における訓練)だけでは不十分です。オペレーションを実行できても、改善に対する観点や価値観を持つことは難しいからです。優秀な物流マンなくしては会社の業績向上は望むべくもないでしょう。
物流業界における大手の再編は、取りも直さず路線業から物流子会社や流通業へと、輸送の中心が移りつつあることを示すものでもあるでしょう。かつて賑わいを見せていた全国各地のトラックターミナルは、経済成長の証でもありました。現在、低迷した景気が回復の兆しを見せ始め数年が経とうとしていますが、各ターミナルに集まって来る荷物は決して増加しているようにも見えません。実はこのあたりにも物流子会社や流通業者が構築してきた「共同ネットワーク」の及ぼす影響が表れていると言えそうです。今後の企業成長は“コスト削減と効率化”にかかっていることを多くの経営者は知っているはずです。特に燃料費や人材不足に苦しむ物流企業においては、日々の業務もコストと効率化を強く意識し、行なわれているはずです。成長著しい3PL業務を行なう業者や物流子会社の存在がより強力となってきたのも、まさにその延長線であると言えるでしょう。ただこの数年の間に、比較的早いスピードで繰り返されてきた企業再編と物流子会社の台頭は、しばしば現場力の強化を後手に回した形となっており、今になって各荷主などから再び不満の声もあがりつつあるようです。選ばれ続ける物流業者であるためには、やはり現場の改善と強化はどうしても欠かすことはできません。輸送に限らず物流業務全般に渡って高度な品質が求められる現在、各部門における優れた現場力は誇るべき商品でもあるでしょう。何としても定期的な現場の見直しと改善活動を継続し、本社・支店共に成長を遂げることで周囲の目にとまる存在となりたいものです。
景気の良し悪しはともかく日本経済が成長衰退を繰り返す中で、国民の良い物を見抜く目が確実に進化していることも事実です。“我慢する”空気感が抜けない今だからこそ、地道な商品開発と改善を続け、選んでもらえる企業を意識しておくことが重要ではないでしょうか。そのためにも確保しておきたい人材については、さらに本腰を入れて取り組む必要があります。深刻な人手不足が決して一過性ではないことは誰に目にも明らかなこと。今後も全産業間で働き手の争奪戦は続いて行きそうです。社員一人が背負う負担と責任が重くなることも否めませんが、その分福利厚生の充実やシステム改善による省力化などで社内の満足度を高めておくことが大切ではないでしょうか。間近に迫った2023年問題、2024年問題、今だからこそ、怠りたくない“人のケア”。“頑張って良かったな”という実感の残る仕事を、社員にさせてあげたいものですね。