SNS炎上から経営を守るリスクマネジメントについて
2023年1月11日
労務管理ヴィッセンシャフト vol.7
<SNSによる不適切発言が会社を追い込む>
皆様、寒中お見舞い申し上げます。昨年は国際情勢や国内経済共々いろいろなことがありましたが、今年は良い年になることを願っております。
新年早々に新聞を読んでおりましたら、皇室がSNSを含めた新たな情報発信を検討する旨の記事を読みました。昨今、皇室関係者に対する心ない誹謗中傷が多く、正しい情報を伝えるためにも今後は公式アカウントから情報発信したいとのことでした。
昨今、著名人や芸能人がSNSでやり玉に挙げられることがあります。また不適切なツイートをしてしまったがために炎上するなど、SNSに関するトラブルが多くみられます。中にはSNSで誹謗中傷され、人権侵害を受ける事案もあります。
また最近は企業でもSNS利用を巡り様々な炎上が起きております。公式アカウントの不適切な発言による炎上もあれば、社員を名乗る人からの個人ツイートによる事案もあります。少々昔の話になりますが、コンビニアルバイトが店内のアイスクリームケースに寝転んだ写真をTwitterにアップロードする、また売りもののおでんを口に含み吐き出す動画をアップするなどの事件がありました。よい言葉ではありませんが「バカッター」などといわれましたが、これら従業員の不適切行為による風評被害で、当該店舗は閉店に追い込まれることとなりました。
このような事件で世間をにぎわす中、我々が業務で作成依頼をうける就業規則にも大きく影響を受けております。具体的には就業規則の服務規律にSNS不適切利用を防止するための規定を設けたいというオーダーも多くなりました。服務規律は職場の風紀秩序を維持するために設けるルールですが、昨今ではインターネット利用の普及もありネット活用がらみの規定づくりも多くなっております。
先のSNS炎上事件の行為者ですが、氏名や年齢、出身校などもネットで公開され、当人は新たな就職をするにも困難な状況になってしまいました。
また、とある会社の実例ですが、採用担当者がSNSで「給与で会社を選ぶ人とは働きたくない」とツィートし炎上した案件がありました。その後どうなったかは不明ですが、おそらく新人採用の大きな障害となったことは想像できます。これらは先のコンビニの例ほど大きな問題とはならなかったとはいえ、日ごろのツイートから社名を特定できる人が、個人アカウントで不適切なSNS書き込みをした結果、会社の風評被害に繋がってしまいました。
<SNS炎上を防ぐための様々な取組み>
このような従業員の不適切なSNS利用が起きないよう、会社としては何等かの対策を行う方法があります。その一つとして、就業規則にSNS利用に関する規程を追記することが挙げられます。その内容としては、業務上知りえた会社の秘密情報(ノウハウ、知的財産等)などをSNSに記載しない、違反した場合の懲戒処分等について明記する等です。「個人としても利用するSNS内容に会社が介入するなんて・・・」と思われる方もいらっしゃいますが、日頃のツィートで、その方の勤務している会社名が明らかになる場合があります。ネット炎上は全世界に公開されているため、不適切なツイートがあったとき、フォロワーの誰かがそれを見つけて拡散される可能性があります。
もう一つの取組として、企業内でSNS適切利用に関する研修を行う方法もあります。就業規則等のルールを設けるだけでなく、実例を含めたリスクを啓蒙することで、SNS利用に関する行動変容が期待できます。社労士という業務からは若干外れるかもしれませんが、私はこういったSNS炎上を起こさないようにするための、ソーシャルメディア利用に関するリスクマネジメントの社員研修講師に携わったこともあります。
SNSというメディアが世の中に誕生して十数年が経ちますが、個人が世界に情報発信し、様々な影響を与え、様々なムーブメントを起こすことが可能となりました。それは良いことでもある反面、炎上やフェイクニュース、ヘイト発言などネガティブな面も目立つようになりました。いずれは負の側面を克服する仕組を内包する新たなSNSが誕生するかもしれません。しかし当面は企業のリスクマネジメントの一つとして、SNSに関するコンプライアンス研修をすることも必要ではないでしょうか。